すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

付加価値も突き詰めれば

2017年07月04日 | 読書
 日本って国はなんていい所だ、本当に至れり尽くせりだよな、と南独旅行の最初にそう繰り返し思った。しかし二日も経つと、慣れたわけではないが、なんだか様々な不備にも対応していくようになった。広大な景色や伝統を重んじる空気感などもちょっぴり体に馴染む気もする。この復習本でその訳が少しわかった。

2017読了71
『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』(川口マーン恵美  講談社+α新書)


(ミュンヘンの広場。若者たちは便利なモノを使いこなしていたが…)

 著者はドイツ在住が長い作家。日本の大学の客員教授も務めている。第一章が尖閣諸島へ向かうことから始まったのには少し驚いたが、一面で著者の関心の優先度もわかる。領土や言語、通貨の問題が今なおシビアなヨーロッパに暮らすことから見えてくる、この島国の本質に迫っている。書名とは裏腹に結構重い。


 「日本の発展の原動力は、実はこの、便利さと快適さの追求、つまり、品質の改良であり、サービスの果てしなき拡大だった」とする著者の指摘は当たっている。著者はそれらを一面で「誇り」としながらも、それらについては「付加価値であり、なければ済むということだ」とも言い切る。旅行での体験とも重なった。


 フランクフルトに着いた日は日曜日。ある面で異常な静けさに驚いたものだった。それは「聖なる休息日」が徹底していることであり、「休みなく動く街」が日常化している我が国との違いを痛切に感じた。最終的に元気でいられるのはどちらか、結論としては明らかだと思う。少なくとも個の舵取りはそうありたい。


 とはいえ、びっくりしたのは鉄道運行のいいかげんさ。フランフルトは始発、終着駅と聞いたので興味深かったが、乗る機会があったら混乱したか。著者が体験している酷さを読むとそう思う。「便利さに背を向ける」人が多いのだという。それはやはり、自意識が濃く他者意識の薄い国民性の一つの結論かもしれない。