和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

喋る宮本常一。

2015-02-14 | 地域
宮本常一の、おそらく最後のお弟子さん。
その講演を聞かせていただきました。
地元の、それもすぐ近くであったので、ちょっと
時間をさいて出かけられ、よかった(笑)。

どうも、私は耳バカで、
聞いても、右から左へと内容が
素通りしてしまう。
これはいけないと、今回は
録音させてもらうことに、
30~40人ほどを相手の講演なので、
気楽に、講演直前に、録音許可を、
講演者にお願いするとOKしてもらえました。
ありがたい。
今になって、
その録音をあらためて、
文字に打ちこんでおります。
うん。うん。と打ち込んでいる段階で、
やっと、内容が理解できる私なのでした。

それじゃあと、
ここから、宮本常一の本を読めばよい
のでしょうが、そこへは、いかずに、
読んだのは解説。講談社学術文庫の
宮本常一著「民俗学の旅」。
その神崎宣武の解説を、
なるほど、なるほど。と読みました。

神崎氏は、
「私は、武蔵野美術大学に在学中から、
先生が亡くなるまでのおよそ25年間、
比較的近しいところで宮本常一に師事した。」

と解説にあります。
もう少し解説を引用してゆきます。

「ある時期、私(神崎)は、働いている人の手を
止めてまで聞きとり調査をしていいのだろうか、
と思いなやんだことがある。それは、
先生への反発でもあった。くる日もくる日も、
昼であれ夜であれ、傍らでノートをとる私が
あきれはてるほど老人相手に延々と話を聞きとる
のである。相手もさぞや疲れているのでは、と
思えた。それで、ある晩、私はその疑問を
口にだした。
 
 『友だちだと思い、思われたら、少しのじゃまは
気になるまい。それで話に興がのれば、
一気に聞くのがよい。質問に答えてもらうんなら、
互いに疲れもしよう。だが、人はみんな、
話したいことをもっている。その人が話したい
ことをその人が話そうとしているときは、じっと
聞いたらいい。話には、ひとつの流れがあって、
これに口をはさんだり止めさすのはよくない。』

先生は、そういう意味の答えを返された。・・・
聞きとり調査とは、問わず語りに耳を傾けるのが
よろしいのである。それが望ましい。友だちに語るが
ごとく話が流れるところに、質問ではけっして得られ
ない真実が吐露されるものである。が、その友だち
同様の信頼関係をつくるのがむつかしい。これは、
互いの相性が問われることでもあるが、つまりは
自身の人間性が問われることなのである。・・・」
(~p240)


さてっと、解説には『よく喋るおじさん』という
表現があります。その箇所も引用しておかなきゃ。

「昭和42年(1967)・・ほぼ時を同じくして、宮本は、
武蔵野美術大学で民俗学の講義を行なうことになる。・・
私は、そのころからの宮本常一しか知らないのであるが、
はじめの印象を遠慮なくいうと、『よく喋るおじさん』
であった。フィールドワークであれほど聞き上手な人が、
私などを相手には、ほとんど相の手もはさませないほど
によく話した。躁的な多弁症なのではないか、と疑う
ばかりであった。
また私ごとで恐縮だが、学生のころの私は、人前に立つ
とあがって膝がふるえ、うまく話せないでこまっていた。
ところが、先生は、そんな私を研究会の発表者に連続で
指名し、その夜、食事に誘ってくれたものだった。

 『みんなにわかってもらおうとして話すから失敗
するんだ。わかってくれるのは誰かひとりでいい、
そのために自分を正直に語るつもりで話すのがよい。
儂(わし)も、大学に来てみてよかったことがある。
それは、君らを相手にあれこれ話をしているうちに
自分の考えがまとまってくる、ということがわかった。』

それはともかくとして、しかし、宮本常一の講義は、
何よりも自身の民俗学的な思想を問うために機能して
いた、と、私は確信するのである。」(~p245)


ちなみに、私が講演を聞いたのは、昭和30年生まれで、
武蔵野美術大学でのおそらく最後のお弟子さんのお話で
した。聞けて、よかった。そして、ありがたかった。

こうして、講演の録音した言葉を活字にしていると、
民俗学というのは、たとえていえば、
小学校の校庭の二之宮金次郎像。
その像を思い描いてください(笑)。
私など、金次郎の本を読んでいる姿に、要約して、
目がいってしまうのですが、民俗学というのは、
より全体像を見て、むしろ、背負っている背負子
(しょいこ)と枝木とに着目する学問らしい。
そういうことが、やっと、飲み込めた気がします。
これで、宮本常一を読むことができそうです。
ありがたい収穫でした。


コメント
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