北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ゴラン高原PKO派遣期間の半年延長が決定 第28次ゴラン高原PKO派遣部隊活動中

2010-02-08 22:41:49 | 国際・政治

◆国連安保理の決定を受け1月29日閣議決定

 こんばんは。今日扱うのは、自衛隊の国際貢献任務で最も長期間の派遣が行われているゴラン高原PKOについてのお話です。

Img_0014  1月29日の閣議決定で、陸上自衛隊の中東ゴラン高原における国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)への陸上自衛隊派遣が六ヶ月間延長されることが決定されました。UNDOFは、ゴラン高原PKOと日本では略称で呼ばれているのですが、現在、北海道真駒内の第11旅団から小山直伸3佐が指揮する43名と司令部要員3名が第28次派遣隊として派遣され、活動中です。

Img_5901  ゴラン高原PKOというのは、兵力引き離し隊という名前からも分かるように、ゴラン高原に中立の国連部隊が駐屯することで紛争を予防するのが目的の部隊です。ゴラン高原は、歴史に詳しい方はご存知の通り、第四次中東戦争でイスラエル軍とシリア軍の激戦が繰り広げられた場所です。

Img_0657  ゴラン高原での激戦は、並木書房から高井三郎氏が“第四次中東戦争 ゴラン高原の戦い”を著していますが、シナイ半島とゴラン高原から挟撃されたイスラエルは存亡の危機という状況に陥りました。アメリカの協力もあって反撃に成功したのですが、1974年に停戦協定に基づく兵力引き離しを監視するために派遣が決定されたPKO任務です。

Img_1882  日本のゴラン高原PKOへの参加は1996年から、行われていて、既に第28次派遣隊が任務にあたっています。第一次派遣隊の指揮官は、髭の連隊長として福知山で有名で現在参議院議員で自民党国防部会長の佐藤正久氏、今は珍しくなりつつある66式作業服を着用して1996年2月12日にジウアニ宿営地で着任式を行ってから、今日に至るまで任務は継続されています。陸上自衛隊主力ですが、海上自衛隊、航空自衛隊からも連絡調整などに派遣されているようですね。

Img_1907  陸上自衛隊のゴラン高原での任務は輸送支援です。ゴラン高原PKOは、二個歩兵大隊と後方支援大隊から編成されていて、自衛隊は歩兵大隊の監視任務を支援するための物資の輸送と、道路の補修が任務になっています。ジウアニ宿営地に本隊が駐屯、ゴラン高原の北部にはヘルモン山という標高2814㍍の山があって、ここにも監視ポストがあるので、自衛隊のファウアール分遣隊が除雪も実施しているとのことです。

Img_5572  写真の都合上、自衛隊車両の写真ばかり載せているのですが、ゴラン高原で運用しているのは国連のトラック、ゴラン高原とシリアのダマスカス空港を往復しているとのことですが、半年間で走行距離が14万kmに及ぶほど輸送任務は激務ということです。兵力引き離し任務なので、ヨルダン川を境界とするラインは地雷源、という環境です。

Img_6109  今回のゴラン高原PKOの延長閣議決定は、国連平和維持協力法に基づくもので、これは昨年の12月16日に国連安全保障理事会がゴラン高原PKOの延長を受けてのものです。日本ではあまり報道に上がることも無いのですが、今日この瞬間も、自衛隊による輸送支援が行われている、ということは紛れも無い事実です。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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ハイチPKO 輸送艦は訓練を優先し民間チャーター船を利用する政府方針

2010-02-07 23:52:23 | 国際・政治

◆輸送艦の増強を真剣に検討するべき

 突如としてInternet Explorerがシャットダウンしてしまい、せっかく書いた記事ごと消失してしまう、これが困りますね。さて、そうした理由から、やや気は立っていますが本日の記事です。

