北大路機関

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【防衛情報】ジュゼッペガリバルディロケット母艦化とPA-Ng次期原子力空母電磁カタパルト導入

2022-05-16 20:01:05 | インポート
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回はイタリア海軍やフランス海軍の航空母艦など海軍の話題を集めてみました。

 イタリア海軍では退役する空母ジュゼッペガリバルディを宇宙ロケットプラットフォームへ転用する計画とのことです。ジュゼッペガリバルディはイタリアが歴史上初めて完成させた空母です。第二次大戦中に空母アクィラが改造されていましたが完成前に降伏しました。ジュゼッペガリバルディは満載排水量13800tの軽空母で1985年に竣工しています。

 ジュゼッペガリバルディはハリアー搭載可能とした軽空母ですが、現在イタリア海軍はF-35Bを運用する空母カブールを運用しており、ジュゼッペガリバルディはヘリコプター揚陸艦として運用しています、しかし2022年内に強襲揚陸艦トリエステが竣工する事となっており、余剰となるジュゼッペガリバルディを衛星打ち上げ用に転用したかたちという。

 SIMONA計画という海上宇宙ロケットプラットフォーム、飛行甲板最後部に設置されたエレベータを用いて飛行甲板上にロケットを展開させる。イタリア本土にはロケット打ち上げに適した赤道付近の施設は無く、大西洋上から打ち上げるという。奇しくも先代の巡洋艦ジュゼッペガリバルディはポラリスミサイル巡洋艦に転用、二代続きのロケット艦です。
■アメリカ巡洋艦維持問題
 日本のイージス艦は艦隊中枢艦を想定した大型上部構造物を採用しましたが正解だったのでしょうか。

 アメリカ海軍ではタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の老朽化が問題視されている。艦隊防空艦のみの問題ならばアーレイバーク級ミサイル駆逐艦が充分にあり、イージスシステムにより防空を確保する事は可能だ、しかしミサイル巡洋艦とミサイル駆逐艦の相違点は複数のイージス艦を統合指揮し空母打撃群における艦隊防空指揮中枢艦能力の有無にある。

 タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦については、2030年代まで維持される方針が示されているが、10隻は延命改修を実施したものの追加する7隻の延命改修について、1980年代から運用開始された巡洋艦は半世紀の長期間運用を設計時から想定したものでは必ずしもなく、船体を維持する費用が年々増大している。しかし適当な代替艦がなく難渋しているという。
■フィッツジェラルド修理完了
 事故当時かなり破損の度合いが大きく一時は憂慮しましたが無事横須賀に戻ってきてくれた。

 アメリカ海軍のイージス駆逐艦フィッツジェラルドが事故修理を完了し横須賀へ再配備されました。フィッツジェラルドはアーレイバーク級ミサイル駆逐艦、イージスシステムを搭載している防空艦です。しかし、2017年に航行中、民間船と衝突し艦橋構造物を大きう抉ら中破する大損害を被っていました。今回、実に5年ぶりに健在な姿を示しています。

 フィッツジェラルド事故修理完了、朗報でしたが、この2017年はアメリカ海軍において事故が相次ぎ、同じくアーレイバーク級ミサイル駆逐艦のジョンマッケーンも衝突事故に見舞われました。共に中破とされていますが、横須賀の修理施設では修理不能、アメリカ本土への自力航行が不能で重運搬船を用いた事から実質的に大破であったとされています。
■エクスカリバー艦砲型
 ロケット推進砲弾は一時中断していましたが今回は。

 アメリカのレイセオン社は水上戦闘艦の127mm艦砲用精密誘導砲弾エクスカリバーN5を開発中です。エクスカリバーN5は射程50kmのGPS誘導砲弾で、陸軍の155mm榴弾砲用に量産されているM982エクスカリバーの海軍仕様とのこと。口径は大幅に縮小されているも、50kmの距離にて半数命中界CEPで5mにまとめる事を目指し開発中です。

