おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書76「野獣降臨(のけものきたりて)」(野田秀樹)新潮社

2010-01-19 23:16:37 | 読書無限
 永遠の演劇少年「野田秀樹」26歳、1982(昭和57)年作の戯曲。後書きには「駒場小劇場」にて公演予定とある。この芝居は、才気溌剌とした「天才」野田の、まさに勢いづいている頃。
 テレビで人気の高い女優などが出演し、えらく高い入場料を取って見せる、今の野田芝居とは、たしかに違う青年(少年)芝居。伝説の「夢の遊民社」。
 今さらながら、戯曲として「読んで」みて、そのテンポの良さと動きの激しさとテーマの荒唐無稽な展開と・・・。現実にあった宇宙船事故をモチーフに、ウサギの国と人の国人の争い、そこにそして病原菌撲滅の闘いと・・・。ギリシャ神話を交えながらの「若さ」あふれる芝居。
 野田の芝居は、基本的には「二項」対立という西洋哲学の論理法(表現)に即したものが多い。そうした弁証法的な作劇術は、下手をすると陳腐なものになってしまう。そこを正反合で止揚していく。その底にあるのは、今も昔も、言葉の絡み合い(闘い)、だじゃれに堕する寸前の言葉「遊び」、というのが野田の真骨頂か。
 今の若い連中がこれを観ても、おそらく芝居のテンポについて行けないのではないか。マシンガンのように飛び出す、激しくも情緒的な台詞を、頭の中で漢字仮名交じりに置き換えて、体と心で理解するという機能が、めっきり衰えている若い諸君。
 おそらく演じることも出来ないのではないか。その意味では、まさに考古学的名作というべきではある。
 残念! どこかで、再演する劇団(集団)はいないだろうか?
コメント (2)
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