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桜と絵本と豆乳と

どこへ風穴をあけるか

2015年09月08日 | 読書
 【2015読了】88冊目 ★★
 『風穴をあける』(谷川俊太郎  角川文庫)

 この文庫はたしか以前に読んだはずと思いつつ、読み進めた。そして「教室を批評すること」という章で、そうだったと確信した。本ブログにその部分だけの感想を残していた。8年以上前であるが、今もその現実はあまり変わっていない。むしろ一部において「病の自覚」が希薄になった分だけ深刻とも受け取れる。


 その点について自分を棚上げするつもりはないが、今回の通読では結構様々な他の発見があり面白かった。以前は読み過ごしたのか、寺山修司との仲をこんなふうに書いている。「一時期、あいつらホモじゃねえかと陰口をたたかれるくらい親しかった」…双方が感じた魅力って一体何だったかと、不思議な気がした。


 作風や生き方の違いなどは語るべくもないが、個人的には早く逝っちまった人と生き永らえている人というイメージが強く浮かぶ。寺山ワールドを熟知していれば、谷川に影響を与えている点など分析は出来るのだろうが、そこまでの知識や洞察力もない。ただ、谷川の詩をまた一つ深く感じられるかもしれない。


 読みながらページの端を折った箇所の複数が、「解説」で触れられていたので少しびっくり。書いているのは、歌人穂村弘である。穂村の歌(というよりエッセイか)にシンパシ―を抱く自分の感性が、また重なってしまった。もちろん穂村はもっと深く入り込んでいる。リズムや波動を感じる力だ。正直、口惜しい。


 後半に「希望」という語が頻出する。友人の武満徹に関する文章に取り上げられている。また、寺山について書いた文章中に、引用で次の問いが載っている。「希望はなぜ二文字なのでしょう?」それらはどこか「光」と言い換えられそうに思うが、最近この「希望」という言葉に戸惑いを持っている自分だ。明日書く。