北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南西諸島防衛を強化!防衛省、石垣に警備隊・与那国に沿岸監視隊の新編を検討

2010-07-21 23:20:12 | 防衛・安全保障

◆空中機動能力の強化も併せて必要ではないか?

 本日は南西諸島防衛の為に、警備隊と沿岸監視隊を配置する計画が防衛省部内で真剣に検討されているという話です。

Img_0290  少数といえども部隊が常駐していれば、日本の領土によからぬ考えを持つ国に対して釘をさすことが出来ますから、島嶼部防衛の為に警備隊や沿岸監視隊の増勢は必要性が大きいのですが、一方で有事の際には駐屯部隊以上の規模での着上陸も予想されます。したがって、増援、という事にも考えを回すべきでしょう。

Img_1583 宮古、石垣に国境警備部隊 防衛省、対中国で態勢強化・・・ 沖縄県の先島諸島周辺での中国海軍の活発な活動などを踏まえ、防衛省が宮古島や石垣島に陸上自衛隊の国境警備部隊(数百人)を、与那国島に陸自の沿岸監視部隊(約100人)を、5~8年後をめどに段階的に配備する方向で検討していることが19日、複数の同省幹部の話で分かった。

Img_5363  沖縄本島以西は自衛隊がほとんど配備されていないため、国境に近い先島諸島の防衛と周辺海域の監視強化が狙いだが、近接する尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領有権を主張する中国や台湾が反発を強めるのは必至だ。 北沢俊美防衛相は、先島諸島への陸自配備に向けて2011年度予算案に調査費を計上する考えを既に表明。

Img_7289 同省は11年度からの新たな防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画で島しょ防衛強化を打ち出し、「災害対処」や「警戒監視」などの名目で配備の必要性を書き込む方針。 同省幹部によると、宮古島や石垣島に配備を検討しているのは、長崎県対馬市の陸自対馬警備隊(約300人)のような国境警備部隊。一方、日本最西端の与那国島には、北海道稚内市の陸自第301沿岸監視隊(約100人)をモデルにした部隊の配備を想定している。2010/07/20 02:02   【共同通信】http://www.47news.jp/CN/201007/CN2010071901000445.html

Img_1071 南西諸島の警備を警備隊と沿岸監視隊の配置で強化するようです。こうした構想はかなり前からでていたのですが、ご存じの通り陸上自衛隊は慢性的な人員不足、どこから人員を集めるのか、という問題があり、配置することは近隣諸国を刺激するのではないかという日本独特の理由で見送られてきた経緯があります。

Img_6664 沿岸監視隊を配置して警戒にあたる、ということは防衛省や政府で考えられたのですが、対馬警備隊のような警備隊を新編して配置する。こうした話まで進むとは思いませんでした。対馬警備隊は福岡の第4師団隷下にあり、警備隊本部と一個普通科中隊を基幹とする部隊で、編成は小さいですが、普通科中隊の隊員の多くがレンジャー記章をつけている精鋭中の精鋭、対馬の八割が森林地帯ということで最大の能力を発揮できる部隊として知られ、軽装甲機動車など最新の小型装備を優先的に受領してきました。

Img_5138 上陸を行う側にとっては、対戦車ミサイルや迫撃砲を装備する一個中隊程度の人員でも非常に脅威となります。上陸用舟艇などは撃破されてしまいますし、なによりも自衛隊の部隊が展開していて通報されれば、本土から緊急展開部隊を派遣することも出来ますし、自衛官に損害を与える、ということは即座に自衛権の発動要件ともなります。

Img_6114 しかしながら一つ忘れてはならないのが、離島に警備隊を置くとともに、有事の際には本土からの増援体制を考えておかなければならない、ということです。警備隊を置いても相手がそれ以上の部隊で侵攻してくる可能性は充分ありまして、ヘリボーンや輸送艦により沖縄本島や九州から増援部隊を展開させる体制の構築が必要です。

Img_7145 例えば、対馬警備隊、その編成は警備隊本部と一個普通科中隊、と書きましたが人員は300名程度。300から一個中隊を引くと、警備隊本部の規模の大きさがわかるのですが、普通科連隊の本部管理中隊並の能力が付与されています。この機能の重視は、有事の際に九州から増援部隊を受ければ、普通科連隊並の部隊を指揮できるよう、の応力に余裕を与えているわけです。

Img_0260 西部方面隊は早い時期から空中機動の重要性を認識していて、有事の際には対馬へ一個普通科中隊を即応で緊急展開できる体制を構築してきています。沖縄県も西部方面隊管区なのですが、九州からの距離では対馬よりも遙かに遠いわけでして、増援体制を考えれば、那覇駐屯地の第15旅団を強化する必要がでてきます。

Img_357 第15飛行隊には離島での災害派遣を想定してUH60JAやCH47JAなどの強力なヘリコプターが配備されているのですけれども、合計4機だけです。陸上自衛隊は比較的多くのヘリコプターを運用しているのですが、それ以上に国土が広く、その上で部隊縮減を行い、減った部隊数を部隊の機動力強化で補うべく、第12ヘリコプター隊、第14飛行隊、第15飛行隊などを改編や新編などで編成してきました。また、全国の師団や旅団にも機動力強化のために多用途ヘリコプターを配備してきたので、全般的にみてヘリコプターは不足している状況です。

Img_6287 警備隊や沿岸監視隊を編成する必要性は高いのですけれども、同時にかつて第二次大戦中に支援できず離島の部隊を見殺しにしたようなことが起きないよう、ヘリコプターを増強してゆく必要性はあるでしょう。もちろん、ヘリコプター、しかも海上を航法装置にたより長距離飛行できるような機種は取得費用が大きくなるのですが、必要であることは変わりありません。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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日本の防空にF-16Eという選択肢はどうか? F-X選定の一視点

2010-07-20 23:26:01 | 国際・政治

◆F16は選外だが無難

 FX交渉において、航空自衛隊にとって本命の機体が一つは輸出されず、もう一つは調達が先になるということで難航している現状。

Img_1413 それならば、もうF16でもいいのでは、というのが今回の話題、F16はいい飛行機ですよ、という前半。少しかっ飛んで、いっそ将来ロッキードが生産終了した後は日本が部品供給を行えるようにライセンス生産をしてみては、ともしたのが本日のお話後半部分。さて、航空機としてみた場合、F16はF15の廉価版という印象、ハイローミックスのローとして一段低い印象として見られていますが、米空軍で2000機以上が運用されている傑作機で、現在も生産が続けられています。主流であるF16Cが米空軍に納入されている一方で、F16Eが産油国やイスラエル空軍を中心に配備されています。

Img_1430 F16Eとなると、コンフォーマルタンクを搭載していて外観がF16Cよりも大分変わっており、しかも高性能を追求したことで取得費用はかなり高くなっています。新しい機体を導入するとなれば初期調度品や整備体系の確率にかかる費用を総合したユニットコストでF2よりも高くなる可能性もあります。しかし初飛行は2003年で比較的新しく、エンジンもF2のF110より強力なF100GE132が搭載されており、レーダーもAESA方式のAPG80を搭載、初飛行時のメーカー曰くF2と同等かそれ以上、と表現されたことがあります。もっとも、F2は能力で、まだ伸びしろがあり、しかも七年を経て相応に強化されているので、この種の単純な比較は出来ないのですが、悪い機体ではなさそうです。

