すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

図書館にいつも居ること

2019年01月30日 | 読書
 先日、懐かしい映画『Love Letter』をBSで放送していたので観た。この頃の中山美穂は魅力的だなあ、岩井俊二の作品らしいなあと思いつつ鑑賞した。図書室のシーンが印象深く中学生役の酒井美紀、柏原崇がハマっていた。図書室、図書館という場所が放つ空気感は、人間を成長させるにふさわしい。


2019読了11
 『図書館の神様』(瀬尾まいこ ちくま文庫)


 初めて読む作家。さらりとしていて読みやすかった。描写や人物の言葉が自然であり、劇的な展開とは言えないけれど読み手の心にすうっと入る印象。だから、読み終わった後に心に残る場面はそれぞれ違うのではないか。ただ、高校教師の主人公が顧問をする文芸部の、唯一の部員垣内君の格好良さは皆頷くだろう。


 体育系でバレー部の顧問をしたかった主人公は、垣内君へ文芸部のつまらなさを嘆く。しかし彼はきっぱりこう言う。「バレー部のほうが、毎日同じことの繰り返しじゃないですか。文芸部は何一つ同じことをしていない。僕は毎日違う言葉をはぐくんでいる」…唯一の部員が持つ矜持とも言うべきか。内省する男だ。


 垣内君のクライマックスは、全校生徒を前にした発表だ。用意された原稿を壇上で仕舞い、文学の素晴らしさを堂々と語る。三年間、図書室で幸せに過ごした時間をこんなふうに結ぶ。「マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。僕は本を開いてそれをする」…こんな表現を培ったのは図書館だ。


 他に短編が一つ収められている。表題作と共通するのは主人公女性が「頭痛もち」で、対役として少し風変わりな男性が登場すること。その二つの要素で広がる風景はなんとなく浮かぶ。映画に出来そうな話と検索したら、かつて石原さとみ主演で映画化が進み、途中で頓挫したという情報が載っていた。観てみたい。