物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

海と空

2011-07-04 12:00:59 | 日記・エッセイ・コラム

ある会社の標語に「澄んだ空と海があれば、環境はすべて美しい」という。しかし、これは必要条件ではあるが、十分条件ではない。

最近の原発事故による放射性元素の放出でもわかったように、原発事故により環境の外見が悪くなったわけではない。ところが環境は汚染されてもう美しくはないのである。

もちろん見た目には環境は放射能汚染によって変ってはいない。だが、それをもう人は美しいとは思わないのである。もう何十年も昔のことだが、ある女性が松山にやってきてスライドを見せながら講演されたことがあった。

彼女はイギリスのウエールズかどこかの核燃料処理工場による核汚染の話をしたのだが、風景は元のままの美しさであるのに、ガン等の病気が他の地方の頻度より多く近隣の住民に発生してその環境はとても美しいとは思えないという話であった。

福島の原発事故は環境を津波と地震で一緒に変えてしまったので、それを考慮すると環境の見かけまで壊れてしまった例だが、放射性物質それ自身は大量に放出でもされなければ、別に風景を損ねることはまったくない。だが、放射能汚染の事実を知ってしまった後ではもう人は風景をも美しいとは思えないのである。

ただ、原発が誘致された土地はそれまで開発に取り残された地方であり、原発に地方の経済的な発展をかけたというところがあり、原発を誘致したことを非難してもじゃあそれをどうしたらその地方の発展が図られたかと言われるといいアイディアがあったとは思えない。

もっとも、それにしてもやり方が他になかったかどうか。国の政策と電力会社の意図とから離れて他にアイディアがなかったのかと考えるこのごろである。