Img_1491 航空自衛隊が重視するステルス性ですが、F15SEのように機体内部に武装を格納できませんので、この点は劣るのかもしれませんものの、しかし、機体が元々小さなF16の派生型ですから、RCS,つまりレーダーの写り具合について、そこまで大きくないとはいえるでしょう。FA18EもRCSを低くするべくエンジンに空気を取り入れるエアインテイク、正面からレーダー波を受けるとエアインテイクの奥にあるエンジンが反射してしまうのですが、このあたりF16はどう応えたのか、F35技術試験用にレーダーの低RCS実証試験用としてF16を改修していますし、少々問題はあるのかもしれませんが、しかし用途を誤らなければ対応できるレベルなのかな、と。必要なのは相手のレーダーに捕捉されないことで、それならば電子戦用装備の充実で補う、という視点に立てば、これはEA18がF22に電子戦で一度対処できたことを多分に踏まえての話なのですが、ステルス機への対処や非ステルス機での対応、というかたちになるのではないでしょうか。

Img_1504 もうF16でいいのでは?と投げやりな意見を出してみたのですけれども、F16、ライセンス生産を行う、という前提です。過去には既存機種以外の航空機を選定した場合、初度調達部品や教育関係で費用がかさみ、と記載したのですが、戦闘機国産技術の喪失よりはまともな、といいますか、多少高くとも戦後長く構築してきた基盤を今失うわけにはいかない、今失えば永続的に外国製、特に国内に部品プールのあるアメリカ製の航空機を買うことになるのですからね。F16もアメリカ製ですが、国内の産業を残せば、生産基盤は将来、伸びしろを残します。

Img_1555 ロッキードでは、かつてF2スーパー改という、F16CをF16Eに付与させたような性能向上プログラムを提示したことがありましたが、まあ、横浜航空宇宙展で公開されたという機体のイラストは、あまりにアレでして、ツッこんだら負けのような気がしたとともにF22の導入がここまで難航するとは思われていなかった当時の小泉・ブッシュ関係、あまり相手にされませんでした。とはいいつつも、もう少しいい機体が導入できるだろうという思いこみの元で、国民に説明できない航空機は導入しないとした当時の石破防衛庁長官によりF2の調達数下方修正が発表、さてなにを導入するのか、国民に説明できる航空とは、と考えさせつつも、最初の躓きを迎えたわけです。

Img_1565 F2が駄目とは言っても武器輸出三原則の関係上F35の国際共同開発には参加できないことはあの時点でわかっており、読売新聞の確かあの頃に掲載されていた日本の安全保障に関するコラムに航空自衛隊の上の方の人が残念がっている、と掲載されていました。しかし、F22は、ううむ1999年頃の確か北朝鮮ミサイル危機でしたか、あの頃はもうF22でFXは決まったような風潮はあったのですが、なにを導入するつもりだったのでしょうかね、しかし、なにを選ぶかの自信は感じられました。さて、F35が絶賛炎上中、とまではいかないにしても、もともとF16くらいの費用で調達できる、としたF35であるのだけれども、どうやらF15並になりそう、といわれたのが今世紀に入ってから。

Img_1568 F35,昨今ではF15よりも高い航空機となりつつあり、その分高性能、と盛んに強調されています。さて、アメリカが冷戦時代世界中の友好国に安価なF5戦闘機を供給して、それらの国が僅かながらでもF16を調達しているのですが、途上国にはF16もかなり高価な航空機です。これを将来的にF35に置き換えられるか、といえばちょっと現実味がなく、手頃な価格の戦闘機、というとスウェーデンのグリペンくらいしか思い浮かびません。そこで、ロッキードが将来F16のラインを閉じてF35の生産に移行した後、日本が生産基盤を構築すれば、そこから世界に供給できるような気がしないでもありません。

Img_1576 政府部内で武器輸出三原則が再検討するかを再検討されているとはいえ、F16を日本から供給するとは、突拍子の無い案ですけれども、過去にはバートル社のV107輸送ヘリコプターについて、アメリカでの生産が終了した後はライセンス生産を行っていた川崎重工が世界に供給した事例があります。かなり非現実的ですが、F16をライセンス生産すれば、こうしたオプションの可能性も浮上してくるわけです。・・・、まあ、絵空事ではありますが、本気で日米交渉を行えば、可能性はなきにしろあらず、とも。

Img_15811 ・・・、後半部分は置いておいて、F22導入は不可能、F35は間に合わず、F2増産にはアメリカの壁、FA-18EやF-15Eは設計の古さが気になり、欧州機は論外、というのならば、F16、という選択肢も考えてみる価値はあるのではないでしょうか。F16は当分米空軍でも運用が続けられる機体、しかもF16Eは中々の性能です。多用途性は高いですし、能力向上プログラムも継続されています。他に選択肢が無いのならば、と考えてみるのもどうでしょうか。F16でしたら、エンジンのF2との互換性や、日本製各種装備との適合性を日米間で話し合う余地もあるように思います。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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F-2増勢はF-22取得よりも日米交渉での実現性が高い F-X選定の一視点

2010-07-19 22:15:39 | 国際・政治

◆F-35導入を望むならばF-2増産が妥当な案

 日本はF22を導入する模索を続けるよりはF2の生産を続けた方が現実的なのでは、というのが本日のお題。将来F35が必要と考えるのならばF2を生産し続けた方がいいだろう、という点も踏まえて少し書いてみます。

Img_1099  このあたりで最初に一つ。今回掲載の記事はF-15SEが初飛行を果たした日に作成を開始したのですが、コメント欄でお話を戴きましたようにF2にも新しい動きの可能性が一部で報じられています。本来はタイフーンの記事の翌日、土曜日に掲載したかったのですが、ちょっと間が悪かったようですね。

Img_6611 F2の生産継続にはアメリカ側のメーカーとの交渉が不可欠になりますが、この生産継続を求める交渉には生産設備の日本側による買い取りを含め難題となりそうな部分は多いです。買い取ったとして、日本に持ってきても残念ながら新工場を建設するほどの需要があるわけではありません。

Img_1675  アメリカ側を企業買収しようにもロッキードを企業買収するのはちょっと難しいでしょう。しかし、日米政府間交渉であれば、既に運用基盤があり既存の日本製ミサイルをそのまま運用できるF2の重要性を説き、交渉を行えばF2の生産継続、というものは多少可能性はあります。

Img_2631  少なくともF22を日本が取得するよりはF2の生産継続を交渉することの方が壁は低いだろう、と考えます。付け加えて、航空自衛隊が将来的にF35を導入しようと考えるのならば、F35はF4の後継機には間に合わないことだけはまあ、確実ですし、どうしても繋ぎとなる航空機が必要となります。

Img_1795  もっとも、F35を必要数導入するに当たって単価がどの程度になるのか、日本が必要とする防空能力を維持するためには一個飛行隊の編成定数をどのくらいにするのか、そもそもいつ完成して引き渡しが可能となるのか、ということが未知数ですので少々不安なのですが、なんにしても導入はかなり先となることは確実のようです。

Img_1753 F35を導入しようという国では繋ぎの機体を模索するか調達計画の再検討か、という動きがあるようで、F22の導入可能性がほぼなくなった中でF15SEがボーイングで社内飛行試験に成功しました。F15EにFA18Eを思い浮かべる程度のステルス性を付与したというこのF15SEはF35までの繋ぎとしての価値を持ちつつあるようです。

Img_2083 F15SE初飛行段階ではコンフォーマルタンクを搭載した状態での飛行試験を行い、コンフォーマルタンクに内蔵する兵装システムの稼働を確認した後、後日ミサイル発射試験を行う、という流れのようです。基本的に航続距離延伸用のコンフォーマルタンクはF15Cにも搭載できるとマクダネルダグラスは発表していましたし、適合性では問題というものは考えられなかったのですが。

Img_2343  さて、F35が遅れる中、空軍の戦闘機計画に遅延が問題となり始めているイスラエル空軍はF15SEへの関心を寄せているようですし、韓国空軍にも売り込みが行われています。F15SEはF35が間に合うまでの暫定的な措置で導入する、というイスラエル空軍の姿勢で、文字通り繋ぎの機体、という位置づけになります。

