自分なりの体系をもって、物理なり数学なりのテクストを書いている人は日本人に限ってもたくさんいる。もちろん、著名な人もいれば、それほど著名でない人もいる。わたしはここでは著名がどうかはあまり問題にしていない。
大学の教授を長年務めていた人ならば、そういう体系的なテクストを著すことに意義を感じる人も少なくないであろう。
そういう人の一人として砂川重信さんがいる。「物理の考え方」(岩波書店)というシリーズを書かれている。力学、電磁気学、熱・統計力学、量子力学、相対性理論の巻がある。
砂川さんは別に電磁気学についてのいくつかの本を書かれており、あまり体丈夫ではなかったためかいつなくなっても家族が生活に困らないようにと電磁気学の本を書かれたと紀国屋書店から発行の『理論電磁気学』だかの序文に書かれてあった。
予想に反してなのかどうかは知らないが、結構長生きされて「物理の考え方」のシリーズも書かれたのであろう。
『理論電磁気学』で感心したことは電気多重極の説明がよかったことである。そこがあまりよくわからなかったので、はじめて意を尽くした説明を読んだ気がしたが、それがどういうものであったかはもうよくはわからない
もう一つ感心したことは相対性理論の巻の、斜交座標の反変成分と共変成分との説明のところに結晶学での逆格子との関連が述べられていることであった。物理学は一つであるという感を深くした。
そういえば、逆格子についての書きかけのエッセイも私はもっているが、これもなかなか完成をしない。