食べ物もガツガツと食べられない癖して、美食を欲するように、
本も全集を読めない癖して、特定箇所だけを読みたいと欲する。
ちょうど、私が今、読みたいと思っていた宮沢賢治がそこにありました。
森荘巳池著「野の教師 宮沢賢治」(近代作家研究叢書86)。
うん。ここは続橋達雄氏の解説から紹介。
「・・『野の教師 宮沢賢治』は新書判・・・
1960(昭和35)年11月28日、普通社から出版された。
口絵写真に1937(昭和12)年ごろ撮影の岩手軽便鉄道を収め、
それらを含め全256ページ、本文251ページ。
『花巻農学校精神歌』を巻頭に据え、章立てはしないものの
実質的には10章から成る。内容は、賢治が1921(大正10)年
12月3日から26(大正15)年3月31日まで在籍した農学校の教師時代、
『 この4ヶ年はわたしにとって / じつに愉快な明るいもの 』
(「春と修羅」第二集『序』)だったと繰返しなつかしんだ生活を、
当時の教え子や職場の同僚の回想を交えてまとめたものである。
具体的には、佐藤隆房『宮澤賢治』、
関登久也『宮澤賢治素描』『続宮澤賢治素描』などから
農学校教師時代のエピソード数篇を選んで整理し、
自ら司会して賢治の同僚から聞き出した話(座談会記事他)
などを加えて一書にまとめている。これは、農学校教師像に
焦点をあてて、それまでに集められたエピソード類を
簡潔に整理した最初のものであった。・・・・
巻頭に据えた宮沢賢治作・川村悟郎作曲『花巻農学校精神歌』は、
本書ぜんたいを包みこむものであろう。・・・
『精神歌』について堀籠文之進に語らせ、自らはほどんど語らない。
その禁欲的な扱い方が、これを巻頭においた意味をかえって
鮮明にしていると思われる。・・・・・
先を急いでしまったが、教え子の語る賢治像と、
教師になるまでのエピソードを集める『彼の周辺』との間に、
同僚などからみた教師像、ときには、教師の肩書をとった人間像、
が語られる。それは、教え子の目に映じた人間像と交流しあって、
農学校教師としての賢治像をいっそうふくらませていくのである。
・・・・・ 」
はい。今の私は、賢治のこういう本を読みたかったでした。
まだ、読んではいないけれど。出会えてよかった一冊。