Img_2498  韓国空軍も将来的にF35は、国産戦闘機計画とともに導入可能性を示唆していますので、繋ぎ的な要素があるのでしょう。日本は、F35についてどのような認識かは未知数ですが、声は聞こえてくることは確かです。国内でのライセンス生産を行えないF35の導入は、日本の防衛産業に致命的な一撃を加えることになるでしょうから慎重に考える必要があります。

Img_3164  しかし、ステルス機であるF35の導入をなによりも重視する、というのならば性能面では評価の高い航空機ではあります。もっとも、前述の通りF35を導入するとしてF4の後継機としては絶対間に合わないことだけは確かでして、そのための繋ぎの航空機が必要となることだけは確かです。

Img_2860  F35はこのまま順調に試験が進められたとして一応F35Aは米空軍での評価試験が進められてはいるのですけれども、その評価試験を元にF35がどのような航空機かが判明するのはもう少し先、性能を元に航空自衛隊の必要定数を産出できるのももっと先の話となりまして、2020年代の導入ということも考えなければならないかもしれません。

Img_3197  十年先となれば、F2支援戦闘機の初飛行から四半世紀を経た時期ですから、F15運用開始からはまもなく40年を迎えようという頃で、そのころにはF15の引退も本格化している頃でしょう。その頃までF4を飛ばそうにも、昨年がF4初飛行半世紀、ちょっといくら何でも無理があります。そこで、繋ぎの機体としてのF2という位置が見えてくるわけです。

Img_3606 ご存じの通りF2は日米共同生産です。現在F2の生産終了、といわれているのはアメリカでのF2の生産分担部分が製造を終了となるので、これ以上生産を継続することが出来なくなる、というわけです。なるほど、F16とは主翼もフレームも異なる航空機ですし、生産数は先細りが必至です。

Img_6601  しかも少数多年度調達方式を採用していますから、どのくらい生産ラインを維持できるか未知数であるという日本の調達方法は、アメリカでは理解できなかった、ということなのでしょう。早期警戒機のE-767用APY-2レーダーが生産終了して日本が造成できなくなった事を思い出します。

Img_7101  こうしてF2は生産終了に追いやられていったという流れです。現時点では生産継続が難しくなっている、といわれるのですが、もうひとつの視点では日本国内の生産企業には防衛省の要望が多少は通じたとしても、ほかに顧客の多いアメリカに対してはその限りではない、ということも考えられます。

Img_4597  F2は石破長官時代に将来発展性の限界から当初の調達計画を下方修正する、という決定となりました。しかし、F2はレーダーの近代化改修により開発当時は画期的なAESA方式でありながら捜索範囲が狭く欠陥、といわれた部分が改善され、かなり長距離の目標を捜索できるようになりました。

Img_7280  機体強度の問題で機動性に問題があるのでは、といわれていたのですが強度不足を報じられる機体の多くがそうであるように、こちらも改善されています。火器管制装置や統合電子戦装置も国産ですから、日本が必要としたときに必要な改修を行うことが出来るのですし、日本製の各種装備も追加搭載が容易となっています。

Img_6639  このように性能面ではかなり向上したわけですね。今になりますと、性能面で導入できなかった、といわれても、もともとFA18Aも問題があり欠陥機ではないかといわれていたのが、欠陥を克服して名機に数えられるようになりました。F15もF14より劣る部分があると言われたのですがF14除籍後も傑作機として現役です。

Img_9649  最初から欠陥のない機体、というとどうしても平凡な機体しか開発できませんので、現在までのF2をもって評価することは難しいのでは、と考えます。すなわち、現在の航空防衛体制を考えますと、F2というのは性能面で問題は少なく、下手な新型機よりは使いやすい面がある訳です。

Img_11654  F35の導入を考える場合、F4このう契機に間に合わない以上繋ぎが必要という事は考えつつも、繋ぎの航空機をF35の引き渡し可能となるまでまで導入するのならば既に運用基盤のある航空機が理想的ですし、F35を導入しないとしてもF2自体の性能は低くありません。総合的なコスト面では利点はあります。

Img_9147  しかし、入手できるステルス機が基本的に輸出が望めないF22と完成まで時間を要するF35くらいしかなく、欧州でもイギリスが無人機を開発したほかにはステルス戦闘機を彷彿させるものがありませんし、先延ばしにするだけにもなりそうなのですが、しかし先延ばしにするとしてもF2の生産維持には防衛産業維持の利点があります。

Img_10972  ううむ、時間を稼ぎ、F35のライセンス生産が認められない、という事が考えられた場合は、F2の生産を延長することでとともにT4練習機の後継機計画に戦闘機生産能力の片りんを分散して残す模索を行い、というような時間稼ぎの方策も考えられます。時間が無いというのが目下の難題ですからね。

Img_9051  F2の生産継続には生産設備をどうするのかという前述の問題はあるのですが、最小限の戦闘機を配備して、その稼働率を高めることにより抑止力を維持する、という日本の防衛政策を継続するために、どうしても防衛産業の協力は必要になる訳で、その為に戦後一貫して航空機のライセンス生産と一部国産化を試みてきた訳です。

Img_8834  もっとも、日本を単純な戦闘機の市場としてしか見ない場合には、ライセンス生産と稼働率に拘るのではなく、イスラエル空軍のように数をとにかく揃えればいいのでは、という圧力が戦闘機生産国からはあるのでしょうが、このあたりを理解させ説得するのが外交の役割ですから、F2についてもう少し考えてほしい、と思う次第です。

HARUNA

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普天間飛行場移設問題 キャンプシュワブ沿岸の滑走路一本化を日本側が提案

2010-07-18 23:30:18 | 国際・政治

◆V字滑走路は市街地上空を回避する手段

 日本にとって最大の誤算は海兵隊だ!、本日放映が始まったザ・パシフィックでそういう台詞がでていました。本日はその海兵隊の話題。

Img_9937  普天間協議 滑走路1本も提案:7月17日 9時12分  ・・・沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設問題で、日米両政府はワシントンで専門家による協議を行い、日本側は、2本の滑走路を作る従来の計画に加え、滑走路を1本にする新たな案も提案しましたが、アメリカ側は明確な姿勢を示さず、今月下旬にあらためて協議することになりました。普天間基地の移設問題をめぐり、日米両政府は、ことし5月に合意した共同声明で、名護市のキャンプシュワブ辺野古崎地区に滑走路を建設するとしたうえで、具体的な立地や工法などは、来月末までに専門家による検討を終えるとしています。これを受けて、ワシントンで16日まで2日間にわたって専門家協議が行われ、日本側から外務・防衛両省の担当者が、また、アメリカ側から国務省と国防総省の担当者が出席しました。この中で、日本側は、V字型に2本の滑走路を建設するとしている従来の計画に加え、滑走路を1本にして沖合に数十メートルずらす案も選択肢にするとしたうえで、沖縄の理解を得るため、来月末の時点では立地場所などを1つに絞らず、複数の案を示すよう求めました。これに対し、アメリカ側は「検討する」と述べるにとどまり、明確な姿勢を示さなかったことから、両政府は今月下旬に東京であらためて協議することになりました。◆http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100717/t10015798851000.html

Img_2020  V字型滑走路とする案は、自民党時代の日米交渉で合意に至った方式で、辺野古の沿岸部分に沿ってV字型として、離陸用滑走路と着陸用滑走路を分けよう、という案でした。何故こうした形状とするのか、と言えば沿岸部分に突き出たキャンプシュワブの地形を利用することで、離陸用滑走路の延長上に市街地がなく、着陸用滑走路の進入路下にも市街地がない、という地形を選んだからです。この滑走路を一本とする案は、自民党時代の交渉と鳩山政権時代にもありましたが、どの方向に突き出しても名護市の市街地上空を飛行することになるので採用されなかった案です。それならば、と沖合に出してどの方向から発着しても市街地に出ないようにする方策も考えられましたが、あまり沖合に滑走路を建設すると辺野古漁港が使用不能となってしまうし、沿岸部を埋め立てるよりも沖合を埋め立てたほうが環境負荷が大きくなるということで見送られた案です。

