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風穴をさがす読書初め

2017年01月04日 | 読書
2017読了-1
『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』
(森博嗣 新潮新書)



 先月半ばに「書名だけを読書する」と、このブログにアップしてから暫くそのままにしておき、大晦日から読み始めた。
 面白く読めた。
 私が持った三つの仮説(予想)はこうだった。

 「まず、自分の頭で考えてみよ」
 「想定する範囲を広げてみよ」
 「当たり前には使われない表現に着目せよ」

 このうち、上二つは結構近いと思った。



 この書名は「問い」の形をとっている。

 それに対する「答え」や「結び」が当然準備されていて、幾度か本文中に記されているのだが、一番ふさわしいのは筆者が「執筆後の原題」として用意したものではないかと思う。

 「抽象思考の庭」(を持つこと)

 つまり、この本では「抽象的思考のススメ」が書かれている。
 
 世の中は、当然自分も含めて、どうにも「具体的」ということが持て囃されている。
 この本を読みながら、自分がいかにそんな風潮に毒されていたか、改めて感じ取った気がする。
 その具体的(笑)内容については別に記すとして、何故「抽象的思考」が必要か端的に引用すれば、この部分だろうか。

 抽象化をすることで、問題を全体的に捉えることができ、まったく別のいろいろなものに当てはめることも可能になる。

 「庭(を持つ)」という比喩表現にある姿勢も重要である。
 単純には説明しにくいが、筆者がイメージする「庭」は、理想の姿はあるけれど、必ずしもそれに向かって計画的意図的な営みが続けられるものではない。
 ただ必要なのは、そのスペースでこつこつと庭いじりをし、草むしりや散策、観察を続けることのようだ。

 つまり重要なことを意識し続けるが、解決を急がないことも肝である。


 趣旨に反して?「たとえば」と挙げられた具体例や仮想的思考が結構あって面白い。

 領土問題や原発問題など、私たちが陥っている現実が見事に指摘されていることもある意味痛快でもあった。


 「陥穽から風穴をさがす」読書としては、今年最初の読了にふさわしい一冊だった。