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「極み」の道は遠いけれど

2018年03月20日 | 読書
 フランスの経済哲学者セルジュ・ラトゥーシュは、いわゆる「脱成長」の急先鋒と言われている。そのエッセンスは一言「減らす」で表されるという。過剰生産、過剰消費そしてゴミや諸々の痕跡を減らす、それは社会全体を指すとともに、個人にとっても当てはまる。同じフランス人の女性作家が書いた本を読んだ。

2018読了29
 『シンプルを極める』(ドミニック・ローホー 幻冬舎)




 日本在住30年というこの著者は「余分なモノを捨て、心に何も無い空間を作る」ことを提案する。となれば、当然のごとく「禅」「茶の湯」「俳句」などの考え方が頻出している。もちろん洋の東西を問わず偉人たちの言葉、さらにはネット上の一般人のブログからも、テーマに沿った様々な言葉が網羅されていて面白い。


 「モノを排除するための妙薬」つまり考え方を第一章とし、二章、三章で整理の観点や実践の留意事項が提起される。それほど目新しくはないが、一章で引用された考えは、勉強になった。例えば良寛の良寛らしい俳句「盗人に取り残されて窓の月」…ここには、この部屋で何を味わうべきかの「極み」が確かにある。


 ガンジーは、心の向くままが一番大事と強調する。本の処理に困った人の問いかけに「後悔が残る形でモノを処分するのは望ましくない」と寄り添って答えたという。ただ、それはこう続く。「ただし、持ち物の悩みから解放されることは簡単なこと、持ち物を手放すだけだ」。選択は、常に自分。これも「極み」である。


 今冬は雪が多かったので、除雪道具について用途にあうものの便利さを痛感した。結果少しモノが増えた。これはこれで技術の有意性があると思う反面、一つでいろいろと使い回す工夫ができるのも、人間ゆえだ。嗜好品などは決意さえあれば見直せるはずだ。「極み」の道は遠いが、持たない格好よさには憧れる。