Img_7288_2  ハイチPKOの第一陣として羽田空港、成田空港から中央即応連隊連隊長を中心に精鋭が先遣隊として出発した話は昨日掲載しましたが、本隊は北部方面隊を中心に編成、その中には施設科車両を中心に150両の車両が含まれ、三月中にハイチ安定化任務の復興支援分野への参加へ展開するという計画です。鳩山首相は、PKOへの参加決定から二週間での派遣は画期的なのだ!、と自賛されていますが、災害そのものへの復旧はそろそろ完了して、復興にとりかかる時期、遅かったのでは、と思うのは私だけでしょうか。なにぶん、復旧は自己完結能力に秀でた軍事機構の出番ですが、復旧がひと段落して、復興に入る際には現地の雇用というものを考えねばなりません。治安上問題があって民間の建築会社が活動できないイラクやアフガニスタンのような状況ならばともかく、ハイチでは民間を資金的に支援して雇用創出を行った方が、施設科部隊によるがれきの除去よりはいいのではないか、と思いましたが皆さんはどうでしょうか。

Img_7506  しかし、自衛隊という同胞が遠い任地にて勇躍出動したことは同じ日本人として応援したいことには変わりありません。ただ、この中で一つ、気になった記事がありますので、東京新聞から引用します。ハイチ支援より交流行事 海自輸送艦『友愛ボート』理念先行 :2010年2月6日 朝刊・・・ 鳩山由紀夫首相が提唱した災害救援や医療活動に自衛艦を活用する「友愛ボート」は、当面、ハイチ大地震に使われないことになった。五月に行われる米国主催の親善行事「パシフィック・パートナーシップ2010」に参加するためだ。同行事に参加する予定の米病院船はハイチで活動しており、理念と行動のギャップが浮き彫りになった。 親善行事は、医療支援や文化交流を目的に五月から二カ月間、東南アジアで行われ、日本からは海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」と医療支援チームが参加する。

Img_7456 一方、ハイチ大地震に派遣される自衛隊の国連平和維持活動(PKO)部隊は、本格的な復旧にあたる第二陣が重機やトラックの輸送に艦船を利用する計画だ。海自輸送艦を二隻使えば輸送でき、現在、「おおすみ」「しもきた」の二隻が使用可能となっている。 だが、「おおすみ」をハイチに派遣した場合、親善行事の開始に間に合わない可能性があり、結局、ハイチPKOではチャーターした大型の民間輸送船一隻だけを活用することにした。防衛省の内部では「輸送艦はコンテナ輸送には不向き」との指摘もある。 米国は親善行事に参加する予定の病院船「マーシー」をハイチ救援に活用しており、五月の本番に間に合うか不明。地震発生直後、自衛艦を「友愛ボート」第一号として活用する方法もあったが、実現していない。 海自は一九九九年のトルコ北西部大地震の際、輸送艦など三隻で阪神大震災で使われた仮設住宅約五百戸を被災地に運んだ。 二〇〇一年のインド大地震では、海外の式典に参加する護衛艦一隻が救援物資を積み込んで出航。後から政府が国際緊急援助隊の派遣を決めたことがある。 http://<wbr></wbr>www.tok<wbr></wbr>yo-np.c<wbr></wbr>o.jp/ar<wbr></wbr>ticle/n<wbr></wbr>ational<wbr></wbr>/news/C<wbr></wbr>K201002<wbr></wbr>0602000<wbr></wbr>057.htm<wbr></wbr>l

Img_7512  引用は、以上です。つまり、150両の車両を輸送するべき海上自衛隊の輸送艦が五月まで訓練で出れないのだ、と東京新聞が報じていることになりますが、これが本当ならばかなり重大な問題です。さて、海上自衛隊は外国での武力攻撃を積極的に行わないという国是から、陸上部隊を輸送する輸送艦の保有や建造は、優先度について護衛艦や哨戒機とくらべ、かなり低めに整備されてきた経緯があります。そのなかで、1990年代から新しい任務として提示された国際平和維持活動や国際貢献任務に向けて建造されたのが、3隻の、おおすみ型輸送艦です。満載排水量は14000㌧、各国の揚陸艦と比べれば船体内部に上陸用舟艇用のドックを備えたドック型揚陸艦としては平均的な大きさではありますが、この種の揚陸艦を保有する国そのものが少ないので、おおすみ型3隻を運用する海上自衛隊は相応に高い能力を持っているとは言えます。上部甲板はヘリコプターの運用に適した全通型で、艦内には手術室を備えていて、災害へも充実した装備として海から有事に備えています。

