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嘘ばっかりのこの人生で

2019年07月07日 | 読書
 「」はシソーラス(類語辞典)では7つに区分される。「嘘・嘘を吐く」以外に「大言壮語」「放言」「二枚舌」「有言不実行」「変心」「謀(たばか)る」だ。広辞苑を読むと、その意味は三つに区分される。「真実ではない」「正しくない」「適当でない」。それを意図的に行う表現としては「偽る」「騙す」がふさわしいだろう。


2019読了69
 『嘘ばっかり』(川崎 洋  いそっぷ社)



 「生きていくことが楽しくなるような、ユーモアのセンスが光るような、そんな嘘をつきたいものです。」…この本はそんなふうに締めくくられる。広島の神社の「嘘つき大会」に触発され、17年もの間、嘘をめぐる本や新聞、雑誌等の記事を集めてきた著者。落語から詩、民話、民俗祭祀などから、かなり広範囲に紹介がなされている。


 嘘をつくと閻魔様から舌をぬかれるという話は幼い頃に聞き、なんとなく頭に残ってはいる。だから正直に言えば、舌はもう何百枚抜かれても文句は言えない。反面、悪意ある嘘、誰かを傷つけた嘘…を思い起こしてみると、少し評価が甘い。これが自分に嘘をついている状態か。かように人生は「嘘ばっかり」だ。


 さて、嘘をめぐる様々な話題の中に「偽薬」があった。研究対象として新薬の実験などでよく聞く言葉だ。「医者がもっともらしく渡す薬」は、中身がうどん粉であっても一定の治癒に貢献するというのだから、設定、言葉によって動かされる心の働きを思わざるを得ない。宗教だって選挙運動だって見分けがつかない。


 何篇かの詩が紹介されている。谷川俊太郎のこの詩は読んだことがあったろうか。「うそとほんと」と題されたこの詩の最終連は、今私たちがもっとも心したい姿勢ではないか。放送や公報をまともに受けとめるのではなく、今までのあれやこれやをもう一度思い起こして、その言葉をその声を吟味してみたい。

 うその中にうそを探すな
 ほんとの中にうそを探せ
 ほんとの中にほんとを探すな
 うその中にほんとを探せ