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「カネ」で大事を説く本

2018年10月11日 | 読書
 中国ではずいぶんQRコードによる支払が進んでいることを目の当たりにした。キャッシュレスに関して「日本人は現金が好き」という論述も多く、自分もご多分に洩れず、やはり「カネ」とは現金というイメージが色濃く残っている。給与振込も最後まで抵抗したから人一倍強いのだろう。この著者はどうなのかなあ。


2018読了96
 『この世でいちばん大事な「カネ」の話』(西原理恵子  角川文庫)



 そのあたりは触れられていないが、「『カネ』はいつも、魚の匂いがした」と漁師町で育った幼年時代が強調されている箇所から考えると…。いや、筆者が言いたいのは、「カネ」にまつわる生き方の話なのだから、案外どうでもいいか。それでも学生時代「通貨の単位は『のり弁』だった」と書く換算意識は独特である。



 夫婦のことを記した本(映画も観た)や伊集院静との共著も読んでおり、女性にしては「無頼」がよく似合う人と感じていた。彼女の性格形成がどんなふうに出来上がったのかよくわかるし、想像以上に凄まじい。貧しさにのみこまれ「人が人でなくなっていく」過程をよく見てきたからだ。ぎらぎら見つめていた。


 仕事とは…稼ぐとは…、それらの問いに真正面から断言しようとしている。「自分が稼いだこの『カネ』は、誰かに喜んでもらえたことの報酬なんだ」。自分探しに迷い込んでも、その視点を明確に持っていればかなりいい「落とし所」が見つかるなどと少し似合わないバランス論も展開する。経験値が高く説得力がある。


 アジアの中で貧困に窮する子どもたちを見る目は、厳しくも温かい。人が人であることの意味は貧しさだけでは語られないが、視野を広げると価値観が揺さぶられ、行動を突き動かす要素になる。ふと、この本は「道徳」教材としてかなり面白いと思った。中高生ならぴったりだ。どこかで誰かが既にやっているかな