和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

杖にすがりて。

2014-11-08 | 詩歌
三上慶子著「私の能楽自習帖」(河出書房新社)。
そこに、こんな箇所がありました。

「世界の舞台芸術の中で、能には注目すべき
特色がある。それは老女物という美のジャンルを
作り上げたことである。・・・」(p214)

ちょうど、『鸚鵡小町』を読んでいると、
なるほどと感心してしまいます。

 ワキ
   ・・・・小野の小町、彼はならびなき
   歌の上手にて候が、今は百年(ももとせ)
   の姥となりて、関寺辺に在る由聞し
   召し及ばれ、・・・・


 サシ
  むかしは芙蓉の花たりし身なれど、
  今はレイデウ(あかざ)の草となる。
  顔ばせは憔悴と衰へ、膚は凍梨の梨の如し。
  杖つくならでは力もなし。・・・・

  注:藜デウ=アカザ。草の名。その茎で作った
       杖は軽く、老人用とされ、わが国
       では中気よけという迷信がある。


曲の中心には「この返歌を只一字にて申そう。」で、
まあ、その紹介は、はぶくとして(笑)。

そして、最後はというと

 シテ
  小町も今は是までなりと、
 地謡
  杖にすがりてよろよろと、
  立ち別れ行く袖の涙、
  立ち別れ行く袖の涙も関寺の、
  柴の庵に帰りけり。

コメント
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