おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「さよならクリストファー・ロビン」(高橋源一郎)新潮社

2012-08-12 19:35:52 | 読書無限
 久々の読書。ことばと意味。現実と時間。生と死。タカハシさん、3・11大震災特に原発事故以来、今こうして生きている(生活している)己と己を取り巻く(支える)世界への関心が高まってきているような・・・。
 人間の存在のあやうさ、言葉のあいまいさ、世界との関わり(むしろ関わることへの懐疑、そして、それを何とか克服しての再び関係性を作り上げていこうとする人間存在)などなど。
 「クリストファー・ロビン」。父によって作り出された物語世界の中の人物であると同時に、その桎梏の中で生涯を過ごさざるを得なかった男のありよう。それが全体の小説(6つの短編集)を貫く低音部を奏でています。
 ここには、言語論、小説論、生死観、人生論など少しおしつけがましいほどのテーマが用意されています。なかでも、「アトム」。原発事故につながった(人々の、自分も含めて思いもよらなかった)バラ色だった世界が一瞬のうちにささやかな生活を奪い、人生観までも変えてしまった出来事。それに対して、何か関わっていかなければならないとしたら、果たして何が出来るのか。作家として教師として父親としての立場。そこにタカハシさんの悩みと一方で(いつものような)冷めた眼差しがあるように思いました。
 今年の夏。蝉の声があまりしません。特に、近年、蝉の声がやかましいほどであった我が家のささやか庭。蝉の抜け殻も、地中から抜け出した穴も見当たりません。今年の春、庭を掘り返し、少しばかりの木を切り倒し、整地し、コンクリートで固めて駐車場にしました。それも、小さな車が一台置けるだけのスペース。
 何年も地中にいて育ちやっと日の光を浴びる頃になって、すでに這い出る地面がなく、その前に地中で息絶え・・・、そのせいではないかと娘夫婦に言われました。・・・。人間の都合で浮かばれぬ多数の生命が渦巻く世界でもある、と改めて感じました。やれやれ。
 それにしても、静かな夏です。
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