すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

イナカ川柳にハマる

2019年07月05日 | 読書
  必要があって俳句の本を探していたら、同じ書棚になかなか興味深い書名を見つけた(これが図書館や書店めぐりの醍醐味で、ネットのおススメとは違う出逢い方のような気がする)。川柳だと正統派?の時実新子作品、それからいつも話題になる「サラリーマン川柳」が思い浮かぶが、これも結構インパクトが強い。

2019読了68
 『イナカ川柳』(TV Bros編集部)


 田舎をネタにできるのは、いわば「自虐」の材料があふれているからである。表紙をめくって、「はじめに」の前に写真とともに置かれた2句が象徴している。

 「商店街 シャッター、シャッター、 店、シャッター」

 「何もかも 巨大なイオンが 包み込む」



 たしかに「東京周辺に住む人たちを除いた3/4の日本人のあるあるネタ」にあふれ、かなりニヤツクことが出来る。ただ「田舎」と言っても範囲は広く、「集落が 秘境と呼ばれ 自覚する」という過疎地レベルから、「イケアから 近所のニトリに 浮気する」という県庁所在地近辺レベルまで混合している。


 いずれにしても、今の日本の風景をかなりリアルに描いていると感心した。近所で起こっていることから、ドラマで取り上げられそうなこと、ドキュメンタリーで放送されるような、いわば社会問題の全般が網羅されているといっていい。

 「近所の子 結婚出産 そしてレジ」

 「地区行事 一枚噛んだら 逃げられない」

 「長男と 余った野菜は いつもある」



 編集部は「ディストピアと化した田舎に向けて、東京のテレビは『恵比寿の美味しいお店』など、今日も能天気な電波を発信しています。まるでひとつの国の中に、田舎と東京という二つの国があるかのようです」と書く。地方創生などと東京の官邸や議事堂から漏れてくる声が響かない訳を、政治家は知っているか。


 裏面の表紙カバーは、青空に筋雲が伸びたさわやかな写真が使われている。そこに掲げられた一句が、自分の中ではベストかな。和歌山市の人が詠んでいる。

 「東京に 続いている気が しない空」