密かな数学ブームだという。昨夜NHKの「クローズアップ現代」でこの話題が取り上げられていた。
高橋一雄著「語りかける中学数学」、吉田武著「オイラーの贈り物」等が売れているという。それぞれ通算で10万部を越えたらしい。これは数学書としてはすごいベストセラーであろう。
特に吉田武さんの本の主題であるe^{i pi}+1=0という結果が現代の人々に強い印象を与えるらしい。この式は小川洋子さんの小説「博士の愛した数式」(新潮社)で有名になった式だが、これは思ったほど不思議な式ではないというのが、私の意見である。
e^{i pi}=cos pi+isin pi=-1
として、昨夜のテレビに出てきた人のノートにも cos pi=-1, sin pi=0 と書かれていた。これは間違いではないが、
原点Oから1に向うベクトル(矢線)を原点Oの周りに180度回転すれば、このベクトル1は-1をさすベクトルになることは誰でも理解できると思う(注1)。
ところで、このブログでもPolyaのことを書いたことがあるが、彼の「いかにして問題をとくか」(丸善)はいまでもベストセラーらしい。これは私が高校生の頃に訳本が出たと思うので、もう半世紀以上も出版がされている。
他方、彼の他の本は多分続けては出版されてはいないと思う。
昨日の放送では「逆転の発想」と「似たより簡単な問題を知らないか」というヒントだけが時間の都合もあってとり上げられていた。
いずれにしても大いに望ましいことである。付録ながら、この放送でサイエンスライターの竹内薫さんの顔をはじめて知った。
(注1) 原点Oから1に向うベクトル(矢線)を原点Oの周りに180度回転する。このことを数式ではe^{i pi}1と表す。1はあってもなくても同じであるが、書かなくてもあると意識しなくてはならない。
原点Oから1に向かうベクトルをe^{i pi}で180度回転をすれば、その操作の結果として、原点Oから-1に向かうベクトルになっている。これを式で書けば、e^{i pi}1=-1となる。
この操作をもう一度繰り返せば(注2)、-1は+1に戻るので、(-1)*(-1)=1となり、-1に-1を掛けると+1になるという、数学でよく話題になる疑問の説明ができる。同様に(-a)*(-b)=abとなることもわかると思う。
(注2) すなわち、e^{i pi}(-1)である。e^{i pi}(-1)=1であることは言うまでもない。これを普通には(-1)(-1)=1と表している。