アントニオ猪木氏が亡くなった
そのニュースで、久しく忘れていたプロレスのことを思い出した
プロレスの凄みは受け身にあると言った人がいる
この受け身とは上手にダメージを少なくするというのではなくて
相手の得意とする技を受けて、ダメージを受けても戦えることを
観客に見せることだ
プロレスはショーだとの見方もあるが、確かに効いていないような技の応酬もある
だが「痛い!」とか「えげつない!」と声が出てしまうようなものもある
アントニオ猪木の真骨頂はその戦い方で、スタン・ハンセンやハルク・ホーガン
の危険な技を思いっきり受け止めていた
ディック・マードックの得意のブレーンバスターは、背中が着地の投げ技ではなく
文字通りの頭への攻撃技だが、彼はアントニオ猪木には信頼して
この技をかけることができた(ほかは背中着地の投げ方)
プロレスは一時期とても好きだった
筋書きができているとかできていないとか、、
そうしたことはどうでも良かった
ただマットで展開されるパフォーマンスは戦う同志の会話のようで
その戦いを見せるという意味では二人にセンスが必要だと思ったりした
今でも覚えているのはストロング小林との戦いだ
違う団体のトップ同士が真剣勝負を行ったこと自体すごいが
この結末が猪木の普段の試合でもめったに見られないような原爆固め
(ジャーマンスープレックスホールド)という技の派手な終わり方をした
小林の頭がマットにドンと着いた時、その衝撃で猪木の足が宙に浮いた
と話題になったが、確かに一瞬浮いている
アリとの世紀の凡戦は評判は悪かったが、実現するはずないと思われた試みを
本当に実現してしまったことに驚きを覚えた
この試合は、ヨーロッパを旅した時ユースホステルで知り合った若者が
アントニオ猪木を知ってる、、と口にしたのだった
(彼は北の海も知っていた)
自分は見なかったがアジアの武術家との戦いで、猪木は戦いの中で
相手の腕の骨を折ってしまったことがあった
(これがあるからショーかどうかはわからない)
危なっかしい対戦相手はローラン・ボックがいた
どこか寒々しい雰囲気を感じさせるドイツの選手で
ディック・マードックとまるっきり反対の空気感だったが
彼との戦いも、そのひんやりした感じ故に覚えている
極真空手のウィリー・ウィリアムの戦いも緊張感に溢れた戦いだった
お互いに負けられぬ背景とプライドを持ち、それ個人対個人だけでは
済まないものだった
こうしてみると、彼のやってきたことは改めてすごかったのだと再確認する
彼は間違いも、失敗も多かったような気もするが
それでも、どこかこの人は、、、仕方ないなあ、、と思わせるなにかがあった
アントニオ猪木さんからパクったことがある
彼の有名な「1,2,3 ダーッ」というのを真似して
低学年のサッカーコーチをしてたときに、集中が切れ始めたときに
「1,2.3 コラーッ」とやったのだ
何回かするうちに子どもたちが声を合わせて
「1,2,3 コラーッ」とやるようになったのは楽しい思い出だ
猪木語録はイチローや本田のそれと同じような深みがある
猪木さんの全盛期を知っているということは
ストイコヴィッチとかメッシの全盛期を知っているのと同じように
ラッキーなことだったと今は思う