老人支配国家 日本の危機 エマニュエル・トッド
「中国が”世界の工場”となり、欧米の多国籍企業が法外な利潤を得る一方で、先進各国で「産業空洞化」「賃金低下」「雇用喪失」「格差拡大」が生じ、この流れが行き過ぎました。これが「自由貿易」「グローバリゼーション」という美名の下になされてきたことの実態だったのです。この実態を「中国による死」(ピーター・ナヴァロの著書名)と見抜いたのが、”トランプの慧眼”と言うべきところで、2016年の大統領選でのトランプの勝利につながりました。」(p155)
「ですから、”コロナ後”の今日において、”新しいタイプの全体主義国”として世界に”脅威”を与える中国に対して、世界が連携して、これに対抗する必要があります。冷戦期の「ソ連封じ込め」のような「中国封じ込め」です。」(p158)
トッド氏は、中国を差し当たり「封じ込め」ておけば、やがて急激な人口減少によって”脅威”ではなくなるという見立てである。
他方、ロシアに対してはなぜか好意的で、日本はロシアと友好関係を築くべきであると「対露接近」を提唱している。
確かに、経済的な衰退の過程で「内部対立の外部転嫁」を図ろうとする国を封じ込める必要があるというのはそのとおりだが、その一方で、軍事力によって露骨に「サラミスライス」を狙う国の動きを容認するというのは、政治的な判断としては難しいだろう。
かくして、米欧は、好むと好まざるとにかかわらず「二正面作戦」を強いられることになるのではないかというのが、私の予想である。
「中国が”世界の工場”となり、欧米の多国籍企業が法外な利潤を得る一方で、先進各国で「産業空洞化」「賃金低下」「雇用喪失」「格差拡大」が生じ、この流れが行き過ぎました。これが「自由貿易」「グローバリゼーション」という美名の下になされてきたことの実態だったのです。この実態を「中国による死」(ピーター・ナヴァロの著書名)と見抜いたのが、”トランプの慧眼”と言うべきところで、2016年の大統領選でのトランプの勝利につながりました。」(p155)
「ですから、”コロナ後”の今日において、”新しいタイプの全体主義国”として世界に”脅威”を与える中国に対して、世界が連携して、これに対抗する必要があります。冷戦期の「ソ連封じ込め」のような「中国封じ込め」です。」(p158)
トッド氏は、中国を差し当たり「封じ込め」ておけば、やがて急激な人口減少によって”脅威”ではなくなるという見立てである。
他方、ロシアに対してはなぜか好意的で、日本はロシアと友好関係を築くべきであると「対露接近」を提唱している。
確かに、経済的な衰退の過程で「内部対立の外部転嫁」を図ろうとする国を封じ込める必要があるというのはそのとおりだが、その一方で、軍事力によって露骨に「サラミスライス」を狙う国の動きを容認するというのは、政治的な判断としては難しいだろう。
かくして、米欧は、好むと好まざるとにかかわらず「二正面作戦」を強いられることになるのではないかというのが、私の予想である。