Img_1778 今回の滑走路を一本化する案は、地図を見てみますとV字型の中間を縫うような位置に滑走路を建設するという案でした。これでは、着陸時と離陸時に、市街地上空へ非常に近い空域を航空機が飛行することになり、鳥や民間機、僚機との位置関係によっては安全確保のための回避行動により市街地上空を飛行する可能性があります。何故一本の滑走路に統合するのか、ちょっと分らないのですが、一つ考えられるのは現用のCH-46やCH-53ヘリコプターと比べてちかくはいびされるというMV-22ティルトローター機は騒音が少ないとされるので、市街地に近くても騒音が少ない、と考えられた可能性。もっとも、MV-22に置き換えられるのは主としてCH-46、より大型のCH-53は残りますので、騒音の関係から、というのは少々無理があります。CH-53は西側最大のヘリコプター、55名の人員を輸送でき装甲車や火砲を吊下輸送できるほか、エンジン三基という出力を生かして掃海ヘリコプターにも運用され、15000tの揚陸艦をけん引するデモを行った写真も発表されています。もう一つ考えられるのは、V字型という自民党時代の合意をそのまま履行したくない、という民主党部内の意見が出されたという推測でしょうか。ううむ、それならば市街地への騒音を増大させる滑走路の一本化ではなく、V字型を改めX字型にして市街地への騒音を遠ざけるという決定があっていいようにも思います。もっとも、今回は日本から打診をしただけでして、決定には至っていないのですけれども、ね。

Img_1556 日本側が八月末までに普天間航空基地代替飛行場の名護市辺野古のキャンプシュワブ沖に建設する方式についてづいう建設方式化に関する明確な方向性を示すという日米合意が鳩山首相時代に結ばれました。実はその期限まで、もうあと一カ月少々しかないのですが、こうした中で自民党時代とは異なる施工方法が模索されはじめている、というようです。キャンプシュワブ沖合への海兵隊飛行場建設は鳩山政権時代に日本側の都合で一方的に一度白紙に戻すという愚策を行い、日米関係を瞬時に険悪化させたことはご記憶の方が多いとは思います。国際公序では、いかなる決定であっても二国間合意に至った政府間の合意は、覆すには双方の合意、少なくとも同意がなければならない、と考えられているのを一方的に反故にした日本の政策を前に、海兵隊の立体的作戦を行う観点から第三海兵師団の在沖地上戦闘部隊からヘリコプターで20分以内の場所であれば、アメリカは合意する用意があるとの姿勢を見せており、これをもとに勝連半島沖に広大な埋め立てによる海上基地を建設する方法、平時には広大な有事用地区を有する嘉手納基地に統合するという案、普天間飛行場の滑走路を短縮して住宅街から着陸地域を遠ざけることで移転したと強調する案、いろいろ検討されましたがすべて現実性はありませんでした。テニアンやグアムに移転するという案は在沖米軍地上戦闘部隊との連携から不可能で、全国への訓練移転案から、海上自衛隊の護衛艦に移転する案まで出ましたが、結局現実味がなく、当初の日米合意に沿って辺野古のキャンプシュワブへ移転されることが決定、これを受け鳩山内閣は辞意を表明するかたちとなりました。しかし、菅直人政権は鳩山内閣時代の合意を履行するとしており、旗色が悪いためか先週の参院選では沖縄県に候補者を立てませんでした。このため、キャンプシュワブ沖に飛行場を建設する、という合意までは一歩前進したのですが、そこでもたついている、もたつき始めた、という状況です。

Img_1770 在沖米軍は短期的に見れば日本の防衛にそこまで影響を及ぼすものではありませんし、在日米軍は長期的に見れば日本から撤退させて自衛隊が国土の防衛にあたるべきでしょう。ただし、在沖米軍を長期的にみた場合は抑止力が最も働いているのは台湾海峡と朝鮮半島に対してであり、台湾有事に際して米軍が介入できない状況に追いやられる、という形で抑止力が低下すれば本当に台湾有事、という状況に陥る危険性があります。そうなれば台湾に中国軍の拠点が設営され、日本のシーレーンを脅かすという可能性が生じて日本は沖縄を最前線として中国と向き合わねばならず、沖縄の負担は激増することになりますので、これを防ぐためにも長期的に在沖米軍は必要なわけです。しかし、在日米軍は短期的に見れば日本には不可欠ですが、長期的には朝鮮半島が平和的に南北統一を果たし、台湾海峡問題を含め大陸中国が海洋の自由と武力紛争の禁止という国際公序を誠実に履行できる政治体制に変革を遂げれば、米中関係が良好化して日本への脅威はなくなり、在日米軍は歴史的役目を終えることも考えられます。長期的短期的に取り違えなく、日本のかじ取りをお願いしたいと考えますね。さて、ザ・パシフィック、米軍がガダルカナルへ上陸したら反撃が無かったり、日本軍をやっつけたと思ったら実は第一次ソロモン海戦で三川艦隊の巡洋艦戦隊殴り込みを前に米海軍が敗走していて翌日米艦隊がいなくなっていて上陸した海兵隊員が唖然としたり、夜襲による一木支隊の攻撃は米軍から見ても恐怖だったのか、と中々面白かったですね。次週は戦艦金剛&榛名が飛行場を艦砲射撃します。

HARUNA

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ソマリア沖海賊対処任務 多国籍海軍部隊支援に補給艦を!NATOが要望

2010-07-17 22:48:03 | 国際・政治

◆海上自衛隊は補給艦5隻を運用

 今回の西日本豪雨災害ですが、小月航空隊、第17普連、第35普連が対応したようです。思いのほか被害が大きかったようで、台風と違い突如来る豪雨災害への備えの重要性を痛感しました。

Img_0247  さて、閑話休題。本日はソマリア沖海賊対処任務の話題です。NATOが補給艦を出してくれ、と要望を寄せました。ソマリア海賊:NATO、日本に補給艦派遣要請 実施に法整備必要・・・ 東アフリカ・ソマリア沖の海賊対策を巡り、北大西洋条約機構(NATO)が日本政府に対し、海賊対策に従事しているNATO軍艦船の給油のため、自衛隊の補給艦を派遣するよう求めていることが16日、分かった。政府は給油活動の可能性について検討するが、補給艦を現地に派遣して給油活動を行うには、海賊対処法改正か新法制定が必要になる。

Img_1558  NATOは米国を中心とした軍事同盟で、8日に東京都内で開かれた日・NATO高級事務レベル協議で給油活動を要請。同協議は年1回、定期的に行われており、日本側は外務省の佐々江賢一郎外務審議官、防衛省の大江博防衛政策局次長、NATO側からは事務総長補が出席した。 

Img_3821  海賊対策は自公政権下の09年3月、海上警備行動に基づき、護衛艦2隻の派遣で始まった。同7月には根拠法を海賊対処法に切り替えている。当時は海上自衛隊がインド洋で、テロ対策に従事する各国艦船に対し給油活動を実施しており、海賊対処法では外国船への給油は想定していなかった。

Img_6877  しかし、民主党政権が今年1月、自民党などの反対を押し切り、インド洋の給油活動から撤退。政府は16日、海賊対処法に基づく対処要項を閣議決定し、海賊対策を来年7月23日まで1年間延長した。インド洋の給油活動に代わる新たな国際貢献策として、海賊対策での給油活動を模索している。【仙石恭 毎日新聞 2010年7月17日 東京朝刊http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100717ddm003040066000c.html