Img_7432  ただし、この、おおすみ型輸送艦は3隻しかなく、海上自衛隊の外洋に出ることが可能な大型輸送艦は、3隻だけ、というのが大きな問題です。フネは、定期的に造船所において長期間修理をする必要がありますし、訓練も行わなければなりませんから、3隻あっても稼働できるのは長期的には1隻となります。そして、ハイチへの任務に輸送艦を派遣した場合、鳩山首相が構想している、輸送艦を人道支援に用いるための国際親善訓練に間に合わないかもしれないので、派遣はしない方針、というかたちになってしまったのですよね。普通に考えれば、訓練よりも実任務が優先されるのですが、なるほど、これまでの自民党政治とは違う政治を目指す現政権では実任務よりも訓練を優先して、ということなのでしょうか。親善行事に補給艦が間に合わないのならば、医療設備の充実した潜水艦救難母艦や補給艦、掃海母艦を派遣すればよいのでして、コンテナ輸送に不向きだから輸送艦は派遣しない、という指摘もちょっと理解できません、今回は車両輸送が目的なのですからね。

Img_6938  訓練に一隻回せば、予備の輸送艦が無い、と言う状況も考えてみれば憂慮すべき状況ですから、鳩山政権は輸送艦の増強を23年度予算に盛り込んでみては、ともいえるでしょう。友愛ボートとして輸送艦を人道支援に充てるということの重要性はある程度納得できますし、そのための訓練が必要なことも納得できます。しかし、そのために今迫っている実任務に輸送艦を充てることができずに、民間のチャーター船を充当するくらいでしたら、輸送艦の増強と、もしくは友愛ボートに、揚陸艦としての設計を備えた輸送艦を充てなければならない状況は別として、民間の客船かカーフェリーをチャーターして投入したほうが、いいのではないか、と少し考えてしまいます。そういう意味からも、いろいろな意味で違和感を感じましたので本日の記事としてみました。

HARUNA

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国際貢献! インド洋補給部隊の帰国行事とハイチPKO部隊の出国行事

2010-02-06 23:31:17 | 国際・政治

◆政権交代と現政権発足後最初の国際貢献

 本日、東京ではインド洋補給支援任務の部隊帰国行事が行われるとともに国連ハイチ安定化派遣団参加部隊の出国行事が行われた。

Img_6430  大地震により20万名以上の人命が失われたハイチでのPKOに向け、第一陣の出発行事が本日市ヶ谷の防衛省において行われた。派遣行事では、北沢防衛大臣から派遣部隊隊長での山本雅治1佐に部隊旗が手渡され、山本1佐は、自衛隊の代表として日本人の誠意とともに復興支援に全力で臨みたい、と語った。

Img_9617  式典に出席した鳩山総理は、命を守る日本という立場を世界に示してもらいたい、と訓示、PKO派遣表明から二週間で派遣が実現したことは画期的なことだ、と自らの判断の素早さと決断力を自賛した。羽田、成田から政府専用機で部隊は出発、早ければ部隊は地震から一ヶ月と経たない8日未明にハイチへ展開、宿営地を設営するとともに情報収集を実施、帯広第五旅団から、主力の到着を待って、瓦礫の除去や道路の復旧活動にあたる。

Img_5886  本日、任務が終了したインド洋海上阻止行動給油支援部隊の帰国行事が東京港晴海埠頭において行われ、護衛艦いかづち、補給艦ましゅう、の帰国を多くの方が迎えた。式典に出席した鳩山総理は、八年間に及ぶ給油活動を労うとともに、今後政府は国連平和維持活動やテロ防止へ適切な役割を果たしてゆく、と祝辞し、派遣部隊指揮官の酒井良一1佐は国益にかかわる幅広い活動への成果と帰国を祈念する訓示を行った。

