Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

形容詞と名詞

2022年09月14日 06時30分50秒 | Weblog
ジャン=リュック・ゴダール監督が死去 91歳
 
 私が大学生であったころーかれこれ30年ほど前、都内のあちこちにミニ・シアターがあった。
 特に池袋にはその手の映画館がいくつもあり、料金もお手頃なので、学生にとってはありがたかった。
 池袋の東口には「ACT2」(アクトツー)というミニ・シアターがあり、しょっちゅうゴダール特集をやっていて、私もよく行ったものだった。
 ゴダール作品の中でも一番のお気に入りは、A bout de souffle 「勝手にしやがれ」で、当時買った台本(勝手にしやがれ)は今でも持っている。
 最大のテーマは、監督が言う通り、「死を考える青年と、死を考えない若い女性」との間のディスコミュニケーションであり、拡張解釈すれば、人間同士のディスコミュニケーションである。
 それを最もよく示すのがラストシーンである。

勝手にしやがれ
 「ミシェル: c’est vraiment dégueulasse.
   セ ヴレモン デギュラス
   本当に最低だ
パトリシア: Qu’est-ce qu’il a dit ? 
   ケ ス キラ ディ?
   彼は何て言ったの?
警官: Il a dit : Vous êtes vraiment une dégueulasse.
   イ ラ ディ、ヴ ゼット ヴレモン ユヌ デギュラス
   あなたは本当に最低な女だと。
パトリシア: Qu’est ce que c'est dégueulasse ? 
   ケスク セ デギュラス?
   最低って何のこと?


 ミシェルは、「(俺の人生は)最低だ」と言ったのだが、警官は、アメリカ人のためフランス語を十分理解していないパトリシアに「最低の女だとよ」と、歪曲して伝える。
 ここで、形容詞:dégueulasse「ひどい、最低な」が、”une” のついた名詞:dégueulasse「ひどい女、最低の女」にすり替わっているのだ。
 さて、安楽死したと伝えられるゴダール監督だが、私の想像では、”superbe!”「最高だ!」とつぶやきながら亡くなったと思う。
 これだと、形容詞だろうと名詞だろうと結論に変わりはないだろう。
 合掌。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする