新しく関数論のテクストを見たら、まず解析接続の方法と分岐点がどう書かれているかを、まずチェックするとこのブログで書いたことがある。
解析接続の方法と分岐点のことがきちんと書かれた関数論(複素解析)のテクストがあまりないと、このブログで何回か、ぼやいたこともある。
ところがそれらについて書かれたテクストが出ていた。金子晃『関数論講義』(サイエンス社)がそれである。
もっとも分岐点の説明はまだ読んで十分に納得できているわけではない。これはこの本の問題ではなくて、私の理解力の問題であるのだろう。
金子さんは私がH大学で関数論を学んだ、及川廣太郎先生に東京大学で関数論を学んだという。だから無理にこじつければ、いくらかはご縁があることになる。もっとも私は及川先生のいい学生ではなかった。なぜなら、先生の言葉につられて数回講義に出たきりで、あとは欠席で最低の評価の可で単位をもらったから(注)。
金子さんの『基礎と応用 微分積分学 I, II』(サイエンス社)は笠原こう司先生の『微分積分学』(サイエンス社)と並んで、優れた微積分学のテクストであるとの評価がされている。
金子さんの解析接続の方法の記述に注文がないわけではないが、真正面から取り組んで下さったことに敬意を表したい。
しかし、こういうテクストを書こうと思った数学者は、いままであまりいなかったのではなかろうか。最近この本を含めて数学のいいテクストが出るようになったのは喜ばしい。
(注)もっとも及川先生が、お情けの可という評価で単位を出された学生も多かった。及川先生に私の関数論の単位の取得の届け出が学務係に出ていないのですが、と申し出たときに「君はお情けの可だったかね」と言われてご自分のノートを調べて、「君はそうではなかったね」と修正をされた。
しかし、いずれにせよ褒められるようなことではないことは確かである。及川先生は60歳ちょっとすぎで、亡くなられたと思う。