すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

自分の藪に張り付く人たち

2017年12月08日 | 読書
 あの有名人が同い年と聞くと、なんとなく気にしてしまう。亡くなった人を初め、姿を全く見せない人、若い頃からずっと変わらず活躍し続けてきた人、最近になって名の知られた人…様々だと感じる。ちなみに私の場合は桑田佳祐、明石家さんま、役所広司などトップランナーも多い。今週読んだ二人もそうである。



2017読了121
 『役者は下手なほうがいい』(竹中直人 NHK出版新書)


 竹中の「映画愛」「役者愛」にあふれている一冊。「脚本は読まず、役づくりもせず、型にはめられることを何よりも嫌ってきた」ことを貫いてきた半生が語られている。ただそれは自由奔放というイメージではなく、その場を大事にする、今風にマインドフルネスとでも呼びたくなる。それゆえ彼の芸には計算がない。


 演技やバラエティでの言動の訳が少し分かった気がする。書名は「出来ない事の豊かさもある」という信条だろう。表面上の成功、失敗も気にはするが、それを寄せ付けないバイタリティが常にある。「おまけ」として巻末にある小学校時代の作文は上手とは言えないが、停まらない好奇心が核にあることを示している。


2017読了122
 『鋼のメンタル』(百田尚樹  新潮新書)


 扉には「著者初の人生論」とあった。様々な発言をする人なのでなんとなく書いているような気がしたが、雑誌等の記事が多いのかもしれない。風貌は住職のようだが、その放言ぶりとそれゆえ受けるバッシングは有名だ。しかし著者はこう宣う。「『打たれ強さ』と『厚顔無恥』は似て非なるものだ」。これは大事だ。


 「恥」の感覚をしっかりと持つ……それが内向きか外向きかが大きなポイントだ。社会的な成功や他人からの評価を人生の優先順位としないことが、様々な観点から述べられている。「鋼」に込められているのは「鍛える」意味だろう。著者の挙げる「自分の藪に張り付く」という処世訓は、竹中にも見事に当てはまる。