昨日新聞を見ていたら、花粉症の症状が厳しい今の季節にスギ花粉の飛ばない九州のある島に行くという花粉症の(ある種の)療法が書かれていた。もっともこの島には宿泊施設が十分になく、モニターの20数人を選んでそのツアーが企画されたという。本当は80人くらいの応募があったそうだが。
これは旧聞になるが、1925年の5月に物理学者のハイゼンベルクは20歳をちょっとすぎた頃だったが、ひどい枯れ草熱(hay fever)に罹り、草花のない北海の島ヘルゴラントに療養に出かけた。そしてそこで量子力学の端緒となる有名な論文を書いた。
その量子力学の論文云々は前にもこのブログで書いたことがあるから、今日はこのことはこれくらいにするが、枯れ草熱を治すというか、やり過ごすために草花のないヘルゴラント島に出かけたというのは昨日の新聞に出ていた花粉症の療法と同じである。
枯れ草熱とは日本の現代風にいうと花粉症だと訳されたりもするが、アレルギー性の病気であるらしい。アメリカに8年くらい滞在していたことのある、E大学での元同僚Sさんの話では5月頃に不快な40度近い熱が出るのだそうである。その季節をすぎると治るのだが、その季節は大変らしい。これはそころに咲く草花に対するアレルギー性の疾患である。
私もご他聞にもれず花粉症で現在苦しんでいるが、その元同僚も大学の入学試験のころに眼が赤くはれ、鼻も赤く顔全体が腫れぼったい感じを今ごろの季節にはされていた。そして、「枯れ草熱」の説明を私ははじめて彼から聞いて、ようやく花粉症とも日本では訳されている枯れ草熱の正体を知ったのであった。
人によって花粉症の症状は違うのかもしれないが、花粉症では鼻水がのべつまくなく垂れて困るが、幸いなことに熱は出ない。そこが枯れ草熱と日本の花粉症の違いであろうか。しかし、このどちらもアレルギー性の疾患であることはまちがいがない。
ハイゼンベルク夫人が夫の死後書いた本「ハイゼンベルクの追憶」(みすず書房)ではハイゼンベルクがアレルギー性の疾患に苦しんでいたことが書かれている。