Img_3520  護衛艦いかづち、は横須賀基地が母港であるが、参考までに補給艦ましゅう、は舞鶴が母港の護衛艦。報道では、帰国行事が行われる旨が報じられるだけなのだけれども、舞鶴に戻る前に晴海埠頭にて行事を行っている、ということは頭の片隅に置いておきたい。写真は護衛艦すずなみ。翌日の帰国行事に向け、舞鶴港外に錨泊している様子。

HARUNA

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平成二十一年度二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報 1

2010-02-05 22:48:18 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 Weblog北大路機関へのアクセスですが、昨今、22DDHのキーワードでのアクセスが急増しています。19500㌧の大型護衛艦で建造される22DDH、その関心事に応えるべく、目下特別記事の掲載を検討中です。

Img_7511_1_2  さて、二月ということで暦では立春なのですが、まだまだ寒い季節ということもあり、陸上自衛隊の駐屯地祭のような行事は行われないとのこと。しかし、海上自衛隊の護衛艦一般公開は行われますので、本日はこのお話を掲載。日曜日に、大阪市の堺泉北港大浜埠頭において護衛艦やまゆき一般公開が行われます。

Img_7374_1_2  満載排水量4200㌧のこの護衛艦は、はつゆき型護衛艦の一隻として建造、哨戒ヘリコプターを搭載し、対空・対水上・対潜の各種装備をバランスよく備えたガスタービン推進艦、12隻が建造されたなかの一隻です。はつゆき型は1982年から就役、全艦健在であるけれども、そろそろ除籍が考えられる時期となってきたので見学できるうちに見学したいところ。

Img_7407_1_2  やまゆき一般公開は、午前と午後に一般公開が予定されている、会場の大浜埠頭までは、最も近い南海電鉄本線堺駅から2km、徒歩では30分の距離にあるものの、自衛隊大阪地方協力本部によりシャトルバスが運行されるということなので、電車で足を運ばれる方には便利。体験航海ではなく一般公開ということで、予約なしの手荷物検査だけでだれでも自由に護衛艦を見学することが可能となっている。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

  1. 2月7日:護衛艦やまゆき一般公開(堺泉北港)・・・http://www.mod.go.jp/pco/osaka/index.html

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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米軍アフガン・イラク帰還兵の自殺防止へ ギリシャ悲劇の朗読会を実施

2010-02-04 22:15:13 | 国際・政治

◆今年だけで50の基地・駐屯地にて実施

 PBSによれば、昨今米軍のイラクやアフガニスタンへ派遣された兵士の帰還兵において、自殺が大きな問題となっているという。

Img_8732  兵士の自殺という問題は、第一に自殺する年齢層と性別が軍隊の戦闘要員に求められる年齢層がかなり合致しているということが挙げられる一方で、長期化した危険な掃討作戦や治安作戦への参加に伴うPTSDなども、自殺増加の要因の一端として挙げられている。米軍では心理学者や精神科医師との協力やカウンセリング、社会復帰策の強化などを行っているが、そうした対策を、潜り抜けて自殺車の増加という問題は立ちはだかっている。

Img_7888  そこで国防総省は新しい取り組みとして、ギリシャ叙事詩の朗読会を民間NGOなどと協力して実施している。PBSが報じたのは、役者によるギリシャ叙事詩の朗読会で、ソポクレスの”アイアス”を朗読している会場を紹介していた。会場は、海兵隊員や陸軍兵士が招かれ、オペラのようなものではなく、朗読を役者が行い、朗読会が終了した後に、意見交換会を行う、というものであった。

