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志ある現場主義の人

2018年03月17日 | 読書
 いわゆる「スーパー公務員」と称される人物としては、TBSドラマ「ナポレオンの村」のモデルとなった高野誠鮮氏や、NHKプロフェッショナル仕事の流儀で取り上げられた寺本英仁氏が挙がるだろう。この著者の名は知らなかったが、若さと行動力は抜群だ。それゆえにこうした単著を出すことに踏み出せたのだろう。



2018読了27
 『県庁そろそろクビですか? 「はみだし公務員」の挑戦』(円城寺雄介  小学館新書)


 初めから高い志があったわけではなかった。しかしこの苗字が意味する歴史的な血脈があるのかもしれない。そう妄想させるほど、着火剤的な動きは激しく一途である。ただ周りへの気配りも相当あることが、本文中の記述にも溢れている。だからこそTV取材が許されこの出版も叶ったのだろう。渾身の一冊である。


 「現場主義」を貫き仕事に慣れた3年目、先輩に叱責された一言が彼を成長させる。「お前、行政官やろうが。行政官っていうのはな、法律と規則に基づいて仕事をしとるって、それを知らんとか!」…「天狗の鼻をへし折られた」著者は、そこから学び直すが、その方向は単なる法律遵守に留まらない。再び、現場だ。


 法律に則って行うことが公務員の使命である。先日傍聴した議会である質問事項があった。要領に沿って住民対応した行政側に対して、質問を投げかけた議員はそれでは駄目と異を唱えた。その話が空中戦でも地上戦でも、肝心なのは何を目的としているかその下地を認識するべきである。根拠はきっと「法」にある。


 今報道を騒がせている、文科省の前事務次官を招いた授業について調査した件も同様だろう。「法律上は」とは言うが、それはどこを指しているのか。小手先の議論や言い訳を続けることが、いかに教育的でないか。「できない理由」探しに翻弄している中央官庁の姿を思う時、地方で踏ん張る著者のような存在が眩しい。


 志ある仕事の仕方が実感を伴って語られる。「『あるべき姿』や『価値前提』で物事に取り組む」「人が本当に動くときは“共感”が働いたときだ」。また「1年間の給料を貯めよ(辞める覚悟を持て)」「やりたいことはアフターファイブ」という現実的でしたたかな提案もしている。多くの若い人に刺激を与え続けてほしい。