すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

『和顔愛語』が伝わる

2015年09月22日 | 読書
 【2015読了】91冊目 ★★★
 『和顔愛語』(坪田耕三  東洋館)


 坪田先生がご退官なさったときに、今までのエッセイなどをまとめられた本である。筑波の『教育研究』の巻頭言や『算数授業研究』それに子どもたちの文集への寄稿などが集められている。一読して感じるのは、品の良さであり、これは書く技能とまた違うということを感じた。仕事や生活に向き合う姿勢なのだ。


 以前目にした文章もあるが、目の付け所が探究的で実に惹かれる。結構、漢字ネタがあり、授業を拝見したときに始業前のひと時漢字の話などをしたことを思い出した。秀逸なのは「単位」を表す漢字の紹介があったこと。嵩(かさ)や重さの単位は、確かに関係がよくわかる構成になっていた。まさに目から鱗だった。


 教育観、指導観と呼ぶべき記述も多くあり、職場でも紹介しようと思った。ベスト1は「授業の技」という章で、最近の研究協議会について触れ、こう述べられている箇所だ。「教育の世界のことは表に表現されるものよりも、その内に積み重ねられた哲学の方が強いものである。」それを伝える大事さ、そして難しさ。


 2005年11月の巻頭エッセイに、我が町の盆踊りが取り上げられていることが嬉しい。十数年続けて毎夏見えられている証の一つになった気がする。「伝統」と題されたその文章は「生き残ってきた伝統」「しみじみとした古き日本の魂」と賞賛されている。一流の人の目に留まる価値が、身近にあることを再認識した。


 坪田先生を招いた会は、始まった頃から何年か続けて参加した。確か初回だった。現在の勤務校の体育館で講演が行われ、ある問いを出されたときがある。多くの聴衆の中で挙手したのが自分一人だったことが妙に印象に残っている。あの頃は頭が柔らかかった。今、この本にある問題にはお手上げだった。悔しい。