Img_7374  “アイアス”は、トロイ戦争を舞台としたギリシャ悲劇で、闘将として知られたアキレス死後の世界が舞台。トロイ戦争はギリシャ神話上に記録されている戦争で、神々が生きる時代、増えすぎた人口が招いた秩序の混乱に起因する紀元前1200年の大戦を示す。この戦争において、英雄として讃えられた一人、アイアス将軍は、自らが激戦の中で正しく評価されていないと感じるようになり、次第にその心に闇を育むようになる。そして、アキレス将軍の追悼のために行われた競技会において、戦技の競技は僅差からオデッセウス将軍を栄冠へと導く。この瞬間、アイアス将軍は大いに憤慨し、友軍の将軍にたいする激しい殺意へとつながってゆく。発狂したアイアス将軍は手近な羊を殺戮し、我に返った彼は余りもの無情感から最後に自殺してしまう、という内容だ。

Img_2408  自殺防止に自殺をテーマとした叙事詩の朗読会を行うのは逆効果なのではないか、という議論は国防総省部内でも交わされたようだが、トロイ戦争の描写とイラク戦争やアフガニスタン戦争の派遣兵が遭遇した情景には、主観的に重なる部分が多かった、ということで、兵士たちに自殺に至るまでの状況や、アイアス将軍の心情に関する意見交換において、活発な意見が交わされるということで、ある程度の効果も数字として挙げられているとのこと。こうした試みは、国防総省により予算が認められ、今年だけで50の基地・駐屯地にて実施されるとのことで、米軍の自殺防止への取り組みへの深い対処体制が見えてくるといえるだろう。

HARUNA

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普天間問題五月“末”国内調整へ 民主党が移設調査団をグアムへ派遣の意向

2010-02-03 20:35:51 | 国際・政治

◆政府部内での調整すら難航

 QDR2010が発表されましたね。そして硫黄島南方50kmの福徳岡ノ場で本日海底火山が噴火を始めたそうです。そんなことより普天間はまだかい?、そういう声が聞こえて来そうな今日この頃。

Img_9935  鳩山民主党連立政権は、普天間基地の移設先決定について、当初は2009年12月までの決定を、とアメリカから要望があった状況を粘りまして、何とか五月までに合意、という新しい期限を設定しました。しかし、最近は五月末までに日本側の意見をまとめたい、というように発言を訂正しています。現政権は、外交政策、景気対策、成長計画、果ては子供手当まで、その迷走ぶりからどんどん支持率を失っているという現状がありまして、果たしてこのまま進めば、五月末には支持率がどのくらい残っているのだろう、と素朴な疑問が湧いてこないでもありません。

Img_2325  ところで、五月までに日米合意、という言葉ならば、つまり五月までに問題は解決だ、という意味になったのですけれども、五月末までに意見をまとめたい、ということは連立与党内での意見集約に五月末までかかる、という意味ともなりますので、まとめました、この線でお願いします、と提示した案が、アメリカの提示しています条件と合致しなかった、ということもあり得るわけです。つまり、五月末までに日米合意をする、というのではなく、五月末までに日米合意の意見交換を行うための日本側の準備を行おう、ということになるのですよね。移設先決定は年明けになることも充分考えられるわけです。

Img_3386  そうした中で、普天間基地移設問題について、民主党連立政権は連立を組む社会民主党の要望から、グアム島への移設可能性を探るために新しく調査団を送る予定とのことです。グアム島へは、現在、沖縄県から海兵隊8000名の移転を目指した政府合意に基づき、移設計画が進展中です。自民党連立政権時代に、海兵隊の多数をグアムへ移転するとともに、日本の予算により移設費用と基地拡張費用を支出することでグアム島の基地機能を大幅に向上させ要塞化、その後に海兵隊のヘリコプター部隊は沖縄本島の住民からもっとも遠い場所、つまり海上に移設することで、騒音と接触を最小限に抑えよう、という構想にはかなりの利点と説得力があった、と今日では評価することができます。

Img_9950  さて、グアム島へは、北大路機関の過去に掲載しました記事にありますように、そもそも人口が18万と、非常に少ない実状を考えますと、現在の8000名という海兵隊受け入れを行うだけでも相当な無理をしているわけでして、グアム島の島の規模を考えると、これ以上は受け入れられない、ということがグアム島移設責任者の名前で生命が出されています。もちろん、グアム島の爆撃機などを嘉手納基地で受け入れる、というようなウルトラC級の代案でも提示するならば別なのですが、これはあまり現実的ではありませんね。グアム島は玉手箱やドラえもんの四次元ポケットではなくて嘉手納と同じく飛行場は空軍の拠点基地、新しく基地と滑走路を、という提案、新しく海兵隊員の宿舎を、という提案なのですから、これは難しいのでしょう。

