「聞かせてよ、ファインマンさん」(岩波現代文庫)を購入して見たら、これが「ファインマンさん ベストエッセイ」を改題したものであった。
もっとも前の本を買ってもっているかは書棚を調べて見ないとわからない。それはともかくこれは“The pleasure of finding things out”という本の翻訳であり、英語の原著はもっていて読んだ覚えがあるが、どうも英語で読んだので印象が薄かった。
この本にはDysonの序文がついていてこれがなかなか泣かせる名文である。それを読むだけでもこの本を買う価値があろう。もっともこの序文を読むだけなら書店で立ち読みでもすませることもできる。
編集者はしがきには「ボーズ・アインシュタイン凝縮」の新しい現象の発見の講演を聞いた編集者の胸のときめきを書いている。その注によって私は「ボーズ・アインシュタイン凝縮」のことをはじめて知った。言葉としてのボーズ・アインシュタイン凝縮は知っていたが、内容は知らなかったのである。
ということはpion condesationとかquark condensationとかいわれるものも同種の現象だろうか。説明によればボーズ・アインシュタイン凝縮とは絶対零度の近くで冷却された多くの原子が動きを止め、一個の粒子のように振舞う現象だという。
そういえば、30年以上昔にドイツでScheckという学者からその当時pion condensationが未解決の問題だときいたが、pion condensationについて辞書的な意味でも調べて見ることもしなかった。なんという好奇心のなさなんだろう、私は。物理の世界ではすでにpion condensationについては解明されていることだろうが、そのことさえも知らない。
と書いてあわてて理化学辞典を見に行った。1998年発行の理化学辞典第5版ではまだ理論的な予測の域を出ていないとあった。星のうちで中性子だけからできた中性子星での理論的な予測であるとのことである。
中性子だけからできている星は高密度の星でこれは原子核の密度よりも大きい。昔講義で原子核の密度を計算してみたことがあるが、1ccに1億トンが詰まっているくらいの密度だったろうか。それよりも中性子星は密度が高いと考えられている。