途中までは一気に、しかし後半部分はブレーキがかかって
集中して読まなければならなかった
「意識は傍観者である」デイヴィッド・イーグマン著 太田直子訳
様々な例を上げて脳の役割、人間の意識の勘違いを面白おかしく(?)
紹介している
その一つ一つは思い当たる節があったり、またいつか何かで取り上げようと
いう気持ちになったが、この本の本当の値打ちは後半部分の
少し長い章にまたがって、決して読みやすいとは言えないところかもしれない
人の思考や行動は意識のあずかり知らない脳の活動で決まると言う理論を踏まえると
犯罪行為は行為者にはどうすることもできなかったと言う主張が成り立つ
この著書は犯罪行為の有責性を問うことは無意味だとして、犯罪者の更生に
重点を置く刑罰制度を提唱している
さらに、最新の脳画像技術を用いて、衝動を抑制するように脳を訓練する
と言う具体的な更生の手段を提案している
(訳者あとがきから抜粋)
この本が、単に自分の知らない脳の働きを紹介するだけのものだったら
感動はそれほどのものではなかったかもしれない
しかし、この後半部分の、問題に取り組む真面目さ、ひたむきさは
科学者としてだけでなく、人としての責任感を感じることができる
これは先日取り上げたピケティにも通じるかもしれない
いわゆる教養からスタートする人道主義に根ざした行動の現れ
書籍の販売という経済行為の中で、自分が認識している
最優先するものを自分の生き方にしたがって、真面目に問いかける
こうした全人格的な思考が日本ではなされていない(?)
(日本は面白ければ、売れればといった視点からの扱いが多く
真に突き詰めて考えられたうえで全人格的な発言の書が少ない )
この本の帯にはニューヨーク・タイムズベストセラーリストに15週ランクイン!
とある
少しばかり読みでがあるこうした本が、着実に読まれていく国と
面白いだけに終止し突き詰めて考えることをしない国と、
その将来を迎える姿に随分と差がついてしまうと
危惧するのは心配し過ぎか?