Img_9221  沖縄本島には、海兵隊のヘリコプター部隊が展開しています。そして海兵隊の戦闘部隊も沖縄に駐留しているのですよね。海兵隊8000名がグアムする、とはいうのですけれども、司令部機能が中心に移るだけなので、戦闘部隊は沖縄に残ります。この事は、これも幾度か、北大路機関の記事として掲載したのですけれども、海兵隊は火力が陸軍の師団ほど充実していませんので、その分を輸送ヘリコプターによる機動力と、攻撃ヘリコプターによる空中からの打撃力によっておぎなっているのですから、たとえは悪いですが、駅の改札とホームを全然別の街に、消防署と消防車を離れた市町村に置くようなものです。つまり、ヘリコプターを受け入れれば、半ば自動的に海兵隊地上戦闘部隊も移転してくることになってしまう訳なのです。そして、地上戦闘部隊は陸上での演習を行う必要がありますので、沖縄北部演習上のような広大な演習場が必要になるわけです。受け入れ候補地は、ヘリコプターの運用が可能な飛行場とその近傍に地上戦闘部隊が駐屯する駐屯地、そして、沖縄の北部演習場からその候補地が遠い場合は、空中機動や実弾射撃訓練が可能な演習場が近くにあることが移設候補地の条件となります。

Img_0190  民主党が今回、グアムへの調査団派遣を行う意図はよくわかりません。可能性として合理的なのは、グアム移転は不可能、という結論を出すために派遣する、つまり社民党への配慮として、グアムに一応は調査に向かい、その上でやはり不可能であった、ということを説得することでしょうか。実は、社民党は先日、グアムへの社民党としての調査団を派遣する計画を立て、その旨アメリカ政府に打診したのですが、政府としての調査団は受け入れることはできるのだけれども、社民党としての調査団は受け入れることはできない、という回答をもらっています。つまり、グアムを調査することができなかった訳です。

Img_8312  そもそも、グアムはアメリカ海兵隊が反対しています。受け入れ能力以前に、ヘリコプターの母艦である佐世保の強襲揚陸艦から距離がありすぎますし、海兵隊が対処しなければならない、台湾海峡や朝鮮半島での緊張に備えるには、グアムは遠すぎるという理由からです。これは戦争になるかもしれないね、という状況に陥ったとき、素早くアメリカが航空母艦や海兵隊を展開させ、介入を行う準備を整えれば、このまま戦争を始めると大事になる、ということで鎮静化することがあります。例えば朝鮮半島核危機、台湾総選挙にともなうミサイル実験など、アメリカは空母を近海に投入するとともに、海兵隊を待機体制に移行させたことで危機を回避させることに成功しました。海兵隊は、アメリカ国民を中心に外国人脱出の目的で紛争地に投入されますので、待機体制にはいるのですが、これはアメリカと軍事力で対峙することにもなるので、世界のある地域で戦争を起こそうか為政者が考える際には、戦争を抑制する手段として海兵隊の位置づけはかなり大きいということができるわけです。

Img_9938  そして、海兵隊はアメリカ四軍の中で唯一大統領令だけで出動することができる部隊、という特質があります。海兵隊は陸軍でも海軍でもなく、アメリカ合衆国海兵隊、と呼ばれているのですが、これはアメリカ独立戦争の際に陸軍と海軍がイギリスからアメリカ大陸が独立するための大陸軍として編成されて、独立戦争が独立を勝ち取ったぞ!、というかたちで終了した後に、解体されているという歴史があります。しかし、海兵隊と税関の取締隊、つまり今の沿岸警備隊だけは、アメリカが貿易立国として躍進してゆく上で必要、という位置づけにて残されました。陸軍や海よりも歴史が長いのですが、こうした理由から、陸軍や海軍が編成されて、第二次大戦後に空軍が新設されたのち、陸海空軍の出動には議会の承諾が必要なのですが、海兵隊は大統領令で出動することができます、議会を通す必要がないのですよね。そこで、海兵隊は最初に対処する即応部隊、という位置づけにあり、法律的には陸軍の精鋭、空挺部隊よりも早く出動することができるわけです。

