最近、読んだ文であるが、川上武著「医学と社会」に掲載されている、「科学方法論と看護学」の川上さんと武谷三男との「看護学雑誌」に掲載された座談の記録がおもしろかった。
これは1968年6月号に掲載された座談記録であり、武谷現代論集「市民と政治」に収録されている。しかし、論集の方では読んではいないと思う。もっとも私は読んでも何を読んだかすぐ忘れてしまう方だから、あまり読んでないということが確実だとはいえない。
朝永振一郎氏が「科学の研究は科学方法論は目的ではなく、物理学の場合には自然という検証の対象があるから最後は自然に聞けばよい」と折に触れて語ったが、これは武谷も同じ見解であることがわかった。ものごとには対象やそれに関する問題があれば、それを解決するための方法が有用であろうという。あくまで当面の問題を解決するための方法論であり、対象とか問題から離れた方法論はないという。
当然のことといえば当然である。だが、方法論が目的化することがままあったのではと武谷について示唆されることがあるが、少なくともこの座談記録からはそうではないことがわかる。解決が難しい問題があれば、「概念の分析からはじめよ」と武谷はいう。
なんでもまずは具体的な問題の解決を図ることから始まるという。方法論は対象を離れて独立に一人歩きすることはないという。
「看護学雑誌」というのは看護師さんによって読まれている雑誌であろう。現在も発行がされているのかどうかは知らない。だが、看護師さんたちにもわかるようにとの配慮がされているのだろうか。読んでわかりやすかった。