Img_6526  現在海上自衛隊は常時二隻の護衛艦をソマリア沖に派遣して海賊対処の為の船団護衛に当たっています。ソマリアは現在国家機能が正常に機能していないため海賊を取り締まる機関が無く、元々外国船籍の漁船による漁業権侵害から漁場を護るために武装していた漁民の一部が沖合を航行する商船等を占拠して船会社に身代金を要求するという海賊行為が多発しており、これを未然に防ぐのが各国海軍の派遣部隊です。

Img_4098  海賊対処の任務は艦船の場合は二種類あります。一つは海上自衛隊のように船団を編成して商船を水上戦闘艦で護衛する船団護衛方式、これは日本くらいしか実施していません。もうひとつは艦船が哨戒して海賊行為を行う恐れのある船舶に対して臨検を行い海賊行為が行われた場合には事後的に対処するという哨戒方式で、これが各国の行っている海賊対処任務では主流です。この哨戒方式は長期間継続して任務を行うには補給艦からの支援が望ましく、海上自衛隊に補給艦の派遣が要請された、という形です。

Img_2830  しかし、この場合、海上自衛隊が補給艦を派遣する場合には補給艦の護衛に護衛艦を派遣する必要が生じてきます。海賊には補給艦と商船の区別がつきにくく、最近では減ったのですけれども補給艦を商船と勘違いして海賊が襲撃する、という事例が報告されていました。もちろん、補給艦には機関銃を始め武装が施されていて被害に遭う事は無いのですが、武器使用の面で制約のある我が国では抑止するために護衛艦の随伴が不可欠となるでしょう。

Img_2883  そうした場合、現在派遣している二隻の護衛艦に加えてもう一隻の護衛艦が必要となり常時三隻をアフリカ沖に派遣する必要が生じてきます。海上自衛隊には40隻以上の大型護衛艦が配備されているのに、2隻や3隻、と思われるかもしれませんがアフリカ沖に常時派遣するのですから基地の沖合へ数隻遊弋させるのとはわけが違います。つまり交代の護衛艦を派遣させ、待機させる必要が出てくる訳です。

Img_5837  加えて海上自衛隊の護衛艦も船ですから、定期的に造船所において数カ月単位で重整備を行う必要がありますし、教育訓練に要する期間も忘れてはなりません。その上で昨今、中国海軍の行動が活発化していて、そこにロシア海軍の再生という状況もある訳です。日本周辺海域の緊張が高まる中、アフリカ沖に増援、というかたちになったのですが、一方で護衛艦定数は削減されている状況です。付け加えるならば、海上自衛隊の補給艦は5隻のみ、稼働数と海域の広さを考えれば日本周辺でも充分とは言い難い状況です。

Img_5807  ソマリア沖の海賊に対処することの必要性は、海運に依拠して経済活動を行う日本にとり、極めて重要な事ではあるのですけれども、補給艦の数、護衛艦定数はこのままの状況で任務を増やすという方策はどうにかならないのか、とこの種の話を聞くたびに考えます。本年末には防衛大綱改訂を控えていますので、護衛艦定数と補給艦の増勢は現実的に検討するべきだと考えます次第です。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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タイフーン戦闘機 日本に東アジア地域運用基盤を構築してはどうか?F-X選定の一視点

2010-07-16 12:26:55 | 国際・政治

◆BAE販路拡大と日本の有事運用を見据え

 BSフジで10式戦車に関する討論番組が昨夜放映されましたが、そこに元陸幕長の冨澤暉氏が参加されていました。氏の発言への説得力はともかく、どこかで聞いた御名前、とおもい、考えていましたが、何の事は無い、F機関の藤原岩市少佐の娘婿殿でした。お元気そうでなによりです。

Img_1890  閑話休題。イギリスのBAEが次世代ステルス無人機を発表しました。タイフーンを開発したイギリスもこの分野では遅れている、と思われてきましたが技術力の底力を見せつけようとしています。さてさて、今回はユーロファイタータイフーンを日本が導入する上で支障となっている稼働率の面で、日本とイギリスが互恵関係を得られるよう試みれば、タイフーン導入は日英ともに良好な結果を生むのでは、という視点で物事を考えてみましょう。具体的にはタイフーンがアジア地域への輸出を考える上で一つのネックとなっている一点でメーカー整備支援への不安、アジアで運用されている事例がない、という現状です。ちょうど日本では防衛大綱改訂にあわせて武器輸出に関する姿勢を柔軟化させようという動きがありますので、BAEが提示している内容でライセンス生産の認可がありますから、日本でライセンス生産を行うとともにアジア地域でタイフーン導入国が日本で整備支援を受けられるようにして、BAEの運用支援が及ばない地域で日本から部品供給や整備支援が行える地域では日本が支援を行えるようにする案はどうか、と。

Img_1863  タイフーンは高性能です。性能面では、タイフーンは現時点で一つの到達点といわれるトランシェ3においてアクティヴフューズドアレイレーダーを搭載、最大探知距離は大型機の場合で320km、1平方mのステルス制が高い目標を120kmの距離で捕捉した上で同時に20目標を追尾して6目標に対処できる能力が盛り込まれ、航空阻止、制空戦闘、対艦攻撃等々航空自衛隊に課せられる任務に広く対応できます。航続距離が少々短いことが問題点としてあげられていたのですがトランシェ3Aからコンフォーマルタンクが採用され、燃料搭載が5640lから8640lに増大してこの部分が大きく改善されますので、広い日本の領空を守るための長大な航続距離、という要素は満たされているわけです。

Img_2128 それならば何故、航空自衛隊は導入を躊躇しているのか、といわれるかもしれませんが、これは米空軍との交互互換性という問題です。正直な話で言えば、有事の際に航空自衛隊の機体が整備能力の限界などで飛行定数を維持できなくなった場合、米空軍と同じ機体を運用していれば、受領して運用することができます。イスラエル空軍が第四次中東戦争で不足した戦闘機を急遽アメリカから輸入して、塗装は米空軍の塗装のままで国籍表示だけ書き換えて供給したことがありました。こういう一種裏技ができなくなる。そして米軍が日本に持っている整備基盤、嘉手納基地なんかにはヴェトナム戦争を支えた整備基盤があるのですがこれを利用できなくなるということがあります。フォークランド紛争でイギリスは空母機動部隊や航空機の展開などで防衛を成し遂げましたけれどもその分航空機の整備はNATOが持っている基盤にお願いしてそして足りない部品はNATOの共通部品プールから持ってきて対応しました、こうした一種裏技的な運用ができなくなる。これが大きな問題です。

Img_1910 この点で、それならばF1やF2は?と思われるかもしれませんが、圧倒的な規模の航空戦力を駆使して押しつぶす運用を採ってきた米空軍に、少数機を分散的に運用してでも対艦攻撃を行う、という発送の航空機を米空軍が持っていなかった為でして、対艦ミサイル四発を搭載できるA6攻撃機を含む空母航空団と込みで空母でもあれば、また話はちがったんでしょうけれども、これはこれで非現実的。そんな機体は欧州共同開発でコルモラン空対艦ミサイル四発を搭載できるトーネードくらいでしたので、国産するしかなかったわけです。しかしそれ以外は米軍機、と。過去に欧州機の導入が無視される一方でFSX計画の祭に国産戦闘機が模索されたのは、部品供給や運用基盤を濃くないで何とかできるという一点に依拠していたわけですね。一方で、それ以外で戦闘機はアメリカ製志向、これは維持されたわけです。

