岩波科学ライブラリーというシリーズの中に最近表題の本が出されたらしい。そしてその本の書評が昨日の朝日新聞に出ていた。書評者は生物学者の福岡伸一さん。
「6人に4個ずつミカンを配ると、みかんは何個必要ですか」という問題であれば、
(4個/人)*6人=24個
とするのが普通であるが、もしこれを
(6個/巡)*4巡=24個
とすると「ばつ」になるという。ここで、*はかけ算の記号のつもりである。ここでは式の意味上から単位めいたものを勝手に付け加えた。しかし、このような場合にはこの単位めいたものを、つけるようにまでは指導しないというのが、遠山啓さんのご意見だったと思う。
小学校で本当に「ばつにする」のが普通なのかは私は知らないが、もしそうだとするとなかなか算数の教え方が行き届いて来たと「大いに喜ぶべき」なのかもしれない。
しかし、それはおかしいとこの本の著者高橋誠さんは頑強に考えたということがこの本を書く動機になったらしい。
後のように考えるやり方をトランプ配りというのだが、それよりももっと起源が古いところに
6*4
があるということらしい。普通の数では掛け算の順序は入れ替えられるという交換の規則があるから、交換してもいいではないかということなのであろう。
実はこの数の順序を入れ替えても積の答えが変らないという、交換可能の規則は中学校くらいで習うのだが、有難味がまったくわからない。それは行列のかけ算やベクトル積を学んでその意義がようやくわかるのである。
上に与えた問題のような場合にはかけ算の順序をことさら取り立てるのは大人気ないが、それでもこれが物理の問題で単位がついていたりしたら、答えの数値があっていても、本当の理解には頭を傾げざるを得ない。
入試とかで実際に減点するかどうかはケースによるだろうし、採点の先生によるだろう。が、点数には表れないが、採点者としては少し疑問を感じる。だから、入試で合格した人の方が、落ちた人よりもきちんと正しく理解しているかはわからないなと入試の採点のときはいつも感じていた。
そういうこと等をつらつら考えると、高橋さんの本の意図がどこにあるかを見極める必要がありそうだ。福岡さんのようには「思想史的な問いかけなのだ」などと手放しで礼賛(?)する気にはなれそうにない。
もっとも書評を読んでこの書を買って読んで見なければならないかという気を起こさせたのなら、福岡さんの意図は十分に果たされた。