Img_2546  この文字通り有事即応の海兵隊なのですが、沖縄から海兵隊を出してしまう、という案には韓国政府も反発しています。韓国は、イージス艦を中心に海軍初の機動展開部隊を編成する計画を先頃発表、軍事力の近代化に熱心ですが、分断国家である韓国は常に隣国である北朝鮮の動静を注目しています。北朝鮮は核実験を実施して、核兵器で韓国に圧力を加える、という新しい選択肢を政策決定に含めることができましたので、韓国としては、いざというときに、アメリカの軍事的な支援を必要としている訳です。そして、韓国には多くのアメリカ人が修学や職業として滞在、居住していますので、有事の際にはすぐに海兵隊が展開してくるわけです。そして、軍事境界線から近い韓国一の人口密集地ソウルには多くのアメリカ人がいますので、有事の際にはアメリカの海兵隊をあてにしてもいいわけです。その海兵隊を日本の事情からグアムへ、韓国から非常に距離のあるグアムに移転するというのならば、せめて利害関係国である韓国の意見も聞くべきではないのか、というのが韓国側の主張です。

Img_0208  在沖海兵隊とグアムの関係というのは、このように別のベクトルまで波及するに至っているわけなのですけれども、果たして民主党内に、どの程度、グアムは難しい、という認識が浸透しているかは不明です。こうしたなかで、民主党がどういう意志でもって、グアムへ調査団を送ろうとしているのかについて、興味は尽きません。自民党連立政権時代、普天間基地の位置づけやその重要性、そして海兵隊が米軍においてどういう位置づけにあるかという認識や、極東地域における沖縄県駐留米軍の抑止力。そして航空機や実弾射撃による騒音問題や、米軍兵士、米軍兵士家族と沖縄県民とのトラブルをいかに解決するかについて、文字通り東奔西走し、板挟みのなかで妥協できるところを持つけ出したのが自民党です。その自民党が十五年をかけて調整したことを、民主党新政権は十五年経ってもできない計画、と謝った解釈を行い、我々であれば半年くらいで解決できるだろう、という見通しのもとで、今日の状況に陥っているわけです。民主党の調整力が問われる命題なのですが、支持率が徐々に下降していることが、一つの気がかりといえるでしょう。

HARUNA

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アメリカ国防総省:F-35開発責任者更迭とC-17輸送機生産事実上の終了を発表

2010-02-02 23:37:01 | 防衛・安全保障

◆航空自衛隊次期戦闘機選定にも影響

 普天間問題に押される形で、また、XC-2初飛行の報道に流される形で最近は中々話題に上らない航空自衛隊次期戦闘機選定。

Img_7327  いわゆるF-X選定であるが、F-22が生産終了となる中で、新しい有力候補として浮上しているF-35戦闘機の開発が大きく遅れている。ロシアの新型機PAK-FAに対して初飛行では早期に実現はしたものの、第一線への配備は未知数という状況で、果たしてABCと各型が完成し、各国空軍や海軍航空隊に供給が始まるのはいつになるのか、未知数という状況だ。こうしたなかで一つの動きがあったので、本日は、こちらの記事を紹介。

Img_8376  F35の責任者、開発トラブルで更迭 米国防長官:2010.2.2 11:45・・・ゲーツ米国防長官は1日の記者会見で、次世代戦闘機F35の相次ぐ開発トラブルを受けて国防総省の担当責任者である海兵隊のデービッド・ハインツ少将を更迭することを明らかにした。開発メーカーのロッキード・マーチン社に対しても同じ理由で開発費のうち6億1400万ドル(約557億円)の拠出を凍結するとした。