Img_1880 さて、運用基盤と予備機体系ですが、米軍が採用していないタイフーンはこの二点で非常に大きな問題を抱えています。日本周辺でタイフーンを運用している国もないので融通してもらうことはできませんし、イギリスもドイツも運用はしますが予備機というのは充分になく有事の際に緊急輸入、ということも出来そうにありません。このあたりをどう解決するかが大きな問題になってくるのですが、ライセンス生産と日本にアジア地域でのタイフーン運用基盤を構築するBAEとの協定を締結するという二つの案でしょうか。タイフーンの運用基盤を構築して、東アジア地域を中心にイギリス国内の支援が及ばない地域の整備支援を行う、ということができれば、これら整備能力の余剰を有事の際における日本の予備整備能力とすることができます。もちろん、これはBAEがもっとも恩恵を受ける形であるべきで、三菱重工を含め下請けに甘んじなければなりませんが、欧州機であっても米軍機と同型機の導入ほどではないにしても有事の際の余剰というものを整備することが出来ます。NATOや在日米軍の部品プールを利用できるわけではないのですが、運用支援を行うために部品プールを国内に造るという方式ですから、この面が解決です。

Img_1771 そして有事の際に作戦機が不足となった場合の余剰機の調達ですが、これは実現しないものの日本の運用基盤がイギリスの運用基盤を補完する形で少数機の導入でも稼働率を高めることが出来るという利点から広く配備される可能性があります。これにはBAEとの協定に加えて武器輸出三原則のみなおしにより日本で他国空軍の戦闘機が整備できるようにならなければなりませんし、タイフーンの販売で一部予備部品供給の面で一翼を担うことになれば日英は一蓮托生となりますから、今後はタイフーンと競合するF35の売り込みでアメリカと対立することもあるやもしれませんが、例えばインド空軍がMiG21の後継機にタイフーンを考えているといいますし、日英合致して売り込めばF35に対抗できるやもしれません、韓国もかなり真剣に検討していましたのでF15SEへの対抗は大変かもしれませんが新世代機であり隣国で整備できるという点を強調すれば風は吹くかもしれません、シンガポール空軍にも売り込んでみる価値はあるでしょう、中東はイギリス国内の基盤で何とかなりそうですが、ね。日英間で、こうして協力関係を構築しておけばイギリスの将来戦闘機計画が持ち上がったさいに技術提携も期待できます。戦闘機生産基盤での日英同盟、検討する価値はあるのでは、と思うのですがどうでしょうか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十二年度七月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報3

2010-07-15 12:54:22 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 今週末の行事は何が、と。先週末最大の行事は参院選の民主党敗北か10式戦車初公開か、と言われたのですが今週末も戦車の行事があります。

Img_2970  北恵庭駐屯地、静内駐屯地、白山分屯基地記念行事が今週末に行われます。北恵庭駐屯地には第72戦車連隊、第1戦車群が駐屯しています。第1戦車群はかつては6個戦車中隊基幹でしたが、縮小され現在は4個戦車中隊基幹。再来年度にも廃止が予定されている部隊です。北海道では第7偵察隊、第2戦車連隊と並び74式戦車を運用している数少ない部隊で、90式戦車と混成運用となっています。

Img_2822_1  第72戦車連隊は第7師団隷下の戦車連隊で、90式式戦車5個中隊を基幹としている戦車部隊です。戦車連隊は機甲師団編成をとる東千歳駐屯地の第7師団と旭川駐屯地の第2師団隷下の上富良野駐屯地第2戦車連隊のみとなっています。北恵庭駐屯地には9個戦車中隊が駐屯しているという事になり、戦車の総数はかなりの規模、と言える駐屯地です。

Img_2917_1  静内駐屯地祭。静内駐屯地は全国の高射特科部隊がミサイルの射撃演習を行う射撃場がある駐屯地ですが、ここには第7高射特科連隊が駐屯しています。7高射は戦車連隊に直協して防空掩護する87式自走高射機関砲と師団後方を防護する81式地対空短距離誘導弾を運用する部隊です。天候に左右されるのですが実弾射撃を展示。

Img_8053  87式自走高射機関砲は35㍉機関砲を運用する装備なのですが、捜索レーダーと照準レーダーを一体化して早期に目標を発見、即応して対処でき、弾道コンピュータを用いて航空機を制圧します。焼夷徹甲弾と焼夷榴弾を射撃するのですが、弾底信管の安全上限は6500㍍となっているので、射程はかなり長い事を示しています。

Img_9580  白山分屯基地祭、ペトリオットミサイルを運用する高射隊が展開しています。上の2行事は北海道の行事なのですけれども、白山分屯基地祭は三重県の行事です。近鉄線で行くことが出来るのですけれども、駅からはこれでもかというほど距離があり、国道165号線を利用してかなり山の中を長時間進んでゆくと到着します。

Img_9607  写真は2007年の白山分屯基地記念行事の様子なのですが、ミサイルや高射機材の展示に加え、近傍に駐屯する第33普通科連隊から軽装甲機動車が展示されていたほか、地元中学校のクラブによる演奏や自治会の舞踊の展示、明野駐屯地から対戦車ヘリコプターが機動飛行の展示の為に飛来していました。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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国連PKOスーダン派遣団への陸上自衛隊輸送ヘリコプター派遣を断念

2010-07-14 12:59:53 | 国際・政治

◆専守防衛の編成

 九州、西日本の豪雨が心配ですが、本日はスーダンの話題。陸上自衛隊のスーダン派遣、防衛省が非常に困難と判断していたのですが、政府として先送りする方針が発表されました。

Img_7207  陸上自衛隊は現在、ハイチでのPKO任務にあたっており、朝雲新聞や統合幕僚監部で任務の様子が掲載されています。自衛隊は日本の災害派遣のように早期進出と復旧後の撤収が望ましい、という事を書いてみたのですが精鋭部隊を送り、目覚ましい活躍、今後のハイチ復興の礎を目指して頑張っているようです。

Img_7369  しかし、日本は憲法が示すように専守防衛の防衛政策を展開しており、海外への展開能力は決して高くはありません。日本列島という長大な面積の領土を防衛するための最小限の能力、その中から人員を抽出して国際貢献に充てている、という状況で、海外派遣を前提とした編成では無いのです。

Img_69301  こうしたなかで陸上自衛隊のスーダンPKOへのヘリコプター派遣について共同通信からの引用です。陸自ヘリ部隊スーダン派遣見送り PKOで政府 仙谷由人官房長官は13日午後の記者会見で、スーダン南部に展開している国連平和維持活動(PKO)スーダン派遣団(UNMIS)について、陸上自衛隊ヘリコプター部隊の派遣は見送ると発表した。

Img_9001  現地調査を踏まえ(1)部隊の内陸部への輸送は予想以上に困難(2)ヘリコプターの運用上の支援態勢がない―などを「総合的に判断した」と説明した。スーダンへの新たな資金協力については「具体的検討には入っていないが、政府として積極的な協力をしたいという考え方だ」と強調した。

Img_9004  UNMISへの陸自部隊派遣をめぐっては、岡田克也外相が積極的な姿勢を示していたが、北沢俊美防衛相が慎重論を展開。仙谷氏は岡田氏に見送り方針を伝えたところ、やむ得ないとの認識だったと述べた。2010/07/13 18:54   【共同通信http://www.47news.jp/CN/201007/CN2010071301000744.html

Img_9151_1  引用は以上です。スーダンでの南部独立を問う選挙に対して、選挙支援を行う国連PKOに陸上自衛隊が参加し、投票箱のヘリコプターによる空輸を行う、という支援が構想され、個の為にCH-47輸送ヘリコプターの派遣が考えられていたのですが先月、既に防衛省が現在の展開能力では厳しい、という判断を行っていました。関連記事→http://harunakurama.blog.ocn.ne.jp/kitaooji/2010/06/post_87cd.html

Img_9217  スーダンは東北部にスアキン、ポートスアンなど港湾都市があり、黄海に面しているのですけれども、今回任務を行う南部は空路か海上輸送した補給物資を陸上輸送するほか輸送手段が無く、しかもヘリコプターの運用基盤が無い、という状況下でしたから、防衛省が不可能、と判断し、外務省もこの判断を尊重した、とのことです。

