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鈍らせてはいけない「遅いシステム」

2019年01月26日 | 読書
 常套句のように「スピード感を持って」という言葉が使われ出してもうかなり経つような気がする。

 ネットの普及とともに早い・速いの価値はごく普通になってしまったが、少し立ち止まって考えれば、誰しもがその危うさに怯えを感じるのではないか。

 今朝画面で見た情報を、自分はどんなふうに受け入れているのだろうか。


Volume.140
 「私たちの脳は二つのシステムでできていて、ひとつが論理的に考える『遅いシステム』、もうひとつは論理的に考えず、感情で動く『速いシステム』です。前者は使っていないと鈍りやすい上に、すごくエネルギーも使うので、普段はあまり使いません。」


 「人はなぜ嘘をつくのか」をテーマにノンフィクションライター福田ますみと対談した、脳科学者中野信子の言葉。


 教育現場に起こったセンセーショナルな事件等を書いてきた福田は、取材者たちの語る嘘や現実に驚きながら、脳科学や精神科学からの見方を中野に対して訊いている。

 未読であるが『サイコパス』というロングセラーの新書の著書である中野は、それを本人の心理状況、そして巻き込まれやすい周囲の分析など絡めながら、脳の特性を語っている。

 例えばと出されたのが、米国のトランプ大統領。「言っていることは滅茶苦茶ですが『速いシステム』に訴えるのが上手なんですね」という。
 そして、結果的にその支持層が労働者階級以外まで拡がったことに対して、実際の判断が「速いシステム」なのに、後付けとして「遅いシステム」を使うことに危機感を募らせている。

 自分は理性で判断していると思い込みがちなのはインテリ層に多いらしい。
 心の中にあるモチベーションや使命感に対して、感情的に働きかけられて取り込まれる危険性が少なくない。


 目の前の事象に対して「ちょっと待てよ」と遅いシステムを起動させる習慣もつけておく必要がある。
 鈍らせていけないのは、そちらの方なのだ。


 「サイコパス」(反社会性人格障害)に関するデータ、特に生存戦略などは実に興味深いがこれは新書を手に取ってから再び考えよう。