Img_9913  また、ゲーツ氏は同日発表した2011会計年度(10年10月~11年9月)国防予算で、歳出削減策の一環としてF35の代替エンジン開発やC17輸送機調達の経費を計上しなかったと説明。議会がこれらの調達費を予算案に盛り込んだ場合「オバマ大統領に拒否権行使を強く勧める」と述べた。F35は日本の次期主力戦闘機の有力候補。(共同)http://sankei.jp.msn.com/world/america/100202/amr1002021148011-n1.htm

Img_8455  新規に変人を開発しなくては推力が不足になるのではないか、速度と航続距離が当初の見込みよりも問題が生じているなどなど、様々な問題が提示される中、解決策が模索されるとともに一つの遅れが顕著となっている状況として受け取ることができる。他方で、蛇足ながら引用記事にあるようにC-17の調達が中止されることにより、これは自動的にC-17の生産が終了することを示し、日本側としてはXC-2をアメリカに提案する又とない機会となるやもしれない。

HARUNA

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自衛隊ハイチ共和国国際緊急援助隊・空輸支援隊の活動実績が公表

2010-02-01 22:33:45 | 国際・政治

◆厳しい状況下での最大限の努力!

 陸上自衛隊第13旅団を中心に編成されたハイチ共和国国際緊急医療援助隊の活動実績が統合幕僚会議HPに掲載されていました。http://www.mod.go.jp/jso/index.htm

Img_0723  ハイチ共和国国際緊急医療援助隊の活動はレオガン市において1月23日から実施されています。毎日の活動実績は、23日:20名、24日:28名、25日:47名、26日:66名、27日:82名、28日:141名、29日:138名、30日:168名、31日:155名、1月23日~31日までの活動実績の累計は845名、とのことです。

Img_2347  さて、皆さんはお気づきの方もいるかもしれませんが、今回はC-130H輸送機による展開ということで、輸送機に搭載できる能力には限界があるので、写真のような救急車や野外手術システムといった装備は持ち込むことが出来ないという、厳しい状況下での活動となっています。しかし、最大限の医療活動を行っている、ということが数字から見てとることができます。

Img_3973  地震発生から派遣決定までの時間が長く、現在の政権は国際緊急人道支援について、判断に非常な時間がかかり、結果としてハイチへの展開が各国に比べ大きく後れ、地震国日本が救える命が救えなかった、という事は先日記載した通り。そこで現在、第5旅団を中心としたPKO部隊の派遣を準備中という状況です。

Img_3850  こうした中で、PKO部隊の派遣はもう少し先になるのですけれども、それまでの期間、地震で厳しい状況下においても医療支援を行っているという実績が、続くPKO部隊の受け入れに対する現地での理解に繋がる、ということができるかもしれません。現地の施設科部隊への需要は未知数ではありますが、派遣する以上、現地での活躍は期待したいところですね。

Img_1803_1  ハイチには、航空自衛隊も派遣されています。こちらの活動実績も発表されていましたので列挙してみましょう。ハイチ空輸援助隊の活動は17日から開始されており、17日にはJICA国際緊急医療チーム25名、そして物資5㌧を搭載しハイチへ展開、復路にアメリカ合衆国マイアミまで米国被災民約30名を輸送しました。

Img_4439  23日から27日までの期間は陸上自衛隊の医療援助隊100名を輸送、29日には医療援助物資などを輸送、31日に医療援助物資の輸送を行いました。輸送機の数は充分ではありませんし、C-130Hにはハイチは遠い場所です。幾度か給油へ着陸しても、現地へは数日を要しますし、最初の機体はアメリカでの訓練を終えての文字通り緊急派遣でした。

Img_9982  こういう状況下で運用体系を構築中である空中給油輸送機KC-767、この機体は貨物輸送機としても高い能力を持っています、実任務運用が出来れば、とか、先日初飛行を果たした航続距離と搭載量の大きいXC-2があれば、と思わずにはいられないのですが派遣部隊は、このように厳しい状況下での最大限の努力を行っているようです。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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