 エクスカリバーN5は、開発が中止された62口径127mm艦砲用のロケットアシスト砲弾が目指した100km射程の艦砲射撃を実現するためのもので、長射程艦砲用砲弾としてはイタリアでサボー方式を用いる鏃状のブルカノ127mm砲弾が開発されているものの、威力不足が問題視されていました。エクスカリバーN5は威力を維持し射程延伸を目指しています。
■フランス-電磁カタパルト導入
 カタパルトだけでF-35の飛行隊やイージス艦がシステム一式ごと購入できてしまうのか。

 フランス海軍はPA-Ng次期原子力空母へアメリカよりEMALS電磁カタパルト一式を13億2100万ドルにて導入する。これは2021年12月21日にアメリカ国務省が発表した対外有償軍事供与の概要として示されたものです。なお、現在フランス海軍が運用する唯一の原子力空母シャルルドゴールも発進に、アメリカ製C-13蒸気カタパルトを搭載してます。

 PA-Ng次期原子力空母は2030年代半ばまでにフランス海軍が導入する航空母艦でフランス史上最大、現在のシャルルドゴールより遥かに大きな7万5000t級空母となる計画です。EMALS電磁カタパルトは二基の射出装置とアレスティングギアなどからシステムを構成しており、蒸気ピストンを有さない為に整備間隔が長く、作戦稼働率を高く維持可能です。
■ロシア海軍Su-30SM2導入
 ロシア海軍はここの所鳴かず飛ばずという状況ではあるのですけれども。

 ロシア海軍は最新のSu-30SM2戦闘機4機を初受領したとのこと。これは1月20日、UAC国営統一航空機製造会社イルクーツク工場において製造されていたもので、現在のSu-35戦闘機との互換性を高めるSu-30戦闘機の能力向上型だ。Su-30SM2戦闘機は特徴的なカナード翼が印象的でああるが、エンジン及びアヴィオニクスの近代化が顕著である。

 Su-30SM2戦闘機はAL-41F-1STVCエンジンを搭載しSu-30SMのAl-31FPエンジンと比較した場合で燃費向上と整備間隔の延長という利点があるほか、N011M-Bars-Rレーダーを能力向上させた PESAレーダーは同時追尾目標数の増加とともにロシア軍最新型のOSNODデータリンクへ接続が可能となり、また電子戦システムなども能力向上している。
■インド次期艦載機にラファール案
 継続は力なりと云う事でしょうけれども改良を重ねつづけたラファールは最近販路を拡大していますので少し羨ましくもある。

 インド海軍は空母艦載機用としてラファールM戦闘機を導入する可能性がある、これはフランスの防衛大手ダッソー社が2022年初頭に艦載機型のラファールMをインドへ持ち込み試験を行う方針として発表されました。インド海軍はロシアから取得した空母ヴィクラマディーチャとともに新型のヴィラート級空母の建造を進めており艦載機を増強します。

 ラファールはインドのゴアにあるハンザSBTF陸上試験施設へ持ち込まれることとなり、SBTF陸上試験施設には空母を想定したスキージャンプ台が設置されています。この施設では既にインドがコクサンしたLCAテジャスMk2試作機が発進試験を実施しています。インドでは既に空軍がラファールの運用を開始していますが、海軍はまだ画定していません。

 フランス海軍ではラファールM戦闘機を空母より蒸気カタパルトを用い発進させていますが、この為にラファールMは他のラファールシリーズよりも構造補強により500kgの重量増大となっています。一方、インド海軍はアメリカへF/A-18E/Fスーパーホーネットの視察へ要員を派遣しており、次期艦載戦闘機選定は今後大きな商戦となるのかもしれません。
■カナダの新型砕氷艦
 砕氷艦と云いましても自衛隊の砕氷艦とは違い水上戦闘をある程度想定したもの。

 カナダ海軍は最新鋭の砕氷哨戒艦ハリーデヴォルフの処女航海を完了させました。その任務はナノーク作戦として継続的に実施されています北極圏の警戒監視任務です。ハリーデヴォルフはハリーデヴォルフ級砕氷哨戒艦の一番艦で2021年12月9日に竣工したばかりの最新鋭艦で、北極圏での任務支援へアメリカ海軍の要員も運用支援に当っています。

