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「チホちゃん」に叱られるぞ

2018年10月22日 | 雑記帳
 ワイドショーネタみたいに「沢田研二の公演ドタキャン」について思ったことを一言。散々に批判する者もいれば、気持ちはわかると擁護する者もいるようだ。それにしても、我々の世代にとっては輝く大スターのジュリーが…と暗鬱な気分になる。犯罪ではないにしても「晩節を汚している」と言っていいだろう。


 お笑い芸人がよく「客が一人の場所で演じた」などと過去の苦労話をすることがある。下積みのエピソードとして紹介するに相応しい話題と言えるだろう。それはきっと何人であれ「お客を喜ばす」ことが、芸能人としての一番根幹にあり、どんな形であれそれを全うしているからだ。それがブレない姿に感心する。


 ところが、人は成功して月日を重ねると往々にして、その基本を忘れる。会場に駆け付けた7000人全員の気持ちを知るべくもないが、一目見たい、歌を聴きたいと足を運んだ人たちは、その喜びを得ることができないままだった。沢田はおそらく、それを想像する前に他の要素(契約なり虚栄なり)を優先させている。


 そうした姿勢を続ける者が、心を打つ唄など歌えるものだろうか。大衆が「審美眼」を発揮すべき点はそこだ。むろん我が儘な芸術家が人の心を感動させることはよくあると歴史は語っている。しかし、それは極めて稀でレベルも違う。ネットでは様々な事情が仕方なきことのように語られるが、結局枝葉に過ぎない。


 「チホちゃんに叱られるぞ」が一発でわかった人はテレビ通である。「チコ」ではなく「チホ」。漢字で書くと「千帆ちゃんに叱られるぞ、ジュリー」である。『寺内貫太郎一家』で悠木千帆(樹木希林)が叫ぶあのシーンである。ジュリーの写真へ向かって「ボーッと生きてんじゃねえよ」と樹木希林に叱ってほしい。