和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

主人公はネコ。

2023-07-01 | 絵・言葉
梅原猛氏は宮沢賢治について

「賢治のよって立つ世界観は、近代人であるわれわれが
 その上に立っている世界観と大きくちがっている。
 
 われわれの立っている世界観を正しいと思うと、
 賢治の世界は十分に理解できない。

 われわれの立っている世界観の不安定さに気がついたとき、
 賢治のよって立つ世界観の意味がわかり始めるであろう。・・  」

   ( p1 「賢治の宇宙」佼成出版社・1985年 )

ここに、『大きくちがっている』という言葉があります。
このちがいの、違和感を取りのぞくのに、効果的だったと
私の思えるのが、【ますむら・ひろし】の漫画賢治童話集でした。
こちらは、大きく違っている世界観を、ネコを主人公にしていることで
私でも、ちっとも違和感なくはいり込めたのでした。
ちょうど鳥獣戯画を、面白おかしくパラパラとめくる感じでしょうか。
そして、アニメ銀河鉄道の夜の主人公たちも、ごく自然にネコでした。
うん。これが人間の顔で登場したら、何だか私は見なかった気がする。

映画といえば、今年「銀河鉄道の父」は、実写版で
賢治と、その父親との葛藤が描かれているようです。

三木卓氏は、指摘されてました。

「たとえば、かれが盛岡高等農林の助手の仕事を事実上やめて、
 これからどう生きていこうか、と考えている大正7年ころの
 青年であったとしたらどうか。

 いつのまにかわたし(三木卓)は、父親の政次郎のまなざしで
 見詰めてしまっていた。こんな強さと弱さがわかちがたく
 一体となっている、扱いの面倒な息子をもったら、
 わたしはどんな気持になるか。・・・・

 大正7年の賢治は22歳、高等農林を卒業する年であるが、
 このときかれの出身地の花巻も属する稗貫郡土性調査の
 ために研究生として残るようにいわれる。

 ところがこのころの賢治には、まだ農業関係に進む気持はなかった。
 乞われて土性調査に参加し、身体をこわすほど一生懸命に活動したものの、
 一段落したところで事実上この仕事から降りる。のちに
 助教授にと乞われるが、これも断ってしまう。
 では、かれは何がしたかったのか。・・・・      」(p5~6)

 (  「群像日本の作家12 宮澤賢治」小学館・1990年 )
コメント (2)
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