和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

狼の口上『永久御懇意なるべし』。

2015-08-16 | 朝日新聞
産経新聞8月16日の一面が興味深い。
朝日の社説を、産経の一面で紹介しております。
朝日の社説など読まない私には、興味深く、
ありがたい(笑)。


「戦後70年の安倍晋三首相談話発表から
一夜明けた15日、新聞各社は社説で論評した。
『この談話は出す必要がなかった。
いや、出すべきではなかった。改めて強くそう思う』
こう断じたのは朝日新聞だった。・・」


うん。これで十分。
朝日が『出すべきではなかった』
という戦後70年談話。つまり、
朝日新聞の社説が、強く消し去ろうとする、
この談話こそ、ていねいに読まなければ、
と思う。

さてっと、産経新聞3面には
古森義久氏の連載「あめりかノート」。
そのはじまりは

「いまの日本では『平和』という言葉が
暴力的な効果をも発揮するようである。
より正確に述べるならば、『平和』が
日本の国民や国家を守ろうとする努力を
破壊する政治的武器に使われる、
という印象なのだ。」

すこし先には、こうあります。

「日本でとくに8月に語られる『平和』は
単に『戦争のない状態』を指すといえよう。
平和の内容が決して論じられないからだ。
戦争さえなければ、他国に支配された
『奴隷の平和』でもよいのか。
自由も人権も民主主義もない平和でもよいのか。」


ということで、夏休みの子どもに読ませたい本は、
昨日に続いて「イソップ寓話集」。

塚崎幹夫訳「新訳イソップ寓話集」(中公文庫)


「  旅人とプラタナス

夏の真昼ごろ、太陽の暑さに疲れた二人の旅人が
プラタナスを見つけてその枝の下に逃げ込み、
木陰に横になって休んだ。ところでプラタナスを
見上げた彼らはたがいにいいあった。
『これは実がならなくて人間の役に立たない木だ』
プラタナスが沈黙を破っていった。
『恩知らずな人たちよ。いま現に私の恩恵をこうむって
いながら、私のことを役立たずだの不毛だのと
よくいえたものだ』
・・・・・・・・・・」(p182)

p215には「隠された意図を見抜く」と題して

「   オオカミと羊の群れと雄羊

オオカミが羊の群れに使者を遣って、
犬を自分たちに引き渡して殺させるという条件で、
永続的な講和を結ぶことを申し入れた。
ばかな羊たちはそうすることに同意した。
しかし、年とった雄羊が叫んでいった。
『どうしておまえたちを信用して
いっしょに暮らすことができようか。
犬たちに守られていてさえ安心して
草を食べることができないのに』

和解できるはずのない敵の約束を信じて、
われわれの安全を保証しているものを
手放すようなことがあってはならない。」(~p216)


選挙権がある成人が読むとしたら、明治6年の渡部温訳。
ここでは、平凡社東洋文庫の
渡部温訳「通俗伊蘇普物語」から引用。


「  狼と羊の話

或時狼の方より。羊の方へ使者以て申入る口上に。
『いつまでも御互に斯讐敵(かくあたがたき)の
思(おもひ)を為し申(まうす)べき。
畢竟(ひつきょう)御辺の方に彼犬と申奸奴(わるもの)
があつて。我等共を吠罵り候故。とかく騒動を
引起し申なり。願くは彼犬どもをすみやかに追のけ給へ。
然る上は交際に付。以後いささかも故障なく。
永久御懇意なるべし』とありければ。
羊は何の気も付(つか)ず。
狼の言理(こともつと)もなりと。
直に犬を追出すと。
其後は護るものがなくて。
数多(あまた)の羊一疋も残らず。
皆狼に喰(くはれ)けるとぞ  」(p72)


通俗伊蘇普物語では
『永久御懇意なるべし』という狼の口上。
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