和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

ポキンの東京芸大。

2015-07-27 | 書評欄拝見
産経新聞の書評欄(7月26日)に、
作家・北康利氏が書評を寄せておりました。
本は、茂木健一郎著「東京藝大物語」(講談社)。
その書評の最後は、

「脳科学者、茂木健一郎が新境地を開いた
瞠目(どうもく)の一冊である。」


書評のはじまりは、

「著者が東京芸大の講師をしていた
2002年から5年間の、芸術家の卵たちとの
交流を描いた青春群像物語である。
2浪3浪当たり前という超難関校であるにも
かかわらず、就職率がとても低く、
芸術家としての成功率はゼロに近い。
・・・」


「ゼロに近い」といえば、
読売新聞の編集手帳(2015年4月7日)
が思い浮かぶ。そのはじまりは


「いきなり鼻っ柱をポキンと折られた
心地がした。彫刻家で、東京芸術大学の
学長をつとめた澄川喜一さんである。
ご自身が芸大に入学したときの思い出を、
かつて本紙で回想している。
当時の学長は入学式の式辞で述べたという。
『おめでとう。入学した170人は磨けば光る
原石である。このなかから一つか二つ、
美しく輝く宝石のような芸術家が生まれれば、
それでよい。ほかの168人は宝石を磨く
手伝いをせよ』ポキン・・・・。」

もどって、7月26日の産経では
石原千秋氏が芥川賞を受賞した
又吉直樹『火花』を、評価するのに
こんなふうに書いております。

「僕の評価はこうだ。
昨秋、新国立劇場デイヴィッド・ヘア
『ブレス・オブ・ライフ』を観た。
フランシス(久世星佳)の元夫であり、
マデリン(若村麻由美)の元恋人である
マーティンについて、この2人が時に激しく
ぶつかり合いながら語り続ける二人芝居である。
二人芝居の常道であり、ベケットの『ゴドーを
待ちながら』以来の趣向でもある。
若村麻由美の熱演にもかかわらずとても退屈だったのは、
どれだけ想像力を働かせても、肝心のマーティンに
まったく魅力が感じられなかったからだ。
『こんなつまらない男に振り回された2人は気の毒』
としか思えなかった。
『火花』はこれと同じだ。
要するに『蒲田行進曲』のパターンで、
お笑いコンビ『スパークスの徳永』が
『あほんだらの神谷』を慕い続ける話なのだが、
肝心の神谷にちっとも魅力がない。
『徳永さん、お気の毒』である。・・・」


こちらは、ポキンの芥川賞(笑)。

そういえば、WILL9月号の対談に
元文芸春秋社長・田中健五氏が登場。
そこから引用することに、

はじまりは

花田】 続く出版不況などで、いま出版界に
元気がない。雑誌界のリーダーとも言うべき
月刊『文藝春秋』も、精彩がありません。・・
(p240)

引用したいのは、ここかなあ。

花田】 健五さんは『諸君!』の初代編集長ですが、
これは面白かったでしょう。

田中】池島信平さんとしては売れなくていいから
やれという感じだった。要するに池島さんは戦後、
『文藝春秋』を生き返らせた自信があった。
でも『文藝春秋』が売れ過ぎちゃって、
ま、無茶ができなくなったというか、
言いたいことを言える雑誌が欲しくなったんでしょう。
加えて、当時の左翼一辺倒の思想的な状況があって
『諸君!』を立ち上げた。・・・・
まぁ、苦労はしましたね。有吉佐和子がふらっと
編集部に来て『手伝おうか』と言ってくれたんだけど、
今度の雑誌は小説が入らないんだと断った
こともあったなあ(笑)。
(p247)


うん。今日の名言。
「言いたいことを言える雑誌が欲しくなった」
「今度の雑誌は小説が入らないんだと断った」

さりげなく、こんな対談も載せてくれてる。
瞠目の、WILL9月号。
「現代を磨く手伝いをしてくれる」なんて、
キャッチフレーズをつけたくなる雑誌です(笑)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする