パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

涙した音楽

2022年11月12日 09時30分20秒 | 音楽

音楽を聞いて涙を涙したことのある人は、少なくないと思われる
不意に辛かった過去を思い出させられたり
憧ればかりが胸に溢れていた時代を懐かしんだり
理由もなくただただ熱いものが流れるとか
音楽の感情に訴える力というものは不思議だ

レコード音楽を聴いて涙したことのある曲は3曲ある
その一つが、猛烈な感動を覚えて、その感動が一時の単なる錯覚だったと
感じてしまう怖さ故に聴き直すことができない曲で
ベートーヴェンのミサ・ソレムニスのアニュス・デイだ
暗い曲なのか、深い音楽なのか、ベートーヴェンの得意ではない声楽曲だが
「神よ、憐れみ給え」と繰り返す歌詞も相まって、彼の晩年の心情を思うと
人の達する境地の高さに驚く
以下の動画では欠けてしまっているが、次の部分に移る経過の部分の
ヴァイオリンパートは本当に泣けてきた
(そのヴァイオリンパートはトリスタンとイゾルデの
 二幕のブランゲーネの警告のそれと同様自分が好きな部分だ)

L. V. Beethoven ~ Agnus Dei

アニュス・デイはバッハのロ短調ミサでも印象に残る音楽で
アルトの深々とした声と、伴奏のヴァイオリンパートが
ここでも声以上に活躍する

バーバーの弦楽のためのアダージョはアニュス・デイの歌詞をつけて
歌われることもあるようで、共通して深い祈りの音楽となっている

冒頭を聴いた瞬間にいきなりノックアウトパンチを食らって
涙したのはバッハのロ短調ミサのキリエだった
現代の演奏では割とあっさり歌われることが多いようだが
自分が聴いたリヒターの演奏の熱量とか濃厚さは
まだ感性豊かで、だが分析的でない頃の自分の心の奥に響いた

J.S. Bach: Mass In B Minor, BWV 232 / Kyrie - Kyrie eleison (I)

そしてもう一つの曲はフォーレのレクイエムの「楽園にて」だ
この曲は猛烈に感動したと言うより、気がついたら熱いものが
頬に流れていた

Faure Requiem/7 - In Paradisum (楽園にて)

音楽は現在進行系で時を楽しむ芸術だが
記憶を楽しむ芸術でもあるような気がする
以上の三曲は涙した時の思い出が失せないどころか
ますます、その記憶は美化されつつある


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