 ハリーデヴォルフ級砕氷哨戒艦は8隻の建造が計画、その任務は気候変動を受け北極圏航路の開通や北極圏海底資源開発など、新しい地球上の潜在的係争地域での哨戒任務へ対応するべく開発された、大型の砕氷艦で満載排水量6615t、武装は25mm機関砲や12.7mm機銃など、CH-148ヘリコプター搭載能力により揚陸艦としての機能をもっています。
■ミゲルギース火山灰被害
 水陸両用作戦というものはアメリカが想定するようなものとなりますと日本のものよりもスケールが大きい。

 アメリカ海軍の機動揚陸プラットフォームミゲルギースは小笠原諸島海底火山噴火により一時航行不能となりました。これは日本の南西諸島などに大量の軽石漂流被害を引き起こしている福徳岡ノ場噴火災害に巻き込まれた事を意味します。この噴火は第二次世界大戦以降日本国内で観測された最大の火山噴火であり、船舶航行障害が問題視されています。

 ミゲルギースは2021年11月、沖縄近海での演習へ参加するべく航行中、海水冷却装置に軽石が紛れ込み閉塞、機関部推進装置と発電装置に必要な冷却及び飲料水濾過が不可能となりました。乗員は冷却系統を分解し、フィルターを火山灰対応のものへ四日間掛け交換、危機を脱しました。火山灰は中国大陸へ漂着しており、その拡大へ警戒は続いています。
■台湾海軍新型高速機雷敷設艦
 高速機雷敷設艦といいますと第二次大戦中には機雷敷設巡洋艦という区分が在りました。

 台湾海軍は新型の高速機雷敷設艦2隻を竣工させました。これは2022年1月15日の竣工式において公開されたもので、建造は台湾の龍徳造船が担当、満載排水量は315tで全長41m、台湾の中山科学院が独自開発した自動機雷敷設装置3基を搭載しています。台湾では4隻の高速機雷敷設艦を建造しており、残る2隻も間もなく竣工することでしょう。

 高速機雷敷設艦は機雷敷設装置の他、20mm機関砲等も装備し哨戒艦としての任務も可能です。台湾では2019年に当時のトランプ政権との間で新型機雷取得に関する合意がある事から知能化機雷など最新型の機雷を取得可能となりました。2隻は台湾南部高雄の左営基地第192艦隊に配備され、この部隊は掃海部隊ですが今後は機雷敷設も担うこととなります。
■中国が新型AIP潜水艦建造
 自衛隊では旧式となりつつあるスターリング機関ですが特に熱排水が赤外線で探知される問題点があるとかで。

 中国海軍はスターリング機関搭載の新型潜水艦を試験します。スターリング機関は潜水艦用の非大気依存推進方式機関の一つです、しかし、出力の低さが一つの限界として指摘されていますが、中国が独自に開発した新型のスターリング機関は定格電力320キロワットで電力変換効率40%という従来のスターリング機関よりも強力なものとなっています。

 中国国家造船公社CSSC第711研究所が開発したという新型スターリング機関はモジュール方式を採用しており、既存潜水艦への搭載も可能になるとされています。中国海軍では既に元級潜水艦へスターリング機関を搭載した実績があり、出力は低いものの熱対流を利用した機関である事から水中雑音を出しにくく、潜水艦の静粛性を強化する施策です。
■イタリアU212NFS型潜水艦
 日本の潜水艦産業も維持が精いっぱいというところですが。

 イタリアか海軍向けU212NFS型潜水艦がフィンカンティエリ社において起工式を迎えました。これはドイツのティッセンクルップ社が設計した212型潜水艦の最新型で、イタリア海軍で老朽化が進むサウロ級潜水艦4隻の後継艦に当るもので4隻が2027年に2隻、2029年に2隻の竣工を期して起工式を迎えたもの、ドイツも6隻を自国向けに建造する。

 NFSとは近未来潜水艦の略称で、212型潜水艦は燃料電池方式を採用した世界初のAIP潜水艦となっています。ただ、スウェーデンのAIP潜水艦メーカーであるコックムス社をティッセンクルップが買収した後に同社のスターリング機関方式AIP部門を廃止しようとしたことでスウェーデン政府に買い戻される等不協和音も生じており、その中での建造です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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