Img_9259_1  ヘリコプターというものは発着が自由自在、という印象もあり、これは運用面では正しいのですけれども、少なくない整備基盤が必要となります。そして多くの航空燃料が必要となりますし、予備部品などについても近くに米軍基地でもない限り、全て自前で運ばなければなりません。

Img_5825  インド洋大津波緊急人道支援では、スマトラ島へCH-47を含むヘリコプター部隊を派遣することが出来ましたが、あの時には、おおすみ型輸送艦が派遣されていましたので、艦上で整備を行う事が出来ました。しかし、スーダンだと海は遠く、おおすみ型に搭載できる部品や燃料、を車両で運ばなければなりません。

Img_6964  また、治安状況が微妙ですから、警備要員も必要となってきます。投票場が空港に隣接しているのならば警備は拠点飛行場に中央即応連隊か空挺団から一個中隊も配置されていれば充分なのでしょうが、そういうところに投票場があれば陸上自衛隊への派遣が求められる、という事にはなりません。

Img_7061  ヘリコプターでは、かつてパキスタン地震に陸上自衛隊が11名乗りのUH-1Hを派遣しましたが、55名乗りのCH-47を派遣するのですから相応の運用基盤と後方支援基盤が必要です。ドイツ軍はNATOの協同運用基盤の支援を受け、米軍は外征を前提とした兵站能力を持っていますが、自衛隊は専守防衛。

Img_7113  中央即応集団が編成され、第一ヘリコプター団や第一空挺団、中央即応連隊が国際任務に即応できる部隊として置かれたのですけれども、それ以前は地域防衛に当たっている北部、東北、東部、中部、西部の各方面隊から部隊を待機指定し、各部隊から少しづつ人員を抽出して対応していました。

Img_7199  こうして陸上自衛隊は全部隊が日本有事と災害への即応体制を採っていたのに対して、新しく国際貢献に即応できる部隊が誕生したのですが、中央即応集団は陸上自衛隊145000名の中の4000名、まだまだ陸上自衛隊は日本国内での任務を第一とした専守防衛が前提の組織となっている訳です。

Img_7104  海外派遣を前提とするためには、方面隊と同格まで中央即応集団を拡大改編し、隷下に国際旅団としてヘリコプター隊と普通科連隊、後方支援隊、施設中隊を持つ編成の部隊を幾つか置き、方面補給処と同等の補給能力を持つ基盤を新たに構築でもしない限り不可能で、少なくとも現在の予算体制と人員配置を再編しなければ難しいかもしれません。

Img_6980  しかし、最近は聞こえなくなりましたがアフガニスタン自衛隊派遣案、そして今回のスーダン派遣案、現在のハイチ派遣、国際貢献任務のバラマキ政策とも見えてくるのですが、行う以上、政治は人的予算的措置をしっかりと行わなければ、以後、厳しく責任を問われる事となるでしょう。この際ですから、改訂予定の防衛大綱に中央即応集団増勢に向けた人的充実を記してみては、と思いました。

HARUNA

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富士学校祭 富士駐屯地創立56周年記念行事(2010.07.11) 部隊入場編

2010-07-13 22:46:05 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆富士学校祭2010詳報

 富士学校祭2010の記事です。既に書いたとおりですが富士学校祭2010に行ってきました。

Img_5116  富士駐屯地には、陸上自衛隊の普通科、機甲科、特科職種の専門教育及び戦術研究、装備運用試験及び評価試験を担当する富士学校と、運用や指揮など教育支援を行うための実動部隊としての富士教導団が駐屯しており、高い練度の隊員と充実した多種多様の装備を運用している事で知られています。

Img_5104  当方は富士学校祭の見学は二回目ですが今回は他に昨年行った友人と初めてゆくいつもお世話になっている方二名と四名での展開です。途中、道路を通行中に鹿が飛び出してきました、二頭は避けたのですが、三頭目の小鹿は危なかった、が接触する事も無く、無事富士学校の駐車場へ到着できました。

Img_5123  富士学校祭は駐車場が駐屯地からずいぶん遠いと記載したのですが、聞いてみると駐屯地正門前にも広大な一般駐車場が容易されているとのこと。それならば、駐屯地から遠い駐車場を利用してシャトルバスの運行まで並ぶのではなく、今回はここを利用してみましょう、という流れになりました。

Img_5149  今回は次善の報道やポスターなどを見る限り、最新鋭の10式戦車が登場すると言うこともあり、多くの来場者が予想されるのですけれども、どれだけ集まってもどうにも成らないものが天候。なんでも相当悪いのだとか。しかし、当方は過去の経験上、お天気運がいいので多少は楽観していました。

Img_5184  お天気運ですが、もっとも総合火力演習で知る人ぞしる当方の失言が原因、違うと思うのだけれども、それで豪雨になったこともあるので要注意です。そして一番怖いのは霧、富士学校の立地は霧が多い事で知られ、仮に目の前に10式戦車が来ていても霧で見えなければどうにも成りません。

Img_5216  さてさて、今回は開門前に、いや前回もシャトルバス運行前に展開したのですけれども、今回はさらに進んで正門に並ぼうという話でした。早朝に到着した人の話では、それでも並び始めているとのことで、急がなくては、と制限速度内で急行です。このあたりで鹿さんとこんにちは!、になったのですが。

Img_5239  駐車場に到達しますと早速装備点検です。斜面では滑るので滑り止め用装備と雨具を重点装備です。雨具はフランス海軍のレインコートと富士駐屯地(総合火力演習だったかも)で購入したポンチョ、カメラ用防滴装備一式を愛用のカメラバッグに押し込みます。・・・、いや、もちろんカメラも準備します。

Img_5320  レンズについて、駐屯地祭は基本18ー200で充分なのですが航空祭と護衛艦を撮影するべく運用している120ー400は少々駐屯地祭には大げさやも、と思ったのですが今回は10式を撮影するべく投入です。距離があるという事も充分考えられますので200が限度ではちょっと足りないかも、と考えた訳です。

Img_5346  400クラスは手ぶれ防止で、70-300とくらべ嵩張るし重いのですが、ズームで18-55と違い18-200が使われるようになると最大300では少々力不足に感じる次第です、そこで400にしたのですが、これが大きい。グリップが標準装備でもって見るとずしり、重量感も抜群です。

Img_5361  120-400は購入した時に専用のレンズケースも一緒、というくらいに持ち運びにひと工夫必要なものですが、しかし、相応の性能はあり、今回も投入、という運びになりました。岩国基地日米友好祭以来の投入です。ちなみに滝ヶ原や駒門は18-200だけでの撮影でした。ということで今回はカメラバックも大型のものを使用です。

Img_5390  準備万端、そういうところで整えた装備を担ぎ、いざ出発、駐車場から駆け上がって正門前、と行きたいところですが開門から一時間半以上あるのにさっそく大行列です。どのくらいかというと部屋を出てコンビニまで位、少々わかりにくいですがそこそこの長さになっていました。

Img_5393  このあたりで久しぶりに航空機に関するHPを運営されている方とお会いすることができました。ご無沙汰しています、というと、当方ブログを呼んでいただいていたとのこと、来たんだ、と。記事を読み返してみますと、確かに前日までの記事ではくるのかこないのか曖昧、というよりも行けないような書き方に見えていましたね。

Img_5441  富士学校正門を前に友人知人別人他人と雑談などを交わしつつ、いろいろな人が加わりまして、期せずしていつもの面々が揃うようになりました。一方の行列は止まることなく延伸が続きまして、最初の頃はこんなに後ろが並んだのか、という程度ですが遂には辻を越えて最後尾が見えない状況に。

Img_5465  この調子で行列が伸びてゆけば、開門までに御殿場アウトレットモールまで繋がるのでは?と冗談も飛びましたが、長くなる一方の行列を見まして富士学校の班長さんが無線でやりとりをしています。会話は想像するほかありませんが、空気を読むまでも無く、さすがに行列が長く成りすぎたようです。

