おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「言語小説集」(井上ひさし)新潮社

2012-08-14 21:04:46 | 読書無限
 暑い熱い夏日には、木陰はないので、クーラーのきく部屋で、読書。暑苦しい小説などはゴメンナサイ。そこで、井上ひさしさんの小説など(失礼!)。
 この短編小説集は、20年から17年も前に断続的に連載されていたものを一つにまとめたもの。井上さんが亡くなられた後にも小説などが刊行されています。『一週間』(新潮社)などもその一つ。さすがに彼の作品の真骨頂たる「戯曲」はそういうわけにはいきませんが(TVアニメでは「サザエさん」など、とっくの昔に作者が亡くなっても延々と続いているのも不思議)。
 この小説群。生涯関わってきた日本と日本語のこと。標準語と方言。言語と脳・意識との関係性。言葉遊び(だじゃれ、組み替え)と言語(発語)の楽しさ、苦しさ、葛藤などが描かれています。
 まだワープロ全盛期の「括弧の恋」。記号を打ち込んでいく時のまどろっこしさ(脳から紡ぎ出されるおびただしい言語、それを変換していくスピードとのずれ)など今でも感じることがある、と言う具合に、時の古さを感じさせないおもしろさがあります。
 それぞれのお話。腹ばいになったり、仰向けになって読んでいても、ふと笑いがこみ上げて身体をよじることもしばしばでした。それぞれ「落ち」もわかりやすく読みやすい。その軽い乗りの執筆姿勢の見事さに感心します。
 それでいて、意味を持つ言語体系のあり方、また、音声と意味体系のねじれ、言語の普遍性、関連性など言語の根本問題について、読者の目を向けさせます。あの名作『吉里吉里人(一発で変換できた!さすが井上さん。)』から受けた井上さんの言語感覚の鋭さを改めて認識しました。
 
コメント
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