古代または近代数学や物理を研究する必要性を説いたsioさんの、私のブログ「四元数と線形代数」への長文のコメントがありました。
以下の文章はそれに対する私の感想と意見をコメントに対する返答として書いたものです。
ブログで取り上げた方がいいと判断したので、以下に部分的に再掲します。また再録にあたって、加筆をしました。なお、sioさんのコメントの全体についてはまた議論する別の機会をもちたいと思います。
古代や近代の数学や物理を読み解いた人(たとえばよく知っているわけではないですが、高瀬正仁さんとかまた旧知の山本義隆さんのような方)も十分に評価すべきではないかと感じています。
ただ、現在の大学や研究所の雰囲気は漏れ伺うところではそういう余裕がまったくないようです。
これがどこからきたのか、はたまた是正する方法があるのかはわかりません。
すべて国の財政的、経済的な政策である要因が大きいと感じています。このことがもう10年もすると日本の国の学術がまず疲弊し、その結果として、日本の国が経済的にも政治的にも立行かなくなる原因となるのではないかと憂慮しています。
特に科学技術の上で大きなビハインド(遅れ)となる可能性が大です。
政治家は今後30年間にノーベル賞受賞者100人を出すなどと豪語されていますが、その内情はとてもお寒くて、多くの若者は希望を持てないし、海外留学などもっての外だとか聞きます。
もし大学等から海外留学するときには、もう日本にはもう帰ってくるべき地位とか職場などないと覚悟しないと留学できないのだとか。つまり海外流出できる自信のある方しか海外留学などできない。
こういう状況では若者にいかにamibitiousたれといっても無理でしょう。それくらい日本には余裕がないのです。それを若者の冒険精神の欠如みたいに言われたのでは若者がかわいそうです。
そのことを心配をする、新聞やテレビの論説など読んだことがありません。少なくとも若者の気持ちの問題だとされている。そんなものではなくて、多分構造的にそういう気持ちを起こさせないほど状況が切迫している。
このことの実情を大学学長や理事会とかの幹部もわかってはいないということを示している。
ドイツの外国からの研究者受け入れを行っている機関フンボルト財団が9月に日本にやって来て、ドイツへの留学希望者を探したらしいのですが、そういう研究者がほとんどいないという実情にびっくりしたそうです(注)。
もっともドイツはそんなことを日本に言うと内政干渉ととられるかもしれないのでアドバイスもできないでしょう。
これは10年くらい前に比べて、研究留学の奨学金を給付している、このフンボルト財団への留学希望の日本人候補者が激減したために、フンボルト財団が日本からの研究留学者数の復活を目指した活動だったと聞きました。
(注) 実は私も約40年前にこのフンボルト財団のお蔭でドイツ留学できた一人です。