◆空中機動能力の強化も併せて必要ではないか?
本日は南西諸島防衛の為に、警備隊と沿岸監視隊を配置する計画が防衛省部内で真剣に検討されているという話です。
少数といえども部隊が常駐していれば、日本の領土によからぬ考えを持つ国に対して釘をさすことが出来ますから、島嶼部防衛の為に警備隊や沿岸監視隊の増勢は必要性が大きいのですが、一方で有事の際には駐屯部隊以上の規模での着上陸も予想されます。したがって、増援、という事にも考えを回すべきでしょう。
宮古、石垣に国境警備部隊 防衛省、対中国で態勢強化・・・ 沖縄県の先島諸島周辺での中国海軍の活発な活動などを踏まえ、防衛省が宮古島や石垣島に陸上自衛隊の国境警備部隊(数百人)を、与那国島に陸自の沿岸監視部隊(約100人)を、5~8年後をめどに段階的に配備する方向で検討していることが19日、複数の同省幹部の話で分かった。
沖縄本島以西は自衛隊がほとんど配備されていないため、国境に近い先島諸島の防衛と周辺海域の監視強化が狙いだが、近接する尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領有権を主張する中国や台湾が反発を強めるのは必至だ。 北沢俊美防衛相は、先島諸島への陸自配備に向けて2011年度予算案に調査費を計上する考えを既に表明。
同省は11年度からの新たな防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画で島しょ防衛強化を打ち出し、「災害対処」や「警戒監視」などの名目で配備の必要性を書き込む方針。 同省幹部によると、宮古島や石垣島に配備を検討しているのは、長崎県対馬市の陸自対馬警備隊(約300人)のような国境警備部隊。一方、日本最西端の与那国島には、北海道稚内市の陸自第301沿岸監視隊(約100人)をモデルにした部隊の配備を想定している。2010/07/20 02:02 【共同通信】http://www.47news.jp/CN/201007/CN2010071901000445.html
南西諸島の警備を警備隊と沿岸監視隊の配置で強化するようです。こうした構想はかなり前からでていたのですが、ご存じの通り陸上自衛隊は慢性的な人員不足、どこから人員を集めるのか、という問題があり、配置することは近隣諸国を刺激するのではないかという日本独特の理由で見送られてきた経緯があります。
沿岸監視隊を配置して警戒にあたる、ということは防衛省や政府で考えられたのですが、対馬警備隊のような警備隊を新編して配置する。こうした話まで進むとは思いませんでした。対馬警備隊は福岡の第4師団隷下にあり、警備隊本部と一個普通科中隊を基幹とする部隊で、編成は小さいですが、普通科中隊の隊員の多くがレンジャー記章をつけている精鋭中の精鋭、対馬の八割が森林地帯ということで最大の能力を発揮できる部隊として知られ、軽装甲機動車など最新の小型装備を優先的に受領してきました。
上陸を行う側にとっては、対戦車ミサイルや迫撃砲を装備する一個中隊程度の人員でも非常に脅威となります。上陸用舟艇などは撃破されてしまいますし、なによりも自衛隊の部隊が展開していて通報されれば、本土から緊急展開部隊を派遣することも出来ますし、自衛官に損害を与える、ということは即座に自衛権の発動要件ともなります。
しかしながら一つ忘れてはならないのが、離島に警備隊を置くとともに、有事の際には本土からの増援体制を考えておかなければならない、ということです。警備隊を置いても相手がそれ以上の部隊で侵攻してくる可能性は充分ありまして、ヘリボーンや輸送艦により沖縄本島や九州から増援部隊を展開させる体制の構築が必要です。
例えば、対馬警備隊、その編成は警備隊本部と一個普通科中隊、と書きましたが人員は300名程度。300から一個中隊を引くと、警備隊本部の規模の大きさがわかるのですが、普通科連隊の本部管理中隊並の能力が付与されています。この機能の重視は、有事の際に九州から増援部隊を受ければ、普通科連隊並の部隊を指揮できるよう、の応力に余裕を与えているわけです。
西部方面隊は早い時期から空中機動の重要性を認識していて、有事の際には対馬へ一個普通科中隊を即応で緊急展開できる体制を構築してきています。沖縄県も西部方面隊管区なのですが、九州からの距離では対馬よりも遙かに遠いわけでして、増援体制を考えれば、那覇駐屯地の第15旅団を強化する必要がでてきます。
第15飛行隊には離島での災害派遣を想定してUH60JAやCH47JAなどの強力なヘリコプターが配備されているのですけれども、合計4機だけです。陸上自衛隊は比較的多くのヘリコプターを運用しているのですが、それ以上に国土が広く、その上で部隊縮減を行い、減った部隊数を部隊の機動力強化で補うべく、第12ヘリコプター隊、第14飛行隊、第15飛行隊などを改編や新編などで編成してきました。また、全国の師団や旅団にも機動力強化のために多用途ヘリコプターを配備してきたので、全般的にみてヘリコプターは不足している状況です。
警備隊や沿岸監視隊を編成する必要性は高いのですけれども、同時にかつて第二次大戦中に支援できず離島の部隊を見殺しにしたようなことが起きないよう、ヘリコプターを増強してゆく必要性はあるでしょう。もちろん、ヘリコプター、しかも海上を航法装置にたより長距離飛行できるような機種は取得費用が大きくなるのですが、必要であることは変わりありません。
HARUNA
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