「立春の卵」とは中谷宇吉郎の随筆の題である。もう半世紀ほど以前に読んだので記憶がおぼろげだが、新聞で「立春に卵が立つ」との新聞記事を読んで立春にだけ卵が立つはずがないと思って自分で卵を机に立ててみたら、別に立春ではなくても立ったという話が書いてあった。
コロンブスの昔から卵は立たないという迷信があったので、それを打ち破ったというわけである。立春に卵が立つという話は科学者ならそんなはずはないと思うだろうが、H大学の教授であった藤原武夫先生もその研究をすぐにしたらしい。その話を私は彼の定年退官の記念講演会で聞いたのだが、彼によれば机の上に立つ卵には底面のところに小さな突起が三つあるとの話であった。
このことを憲法記念日の日に出し物として記念講演会の日のアトラクションとしてやりたいと考えて昨日その申し込みに行った。曰く「憲法記念日の卵」である。昔、物理学科の大学院生であったころ、後輩がNewton祭でこの出し物をやっており、そこで卵を立ててその卵を実際にもらったことを覚えている。
卵は立つ卵と立たない卵とがあり、数回卵を立てようとすればこの卵は立つか立たないかはすぐにわかるものである。立つ可能性のある卵はうまくバランスをとれなくてもゆっくり倒れるという風である。そういう卵はうまくバランスをとってやれば、立つのである。ところが全く立たない卵は立てようとしてもすぐにコロンと転がってしまうのである。こういう種類の卵はいくらバランスをとっても立たないものである。