和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

老而益学。

2015-02-25 | 短文紹介
伊藤正雄著「引かれ者の小唄」(春秋社)を
パラパラとめくっていると、
私に印象深かった小文は、というと、
「一身にして二生を経るが如し」と
「老而益学」の二つの文でした。

ここでは、二つ目の「老而益学」
を紹介。

はじまりは、

「私が子供の時分、父親がよく口にしてゐた
歌があります。

 四十五十は洟垂れ小僧 男盛りは七八十

といふのであります。」

そして、窪田空穂氏の短歌を説明して

「〈年を取って読む本は、若い時より一言一句
の意味が身にしみて分る。自分の長い年輪の功で、
著者の気持に共鳴されることが増えて来るのである。
これこそ年寄の至上の楽しみで、なんぞ老いらくの
悲しみなどを訴へる必要があらうか〉
といふ意味であります。作者の窪田空穂氏は、
九十一歳まで長寿を保って、昭和四十二年
世を去りました。」

次に鉄斎を語って、

「鉄斎の画は年を取るほど若くなってゐる。
ことに八十歳を越してから、一層筆力が
充実を加へたといふのが定評のやうであります。」

「彼(鉄斎)は晩年に及んで、『老而益学』
といふ印を彫らせたさうであります。」

そして、四頁ほどの文の最後はというと、


「学校には定年があるが、学問には定年がない。
芸術にも定年はありません。われわれは、
『老而益学』といふ鉄斎翁の精神をモットー
として、老いらくの男盛りをいよいよ楽しく
且つ有意義に送りたいものだと思ひます。」



この文は昭和50年4月19日と日付があります。

ちなみに、伊藤正雄氏は
明治35年5月に生まれ。
昭和53年3月に亡くなる。
享年77歳。
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