すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

視線が殺しも生かしもする

2017年01月07日 | 読書
Volume33

 「それが傍目にどれほど浅はかだろうとも、誰がそれを『自殺するには値しない悩みだ』と言えるのでしょう。死を思うには、他人を納得させるだけの理由がなくてはならないのでしょうか。そのような視線こそが、人を殺すのです。」



 元アナウンサーの小島慶子が、ラジオ番組で共演者が発した心ない言葉を、受け流すことができないと綴った文章である。

 「そんなくだらないことで、自殺しなくてもいいじゃないか」と自分も言ったことがあることを素直に認める。
 安易に言ってしまいがちだった時期もある。

 そのとき視線はどこを見ていたか、と考えたとき、対象をかけがえのない存在として見るのではなく、全体的な比較のなかに置いているのだろう。



 個の痛みをたどることは難しい。

 連日のように報道される過労死と括られる出来事も、その困難さを語っていることは間違いない。

 難しいけれど、そして全ての痛みを和らげる言葉はないのだけれど、努めてその痛みを想像しようという心がけがほしい。

 そういう視線をまず持つことが、言葉を選ばせ、その人が縋ることのできる一本の糸になり得るかもしれない。