和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

忘れた頃に。

2011-08-13 | 短文紹介
最初は、出久根達郎著「百貌百言」(文春新書)でした。
そこに寺田寅彦の「予言」として、
「『天災は忘れたころにやって来る』は寺田寅彦の名言、と著名だが、寺田の著作にこの言葉はない。似たような言い回しがあり、弟子の中谷宇吉郎が要訳して広めたのである。」(p26)とあったのでした。
さて、中谷宇吉郎のどの文にあったのかなあ、などと思って、そのまま忘れておりました。
今年になって中公文庫に寺田寅彦随筆選集「地震雑感/津浪と人間」が入りました。その千葉俊二氏の解説は、こうはじまります。

「天災は忘れた頃にやって来る、という寺田寅彦の名言はよく知られている(土佐高知市の寺田寅彦旧宅跡には『天災は忘れられたる頃来る』という高知出身の著名な植物学者、牧野富太郎の筆による記念石碑が掲げられている)。寅彦の愛弟子である中谷宇吉郎は、この言葉は話のあいだにしばしば出たものだが、寅彦の書かれた文章のなかにはないといっている(「中谷宇吉郎随筆集」岩波文庫)。・・・・」

ああ、岩波文庫で簡単に読めるのだ。と教えられたのでした。
けれども、ある筈の、その岩波文庫が見あたらなかったのでした。
それが、他の探しものをしていたら、何げなく見つかったのでした。
さっそくページをひらいてみました。
なあ~んだ。2頁ほどの短い文です。
題は「天災は忘れた頃来る」。
すこし引用。

「・・・ところで、よく聞かれるのであるが、この言葉は、先生のどの随筆にあるのかが、問題になっている。寅彦のファンは日本中にたくさんあって、先生の全集は隅から隅まで、何回となく繰り返し読んだという熱心な人がよくある。そういう人から、どうもおかしいが、この言葉は、どこにも見当らない。一体どこにあるのか、という質問をよく受ける。
実はこの言葉は、先生の書かれたものの中には、ないのである。しかし話の間には、しばしば出た言葉で、かつ先生の代表的な随筆の一つとされている『天災と国防』の中には、これと全く同じことが、少しちがった表現で出ている。それで私も、この言葉が先生の書かれたものの中にあるものと思い込んでいた。もう十五年ばかりも昔の話になるが、たしか東京日日新聞だったかに頼まれて『天災』という短文を書いたことがある。その文章の中で、私はこの言葉を引用(?)して『天災は忘れた頃来る』という寅彦先生の言葉は、まさに千古の名言であると書いておいた。・・・」(p270~271)

うん。文庫本も忘れたころに出てきたりします。
また忘れないよう備忘録がてら書いておくのでした。
コメント
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