武谷三男の年譜の草稿が出来上がった。
まだスケッチにもなっていないものだが、それでもこれから本格的に年譜を作り上げていく手がかりを与えてくれるだろう。A4で8ページである。
彼は自分では伝記を書くような偉大な科学者ではないと常々語っていた。それでも何人かの人のインタビューに答えた書物が出ているし、それに彼が比較的若いときに書いた当時の状況の回顧が残っている。
彼の論文数は再録等を省けば70編前後だろうか。もっともプログレスのsupplementの論文をどう勘定するかでもっと多くになる。これらの70編の中には日本語から英語に訳され記念論文集に再録されたものはもちろん含まれてはいない。
論文とははっきりいえないものも含めれば再録も含めて108編あるというのが「素粒子研究」に私が発表した業績リストからはわかる。
これは湯川、朝永、坂田という彼の優れた先輩たちの論文数よりは多いのだが、彼がどこで業績をあげたかということになると核力のいくつかの論文とかに限られてくるだろう。
彼の評価は難しい。これは彼自身の業績ではないが、彼が周りの人に与えた影響も大きいからである。