和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

古本てえものは。

2015-02-13 | 短文紹介
山本夏彦対談は、味があるなあ。
「浮き世のことは笑うよりほかなし」(講談社)。

たとえば、出久根達郎氏との対談では、

出久根】 ・・でも先生、本もまた主人を選ぶと
いいますか、このへんが古本のおもしろさでしょうね。
人も本を選ぶけれども本もまた人を選ぶ、
呼びかけるんですよね。

山本】 そうです、古本てえものは死んだふりして
なかなか死なないんですよ。お客が入ってくると、
いっせいに振り向くんです、ひょっとしたら自分の
友じゃないかとか、自分の知り合いになりうる人
じゃないかって見るんですね。縁のない人と思うと
また長い眠りにはいるんです。それはね、入口あけ
たときにね、いっせいに見るんです。開いた音が
するたんびに・・・・

出久根】 たしかにね、私は店を閉めましてね、
表の戸を下ろしまして、誰もいない店を眺める
っていうのが大好きなんですけれどもね、
やっぱり先生、本は生きてるなあっていう
気がしますね。今日もおまえたち売れ残っ
ちゃったなって、こっちは話しかけるんです
けれどもね。本の方はいつか売れますよって
なぐさめてくれます。
   (p273~274)


語りかけてくるといえば、
この本の小木新造さんとの対談に
久保田万太郎の名前が登場してたんだ(笑)。

山本】 僕はこないだ寺子屋のことを書いたん
ですけど――久保田万太郎の『大寺学校』。
明治の末に寺子屋があるなんて信じられなくて、
あれ、小木さんに聞きにいきゃいいんだけど、
僕は電話をかけるのがきらいですから。
・ ・・・・・
小木】 僕は久保万のあの芝居『大寺学校』を
見てますよ。

山本】 あ、ご覧でしたか。三津田健の大寺先生。

小木】 ええ。それでもあんなことがあり得るのかと
ずっとひっかかってたんです。俳句はうまい人だけど、
あれは絵そらごとじゃないかって疑っていたんです。
ところがいろいろ調べてみると、あれはまさに
実録なんですね。
   (p125~126)


はい。『いっせいに振り向く』じゃなくて、
私だけ振り向く、というような、
瞬間の味わいを楽しめました(笑)。


さてっと、今年は、山本夏彦という古本が、
『いっせいに振り向く』のを体験できそうな
気がしてきました(笑)。
コメント
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