すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

たどれば秋の匂いも

2018年10月13日 | 読書
 昨日読了した新書に絡めて、自分の皮膚接触や肌の記憶を少したどってみたい。母親が一番だったことに間違いないだろうが、今思い出せるのは背中に負ぶわれた感触か。しかしそれはどちらかと言えば、視覚情報と重なっている。ぼんやりではあるが、確かにあったのは映画館だ。


 だから、怪獣映画より先に「渡り鳥シリーズby小林旭」を母の背中越しに見ている。その行き帰り、吹雪が顔に当たって寒いのに負ぶわれた背中に包まれた温かさ…遠い記憶だが微かに残る。残念ながら、飲んだくれの親父にそうした皮膚接触の覚えがない。印象的なのは祖母だ。



 祖母の足。これはくっきりと明確にイメージできる。幼い頃、いつも「足踏み」(足の平を、足で踏んで揉む)をさせられたからだろう。足の外側に出ている骨(腓骨というのだろうか)の外側の皮膚がガサガサしていることなど、妙に忘れられない。それだけ繰り返し摺り込まれた。


 祖母は足の大きな人だった。それほど大柄ではなかったが骨太でだから96歳まで生きた。最後は施設に入り老衰で逝ったが、駆けつけた時に亡くなった祖母の足を触り、その冷たさに心揺さぶれた。肌の記憶が呼び起されたのか。そう感じられたのは、今思うと幸せなことだろう。


 後は何を思い出せるか。ごつごつした男の手の感触。誰か。おそらくはどちらかの叔父の手だ。小4で父を亡くしたので二人にはずいぶんお世話になっている。正反対の性格であったが、どちらも百姓としての矜持を持っていた。稲刈の手伝い、茸採り伝授…秋の匂いとともに甦る。