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選挙の日に読み終えた教科書

2019年07月21日 | 読書
 投票率が良くない理由をどう説明するか。一言で言えるようでもあるし、数え上げればきりがない気もする。ただ学校教育に携わった者からすれば、その責任の一端があることは確かと自覚はしている。「自主」「自立」「自治」という面における教育活動のなし崩し的な後退は、目に見えていた。手をこまねいてきた。


2019読了73
 『あなた自身の社会 スウェーデンの中学教科書』
 (アーネ・リンドクウィスト ヤン・ウェステル  川上邦夫・訳 新評論)


 国語科教科書なら多少は概観できるが、社会科は自信がない。だから日本の教科書と比較できるわけではない。ただおそらくはここまでは踏み込めていないと思われる「社会の負の面」を臆することなく紹介してある。いじめ、離婚、暴力と犯罪、アルコールと麻薬、社会的弱者等々。13,14歳に向けて語られている。


 章立ては「法律と福祉」「あなたと他の人々」「あなた自身の経済」「コミューン」「私たちの社会保障」。国や自治体の組織についても、例えば「犯罪者更生施設」なども取り上げられており、視点は俯瞰と微視を行き来している。説明の後に課題として、知識をまとめる問い、自分の考えを明らかにする問いが挙げられる。


 現天皇が45歳の誕生日に朗読した「子ども」(ドロシー・ロー・ノルト)が資料として載っている。「批判ばかりされた 子どもは/非難することを おぼえる」で始まり「可愛がられ 抱きしめられた 子どもは/世界中の愛情を 感じとることを おぼえる」で終わる詩だ。現実を見据える問いかけが課題とされる。


 例えば「激励や賞賛が良くない場合」「無理な要求ではないか」「要求に応えられない場合」…という問いだ。ここに示されるのは、困難や都合の悪いことに対してもあきらめず考えようという習慣づけだ。まさに我が国では希薄な部分だと思う。ステレオタイプで、良い点悪い点を挙げるだけでは能力は培われない。


 「この国では誰しもが、なんとかなると思っている」と語ったのは、かつてのサッカー日本代表監督オシムだった。それはある面では調整に長けていることかもしれないが、結果個の主張を抑え同調していくことに重きが置かれ、過程にある肝心の中身はすかすかだ。だから、選挙や投票もその一つになり下がった。