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満月カステラへの細道

2017年07月09日 | 雑記帳
 幼い頃カステラはごちそうだった。もちろんカステラに限らず、特別な日の食べ物はあったが、カステラはシンプルな形や色なのに美味しい。飾りつけたお菓子とは違うところが特別だった気がする。しかし少しずつ食生活が豊かになり、自分の舌も結構肥えたような気になって、少しずつ関心がなくなっていった。


 カステラよりケーキ等のスポンジ部分の方が柔らかくしっとり感じることもある。それでもたまに食べたくなり、近くの店から買い求めるとぱさぱさしていることが多く、身の周りの普通のお菓子屋さんの品には、まず目が向かない(ごめんなさい)。それでも全国的に有名なB堂の品はまずまずかなと思っていた。


 そんな頃、たまたま東京駅でおみやげとして買ったF屋のカステラの味には、驚いたものだった。あれは20年前ぐらいだったろうか。「五三焼き」が発売されて食べたときは、あの何重もの包装も驚いたが、その味にはもう虜になってしまった。しかし価格はそれなりに高く、いつも上京するたびに…とはいかない。


 連れ合いが初めてカステラ作りに挑戦したのは、そんな時期だった。真四角の木枠を手に入れ、慎重に取り掛かったけれど、思ったほどの仕上がりではなかったことを覚えている。それでも2,3回は続けたと思う。結局遠ざかったのは、シンプルゆえに技術的に難しい点があるのだ。市販品のレベルも合点がいく。


 それから十年近くが過ぎ、再びの挑戦が始まった。そのアイデアは「米粉」の活用を考えたことから始まった。今の時代「グルテンフリー」を求める方もいるし、真四角という基本形を崩しても面白いという発想で仕上げた。「カステラはちぎって食べるとより美味しい」(by『ごちそうさん』)。それが実感できる味と価格だ。