すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

人格を続ける,重ねる

2014年08月15日 | 読書
 「2014読了」79冊目 ★★

 『プリズム』(百田尚樹 幻冬舎文庫)

 この小説にはいわゆる「多重人格者」が登場する。読んでいて,一体「人格」とは何かと考える。「性格」と違いを辞書で調べてみると,結局は「持続性」の問題なのかと思う。性格は「ある程度持続的な」であり,人格は「統一的・持続的」とある。人格の方が上位概念と簡単に片づけていいものか,少し迷う。


 昔はよく「二重人格」ということが悪口に使われていたような気がする。今もそうだろうか。もっと軽い言い方では「表裏がある」。しかしよく考えると大方の人間はそうだろうと思う。表裏がないように,人格は一面的に,ということが強要されるとすれば,息苦しい世の中だ。多重性は誰しも潜在的に抱えている。


 もちろん通常レベルとはかけ離れた「解離性同一性障害」。想像すると,実に怖い世界である。そういう相手に翻弄される女主人公の心の揺れが見事に表現されている。解説を書いている精神科医が作者の説明の上手さを称えている。曰く「説明の上手い人は偏差値の高い人ではなく,人間の心に精通した人である


 もし映像化するならば,この多重人格者の役は誰ができるのだろう,とドラマ好きとしてちょっと興味が湧く。かつてNHKで,多重人格者役を大竹しのぶがやったことがある。見事だった。30代ぐらいでこの演技をこなせる男優がいるのだろうか。5役ほど求められるのだ。候補は松ケン,瑛太,おおぅ堺もいい。