「2014読了」52冊目 ★★
『やさしさをまとった殲滅の時代』(堀井憲一郎 講談社現代新書)
私が持つ著者のイメージは,落語評論家だった。しかし,それだけではないらしい。
3月末にまとめ買いした本の一冊,この連休にようやく手につけた。
ぱっと見たとき,「殲滅」ということばをどう読むか,正直わからなかった。
えっ,なにメツ?ショクメツ?ザンメツ?・・・・
いつもならすぐ調べるのだけれど,中に書いているだろう…知らないままもオツだな,などと思ったりして,そのままページをめくることとした。
ふりがなも出てこないし,頻度が多い言葉でもないので,結局ずっと不明のままで読み進めることになった。
序章はともかく,第1章から第3章ぐらいまでは,ぴんとこない面が多かった。
もちろん著者とは同年代とも言えるので,80~90年代,00年代の時代認識について,頷けることは多い。
ただ,具体的な事象については,ここは都市生活者と地方に住む者との違いもあるかもしれないし,情報感度の差かもしれないが,その波をもろに身体で受けたというより,波打ち際にいるような感覚といった印象だった。
しかし,「『若い男の世間』が消えた」と題した4章以降は,見事にすうっと心に入ってくるようだった。
火事。祭り。隣村との争い。
こういう「若衆の世間」の喪失については,おそろしく納得がいった。
それはおそらく,想像以上に昔から着々と進んできたことであり,今,著者の書いたこの文章の現実感は,ずいぶんと広範囲に漂っている。
洗練された都市では,空が青く,建物が清潔で,そして男子はやることがないのだ。しかたがない。
そして「ブラック企業」「ゆとり教育」「暴力性」などについて論は進む…男性としての視点が強いのは当然だと思うが,世の中の流れが絡み合い,つながりあって,個の分断された時代がつくり上げられたことには納得がいく。
そして著者の現時点での結びは,案外単純なものだ。
迷惑をかけて生きていく。
迷惑をかけられたら,面倒くさがらずに世話をしていく。
そこに,金銭やら経済活動を介在させない。
単純ゆえに,時代に染まった心身には困難なことでもある。
まず,きちんと身のまわりをみなければいけない。
さて,「殲滅」。
その読み方は全214ページの次の「奥付」に,初めて登場する。
「せんめつ」
「皆殺しにして滅ぼすこと」という意味である。
書名がにやりと笑った気がした。
『やさしさをまとった殲滅の時代』(堀井憲一郎 講談社現代新書)
私が持つ著者のイメージは,落語評論家だった。しかし,それだけではないらしい。
3月末にまとめ買いした本の一冊,この連休にようやく手につけた。
ぱっと見たとき,「殲滅」ということばをどう読むか,正直わからなかった。
えっ,なにメツ?ショクメツ?ザンメツ?・・・・
いつもならすぐ調べるのだけれど,中に書いているだろう…知らないままもオツだな,などと思ったりして,そのままページをめくることとした。
ふりがなも出てこないし,頻度が多い言葉でもないので,結局ずっと不明のままで読み進めることになった。
序章はともかく,第1章から第3章ぐらいまでは,ぴんとこない面が多かった。
もちろん著者とは同年代とも言えるので,80~90年代,00年代の時代認識について,頷けることは多い。
ただ,具体的な事象については,ここは都市生活者と地方に住む者との違いもあるかもしれないし,情報感度の差かもしれないが,その波をもろに身体で受けたというより,波打ち際にいるような感覚といった印象だった。
しかし,「『若い男の世間』が消えた」と題した4章以降は,見事にすうっと心に入ってくるようだった。
火事。祭り。隣村との争い。
こういう「若衆の世間」の喪失については,おそろしく納得がいった。
それはおそらく,想像以上に昔から着々と進んできたことであり,今,著者の書いたこの文章の現実感は,ずいぶんと広範囲に漂っている。
洗練された都市では,空が青く,建物が清潔で,そして男子はやることがないのだ。しかたがない。
そして「ブラック企業」「ゆとり教育」「暴力性」などについて論は進む…男性としての視点が強いのは当然だと思うが,世の中の流れが絡み合い,つながりあって,個の分断された時代がつくり上げられたことには納得がいく。
そして著者の現時点での結びは,案外単純なものだ。
迷惑をかけて生きていく。
迷惑をかけられたら,面倒くさがらずに世話をしていく。
そこに,金銭やら経済活動を介在させない。
単純ゆえに,時代に染まった心身には困難なことでもある。
まず,きちんと身のまわりをみなければいけない。
さて,「殲滅」。
その読み方は全214ページの次の「奥付」に,初めて登場する。
「せんめつ」
「皆殺しにして滅ぼすこと」という意味である。
書名がにやりと笑った気がした。