Img_5480  幾度か無線のやりとりを経て状況が前線と司令部で伝わった模様、班長さん曰く、みなさん開門を早めますのでもう少しお待ちください、と。一同拍手です。情報共有と判断の速さ、流石は富士学校、と思いました次第。ところで、想像も出来ませんが、この時点で最後尾はどこまで並んだのでしょうか、ね。

Img_5505  少々待ちましたが、炎天下であれば苦しいだろう待ち時間も幸いして曇りでして翌日が痛い日焼けの心配はありません、開門が始まり列が動き始めます。富士学校は富士の裾のというよりは斜面にある、と書きましたが、その通り斜面を少しづつのぼってゆきます。手荷物検査は六ヶ所、八ヶ所かな、いくつかのブースに分かれて行われていましたので、混雑していない奥の方へ。

Img_5522  手荷物検査では雨具が多いので一つ一つ見せてお手数をおかけしてしまったのですが、今回は作業服的な方はそこまで調べられませんでした。ベストを着てゆかなかったのは正解でしたようです。順次、雨具、雨具、傘、防滴装備、防水用、と見せてゆきます。手荷物検査を終えますと、さらに上の方に上ってゆきます。最短距離は車道になっていますので誘導路に沿っていきます。

Img_5528  途中に見える保存展示装備は後回しとして登り続け、坂の上の式典会場に到着しますと、まずは陣地を固めなければ成りません。後ろの人に迷惑がかからず、しかし良好な写真が撮れる場所を探します。斜面を降りた最前列部分は既に満席という状況ですが、斜面の上の部分、木立の真下のあたり滑りにくい部分はまだあいていました。

Img_5493  この場所、目の前は急斜面ですが、こう言うところの方が割り込まれないのですね、斜面で座れませんから。というのも、某団体旅行のバッジをつけた方々の割り込みが多いと言いますか、ご一緒したか他の目の前にも現れて移動を余儀なくされた、と。割り込みはやめましょう。

Img_5526  ここで、少し現実に戻って厳しい状況がありました。富士学校祭の紹介記事では、式典会場に戦車の大群が並んでいる勇壮な写真を掲載していますが、到着して見ますと式典会場を見渡すと入り口付近に装甲車がちらりと見える程度で、前回のようなずらり並んだ戦車部隊、という情景がなかったのです。

Img_5533  まずい、・・・、今年は配置が違うのか、訂正情報を第二北大路機関に掲載した方がいいのか、と焦りを感じていたのですが0820時頃から続々と車両が入り口付近から前進を開始、観閲台前で敬礼を行いそのまま待機位置へ進んでゆきました。今回掲載しているのは、まさにその様子を撮影した写真なのですが、まるまる観閲行進と同じ構図を最初に撮影できたわけです。

HARUNA

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ロシア軍機領空接近は大演習の一環 ボストーク2010演習は8日までに終了

2010-07-12 22:35:40 | 防衛・安全保障

◆日ロ相互不信は解決すべき外交課題

 ロシア軍の日本領空接近に関する続報です。三日間に三回の緊急発進があった、として掲載しましたが本日までにそれ以後は一回の緊急発進があったと発表されているのみ、沈静化したようです。

Img_2856  防衛省統合幕僚監部によれば7日に再度Il-20型機が日本に接近し、航空自衛隊が緊急発進で対処したとのことですが、それ以降の接近に関する発表はありません。7日火曜日、ロシア軍所属のIl-20が1機、沿海州方面から飛行し北海道日本海側の公海上を飛行、日本海沿岸に沿って南下し、秋田沖、新潟沖、能登半島沖を経て丹後半島北方空域でロシア本土へ転進、引き返す航路を採りました。前回までと同じく、統幕HPでは飛行経路は明記されている一方で対処した飛行隊までは公表していませんが、恐らく千歳基地、小松基地、また三沢基地からも緊急発進が行われた事が考えられます。この緊急発進を最後に軍用機への対領空侵犯措置の実施についての発表はありませんので、ひと段落した、という事でしょうか。さて、今回の一連の動きですが、朝雲新聞によればロシア軍が極東管区で実施しているボストーク2010との関係がある、と報じています。全文を引用してみましょう。

Img_8254  7月の朝雲ニュース 7/8日付・・・ ニュース トップ: 大規模演習の露軍機が日本周辺空域飛行 ロシア海軍のイリューシンIL38型対潜哨戒機2機が7月3日、同空軍のツポレフTu95型長距離爆撃機2機がそれぞれ4、5の両日、相次いで日本周辺空域を飛行し、空自の全方面隊の戦闘機などが緊急発進して対応した。領空侵犯はなかった。 IL38は3日、沿海州から日本海を能登半島に向けて接近後、秋田沖、奥尻島、礼文島沖を経てウラジオストク方面に帰投。  Tu95は4日、宗谷海峡、国後水道を経て太平洋側に抜け、根室、襟裳岬沖から三沢、松島沖を周回して同ルートでサハリン方面に戻った。  5日にはサハリン沖から国後水道を抜けて太平洋を南下、いわゆる“東京急行”ルートで房総半島、伊豆諸島、串本、四国沖を周回後、同ルートで北上、百里、松島、三沢沖を経て国後水道からサハリン経由でハバロフスク州方面に戻った。

Img_3134 ロシアでは6月29日から7月8日まで、極東とシベリアの両軍管区の陸海空域で2万人が参加して大規模軍事演習「ボストーク2010」が行われており、4日にはメドベージェフ大統領がオホーツク海で露海軍ヘリの対潜訓練を視察。日本周辺への飛行も同演習の一環と見られる。沖縄沖に中国艦 7月3日午後8時半ごろ、沖縄本島の西南西約170キロの海上で、東シナ海から太平洋に向けて南東進する中国海軍の「ルージョウ」級ミサイル駆逐艦(満載排水量7000トン、艦番号116「石家荘」)、「ジャンウェイⅡ」級フリゲート(同2250トン、同527)各1隻を海自7護衛隊(佐世保)の「きりさめ」が確認した

Img_4479  引用は以上です。ロシア軍最高司令官であるメドページェフ大統領が自ら視察した今回の演習ですが、その関係で日本周辺へのロシア軍航空機の接近が増加した、という事なのですけれども、一方で航空部隊の日本周辺海域での飛行に連動して択捉島への空挺降下演習を行うなど今回の演習は極東軍管区における日本からの軍事的圧力を想定したものだ、と見てとる事が出来ます。こちらから向こうに攻める、という概念は日本ではなかなか理解できないものなのですが、ソ連時代の資料を見てみれば第二次大戦の戦訓からドイツからのソ連侵攻を真剣にソ連が警戒していた、というものが出てきますので、ロシアが日本に対して一種過剰に警戒している、という事も想定の範囲内、という事が出来るでしょう。

Img_7328  一方で日本ではロシアに対して、1945年8月9日に日ソ不可侵条約を一方的に破棄されて対日宣戦布告が行われ、舞鶴の引き揚げ岸壁を筆頭にシベリア抑留と戦争捕虜の強制労働による大量死というマイナス要素となる問題が残っており、ロシアに対しての不信感が残っているのも事実です。そこに北方領土問題が絡んでくれば、どうしても相互不信が相乗効果で増幅され、緊張が高まる事にもなります。国際法上充分な言い分が日本にはあるのですけれども、日ロ間の相互不信は外交によってしか解決できない問題です。この点、日ソ国交正常化を実現した鳩山一郎総理を継いだ鳩山由紀夫総理にはロシア側も期待していた、と伝えられRTR等でも報じられていたのですがまったく手を触れぬまま退陣に至りました。現政権も参院選での大敗を受け長くはなさそうですが、日ロ間の信頼醸成、という問題を解決しない限り、こうした緊張状態に対する根本的解決とはならなさそうです。

HARUNA

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